「きょうの宿題、ムズイ(難しい)よ」
九歳の息子が時折発する「ムズイ」。小学校で流行しているのか、くらいに考えていたら、テレビのニュースでインタビューを受けていた三十代くらいの女性も使っていた。インターネットで検索してみると山ほどヒット。どうやら思いのほか普及しているらしい。
「ムズイ」はないにしても、原稿に目を通す日常のデスクワークでも、聞きなれない用語にぶつかるケースがある。大半は辞書をひいて納得する(時に記事の間違いが発覚することもある)のだが、新しい用語などの場合は必ずしも「頼みの綱」が力を発揮してくれるとは限らない。
例えば、力を注ぐという意味の「注力」。なじみの薄い単語だと先輩のKデスクが話していたので調べてみたら、確かに手持ちの広辞苑にはなく、今年十年ぶりに改訂された最新版(第六版)に登場している。今では一般的に使われる「食材」も、Kデスクいわく「(一九九六年に社会問題となった)腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒までは、辞書に記載されていなかったはず」。果たしてその通りだった。
言葉は生き物であり、時代に即して増殖し、変化していく。それだけに紙面で使う用語には敏感でありたいのだが、思い込みから紙面でつい誤用してしまうこともある。今春文化庁が行った国語調査では「檄(げき)を飛ばす」「憮然(ぶぜん)」について七割以上が意味を取り違えていた。恥ずかしながら、私もその一人だ。
日本語は、つくづく「ムズイ」。
(社会部・前川真一郎)