米大統領が決まる様子を米大使館(東京都港区)内で体験できるイベントが5日開かれ、延べ約900人が訪れた。国内計67大学の学生約550人のほか、各国大使館関係者、国会議員、政府関係者らも来場。米大使館での大規模な選挙イベントは初めての試みで、模擬投票や立候補者クイズ、軽食コーナーもあり、お祭り会場のようなにぎわい。民主党のバラク・オバマ上院議員が当選を決めた瞬間は会場から「オバマ! オバマ!……」とコールまでもわき起こった。【浜田和子】
午前9時。イベントとはいえさすがに警備は厳しく、門と建物入り口で身分やバッグの中のチェック。金属探知機も通り、いざ会場の講堂へ。正面には壁いっぱいのスクリーンがあり、CNNの特別番組が放映されていた。壁や天井には赤白青の星条旗カラーの風船やリボンが飾られ、廊下にはクッキーやサンドイッチ、コーラやコーヒーなどの軽食が並ぶ。あいさつに立ったズムワルト・在日米大使館首席公使は「アメリカでは投票日の夜は民主主義を祝う時でもあります。多くの国民がそれぞれの家庭でパーティーをします」と紹介した。
米国人以外が投票できる模擬投票コーナーでは、学生たちが珍しそうに候補者名の書かれた用紙にチェックを入れ投票。オバマ氏とマケイン氏の経歴などから出題されたクイズでは、正答者の中から抽選で記念グッズがプレゼントされた。
日本大法学部新聞学科の山下将史さん(22)は「日本の選挙は投票率が低く政治への関心も薄いと言われるが、若い人にとってこのようなお祭りイベントで盛り上がるのも政治への関心を高める手段の一つではないかと思う」と評価。模擬投票に参加したインターナショナルスクール7年生のスタンレー・エリソンくん(13)は「初めて選挙の投票を体験したがカッコよかった。大人になったら本当の投票もぜひやりたい」と話した。シルバ駐日コスタリカ大使は「民主主義の祭典を参考にしたくて見に来た」と興味深げ。
渡辺周衆院議員(民主)は「大使館でこのようなイベントを開くのはアメリカの懐の深さなのか。魅力ある人と政策がまず必要だが、政治に興味を持ってもらえるという点でヒントになる」としながらも、「選挙の時、たとえば政党本部を開放するというのは今のところ考えられない。日本の選挙はもっとウエットだ」と表現、お祭り騒ぎには否定的な見方をした。
大勢が判明した午後1時すぎ、民主・共和両党の支持者が混在する会場ながら「オバマ! オバマ!……」とコールがわき起こった。またマケイン氏が敗戦の演説に立つとねぎらいの拍手がわいた。午後2時前、オバマ氏が大統領受諾の演説のために登場すると再び大きな拍手がわき起こった。
飲み食べ楽しめ盛り上がる米大統領選。勝った側も神妙に万歳し、時には涙さえ流す日本の選挙とは実に対照的。国民性の違いをはっきりと実感した。
2008年11月5日