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薬剤師の労災認めず−東京地裁

 青森労災病院(青森県八戸市)に勤務していた薬剤師三浦恵吾さん(当時39歳)が、うつ病を発症して自殺したのは、薬剤師の業務に加えて、「コンピューター西暦2000年問題」に対応する病院の薬剤管理システムの開発責任を負うなど、過重な労働が原因として、妻の久美子さんが国に対して労災不支給の取り消しを求めた行政訴訟の判決が11月13日、東京地裁であり、中西茂裁判長は「業務とうつ病の発症には、因果関係が認められない」などとして訴えを棄却した。

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 判決によると、三浦さんは1997年4月から同病院で主任薬剤師として勤務し、2000年12月11日に亡くなった。
 当時の同病院の薬剤管理システムでは、「コンピューター西暦2000年問題」に対応できないことから、新たなシステムを導入するに当たり、三浦さんが中心的な役割を任された。このため、三浦さんは薬剤師の業務に加え、99年6月に仕様書を作成した後は、業者と連絡を取りながら、同年12月末をめどに新薬剤管理システムを構築する業務に当たった。

 三浦さんのうつ病発症の業務起因性について、原告側は「薬剤師としての本来業務と薬剤管理システムを構築する業務に従事し、99年9月から12月にかけて月50−80時間の時間外労働をするなど、同システムに関する業務が大変なストレスになっていた」と主張。また、同年10−11月には、システム開発に向け多忙な時期だったにもかかわらず、薬剤師としての研究発表のため、3回にわたる出張を命じられるなど、「仕事の質・量共に相当の負荷が掛かっていた」として、「同年12月20日ごろ、うつ病を発症した」と訴えていた。
 一方、国側は「(三浦さんが)2000年4月に脳梗塞と診断され、強い心理的負荷を受けた」などとして、うつ病発症を同年5月中旬ごろと主張。これに基づき、「同システムに関する業務が、うつ病の発症に強い影響を与えた可能性が高いとは言えない。時間外労働も最大で月41.25時間で、長時間労働による負荷があったとは認められない」とするとともに、研究発表の出張については「私的研究」としていた。

 判決では、原告側と国側で異なるうつ病発症の時期などを特定せず、同システムについて「開発自体は外注されており、うつ病を発症させるほどの強度の心理的負荷があったとは認められない」と判断。また、出張については「既に行った研究の発表であり、負荷はなかった」とした。これらに基づき、中西裁判長は「業務とうつ病発症には因果関係が認められず、業務に起因するとの原告の主張は採用できない」と述べ、原告側の訴えを退けた。

 三浦さんの「過労死」については、久美子さんが01年3月27日、八戸労働基準監督署に労災申請した。しかし、同監督署は03年2月18日、不支給を決定。以降、審査請求、再審査請求が棄却され、昨年2月26日、労災不支給の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。

【コンピューター西暦2000年問題】
 1980年代までのコンピューターは、日付のデータを処理する際、西暦の4ケタの数字のうち、上2ケタの「19」を省略するのが一般的だった。この場合、2000年は「00年」となるが、省略した上2ケタは「19」のため、コンピューターが西暦1900年と認識して誤作動などさまざまな障害を起こす可能性が指摘され、当時、行政機関や企業などが対応に追われた。


更新:2008/11/13 20:11   キャリアブレイン

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