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2008.05.21

“chance”は“偶然”訪れる

 Would you like to have a drink under cherry trees? Why don't we go and see cherry blossoms?

 東京は各所で桜が満開ですが、みなさんの周りはいかがですか?お花見に は行きましたか?

 かくいう私は、花粉の苦しみから逃れられませんが、桜が咲き誇るこの数 日間だけはガマンして外に出て“散歩花見”を満喫しています。くしゃみ鼻水が止 まらなくなるので、一箇所に留まって飲食する花見はできませんが(涙)。

 日本人がどうしてこれほど桜に心を奪われ、動かされるのか?よく言われ るのが、「花の命の短さが心を揺さぶる」というお話。桜はいっせいにすべての 花が咲き乱れ、そして数日で散ってしまいます。その「儚い美しさ」が日本人の 琴線に触れるのでしょうか。日本人には、「死んでいくもの」「散っていくも の」への捉え方において、すごく独特の価値観があるように感じます。

 さて、話はまったく変わりますが、今朝スポーツニュースを見ていた家人 が「おもしろいねえー」と言っていたので、そちらに目をやると(Actually, I'm not interested in any sports...)そこには、昨日メジャーリーグでデ ビューした福留孝介さんという選手が写っていました。中日からカブスに入団し て最初の試合を3打数3安打3打点、1四球の大活躍で飾ったそうです。

 スタンドではカブス・ファンたちが応援プラカードを作っていたのです が、そこには<偶然だぞ>とい書いてあるのです(笑)。「おそらく“chanceだ ぞ”を辞書で和訳したんでしょうかねえ」と、テレビでコメントされていまし た。打席に立ってあちこちに見える<偶然だぞ>の文字……。なかなかシュールだ と思います。まあ、変に力まずにリラックスできそうですけどね(笑)。

 福留選手を応援するときに使いたかったんだと思われる“chance”は日本語 では「絶好の機会」または「好機」とでも訳せるとこでしょうが、「好機」っ て、現在の日本では新聞とかでしかお目にかかれないですよね……。ほとんどカタ カナの「チャンス」でまかなえている言葉という印象です。

 ……と、思っていたら。ちょっとネットで調べてみると、どうやら“It's gonna happen.”をGoogleで翻訳にかけると「偶然だぞ」になるようです。自動翻 訳はおもしろい「迷訳」をよく生み出しますが、これもその一例でした。野球の 応援で“It's gonna happen.”と使うのは初めて知りました。(まったくスポーツ 観戦をしないので……。)訳すと「何かが起こるぞ」くらいの意味になりますが、 馴染みのない私には「おもしろい応援の仕方だなあ」と新鮮でした。

 ついでに、“chance”を、『ランダムハウス』で調べてみました。
1.偶 然(の出来事) 2.運、運命、巡り合わせ 3.〜するという見込み、公算、可能 性、 4.機会、好機、チャンス、きっかけ 5.〔野球〕〔クリケット〕刺殺 6. 冒険、危険、賭け 7.(宝)くじ……と続き、<中英<古仏…chance,cheance<俗 ラ…cadentia(出来事、偶発事)→cadenza と記されていました。

 また、ラテン語の辞書を引くと、“cado”という単語に、1.落ちる、倒れる  2.降下する 3.注ぐ、流れ下る……22.(偶然)起こる、逆遇する、ある人に与 えられる、分配される と、あります。現代英語の“happen”に近いようですね。

 『英単語マニア』32ページの“cas”も「落」を意味する語源で、occasion, incident, casual……などの、日常におなじみの単語を作っています。こうやっ て、ひとつの単語をたどってみると、そこには無限に広がる語源の世界。すでに 知っている単語をより深いところまでとらえる“chance”は朝起きてから眠るま で、あちこちに“happening”だらけです♪

【注】フランスが昔はガリアと呼ばれていたことは、ジュリアス・シーザー 著『ガリア戦記』で有名です。ガリアがローマの支配を受けたころ、ラテン語が 移入されて、「俗ラテン語」が形成されました。その後、民族大移動の折、フラ ンク族に侵略され、しだいに「古フランス語」が形成されていきます。さらに、 ノルマン人が入ってきて、やがて彼らは「ノルマン・フランス語」を使うように なり、1066年にはブリテン島でノルマンによる大征服があります。英語はそのノ ルマン・フランス語の影響を受けて、「古英語」から「中英語」に変化していき ます。chance はフランス語から中英語時代に入ってきた言葉ですが、俗ラテン 語では cadentia だから、decadent(退廃的な)などの単語に見られる語源 <cad>に由来します。ラテン語から英語までの間にかなり変質しています。

(K.Tashiro)

2008.4.5(土)

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