2008年10月23日 (木)おはようコラム 「産科救急の砦を守れ」
おはようコラムです。脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都の7つの医療機関から受け入れを断られた後死亡した問題、この問題の背景と課題について藤野解説委員に聞きます。
Q1 起きてはならない痛ましい問題が再び起きてしまいました。
A1 本当にそうですね。これだけ出産時の救急態勢の不備が全国で問題視されていながら、今度は医療機関の多い東京で、再び同じ悲劇が繰り返されたわけです。
特に今回は、地域の救急医療の「最後の砦」となる病院で起きたことに問題の根深さがあります。
最初に受け入れを断った病院は、緊急の治療が必要な妊婦を受け入れる医療機関として指定を受けた病院で、しかも、東京都が鳴り物入りで始めた「東京ER」という、全ての救急患者を受け入れることを看板に掲げていた病院でした。こうした最後の頼みの綱のような病院で、受け入れが断られたわけですから、事態はこれまで以上に深刻です。いつになったら安心して子供を産めるようになるのか、安心して出産もできない状態で、何が少子化対策だと憤りを感じます。
Q2 こうした問題が相次ぐ背景にはどういうことがあるのでしょうか?
A やはり一番の問題は、産科医の不足です。
今回、最初に受け入れを断った病院でも、本来、産科の当直は、二人の医師で対応していましたが、今年7月からは土日、祝日の当直は1人となっていました。このため、当直の時間帯は原則急患の受入れを断っていたということで、緊急な治療が必要な妊婦を受け入れる拠点病院としての機能を果たせていませんでした。こうした拠点の病院で、産科医の不足が原因で受け入れをやめているところは他にも出ています。
また、新生児を受け入れるための集中治療室が不足している問題や、小児科医、救急医などといった、産科救急に必要な連携体制が十分に整っていないという問題も背景にあります。
Q3 こうした問題に、政府はどう取り組もうとしているのか。
A 政府は、来年度から、大学の医学部の定員を大幅に増やすなどとしていますが、実際に産科医などが増えるまで時間がかかりますから、緊急の対策が必要です。特に今回は、都市部の産科救急の砦だった病院にまで、医師不足の影響が出ていたわけですから、医師を拠点の病院に集めたり、開業医が救急医療に参加したりするなど、早急な対策が必要です。政府には、産科救急全体の態勢整備に思い切った財源を投入して、一刻も早く安心して出産できる環境をつくってほしいと思います。
投稿者:藤野 優子 | 投稿時間:12:13