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連載「消される事実・教科書検定と沖縄戦」(2)

文科省の関与(6月19日朝刊社会面)

調査官、検定審に影響力
元主任「論争は意味ない。恨むなら米軍を」

 「こんなこと(沖縄戦での『集団自決』をめぐる軍命の有無)をいつまで争っていてもしょうがないと思うけどさ」「恨むなら、米軍を恨めばいいのに」。福地惇・大正大教授は歯切れ良く言葉を継いだ。

 現在、「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長も務める福地氏は、かつて、文部科学省の主任教科書調査官(日本史担当)だった。

 「つくる会」の創立(一九九六年十二月)から間もない九八年四月、高知大教授から主任調査官に転任した福地氏は、会員制の月刊誌「MOKU」(黙出版)の対談で、小学校六年の社会科教科書の日本近代史の記述に対して「ほとんど戦争に対する贖罪のパンフレット」などと発言し、同十一月に解任された。

 福地氏はどのような経緯で調査官に選ばれたのだろうか。本人に尋ねると「忘れた。頭が半分壊れかけているから」とはぐらかした。

 教科書検定において、調査官の果たす役割は重要だ。教科書会社から申請された教科書は、「教科用図書検定調査審議会(検定審)」で審査する前に、調査官や文科省が指名した専門委員(教員や専門家らで構成)、やはり同省が委任する審議委員(大学教授らで構成)がチェックする。

 調査官は、各委員や自らの意見を取りまとめ「調査意見書」として検定審に提出し、それを受けた検定審での話し合いの結果がそのまま検定意見となる。教科書会社に検定意見を交付し、説明するのも調査官だ。

 ある審議委員経験者は「審議委員は、限られた自身の専門分野しか見ていない。話し合いのベースになるのは、その教科書全体をまんべんなく見ている調査官の意見だ」と打ち明ける。

 現在、文科省で日本史を担当する調査官は四人。そのうち、明治時代以後の現代史について論文や著作が確認できる一人は、「つくる会」が初めて発行した中学校の歴史教科書で監修、執筆を務めた伊藤隆・東大名誉教授の門下生ともいわれ、共同研究の実績もある。

 衆議院教育再生特別委員会で、このことについて質問された伊吹文明文科相は「どこの団体で誰と勉強していようと、そんなことは教科書検定とは何の関係もない」と答弁した。

 文部科学省教科書課の検定調査第一係長は、調査官の採用基準や、採用方法を尋ねた沖縄タイムス社の電話取材に対し「私は担当ではないので分からない」と答え、後日の返答を求めると「何で、そんなことに答えなければいけないのか」と回答を拒否した。(社会部・吉田啓)

 沖縄が六十二回目の「慰霊の日」を迎える今年、高校の歴史教科書から沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制という事実が検定により削除された。沖縄戦は教科書検定でどう変えられようとしているのか。その背景や影響を検証する。(次回から社会面に移します)


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