Nov. 6.2008 Thu Someone's Garden 新聞の最新情報 バックナンバー プリント 日本語で表示 SHOW IN ENGLISH

ビル横山

私の職業の正式名称は、スペシャルエフェクトの中のガンエフェクトです。ガンエフェクトというのは銃の発砲と、弾着。あとは地面や壁に当たった、血糊だとか。昔、これは美術のパートだったんですよ。美術の中の小道具で、映画全盛期の頃は持ち道具の人がやってたんです。


text by Asako Tsurusaki  translation by Naoko Higashi   photo by Lorenzo Barassi

bill1.jpg僕は最初役者になりたくて、小さな劇団に入ってました。でもそれじゃ食えないからアクションもやってて、それで銃やガンアクションに興味を持つ様になりました。当時ウエスタンブームだったんで、海外から「ワイルドウエストショー」というのが日本に結構入ってきていました。その中の一つが銃を扱える小道具係を探していたんですよ。それでやってみたいと思う様になって、アメリカにまでおしかけちゃって、衝撃を受けてガンエフェクトというものにのめりこんでいきましたね。
工事現場のダイナマイトとか免許を持ってれば、基本的に銃関係の火薬は使えます。狩猟やクレー射撃をやってる人が持ってるような銃器取り扱いの許可と、その銃に使う火薬の資格って違うんですよ。火薬は花火の免許の分野に入ります。でも日本の警察はライフルとショットガンの許可を出したがりません。税金も高い。一年で何発以上撃たなきゃダメだとか、弾をこめてなくて押し入れにしまいっぱなしだとかチェックされるんです。そういうのを「眠り銃」っていって、没収されちゃいます。許可取る時とかもすごく調べられますよ。前科がないかとか、酒癖が悪いとか、いわゆる近所の普通の風評を身辺整理されます。だから僕は実銃の方は持ってません。
数年前に漫画家でガンマニアの花輪和一さんが銃を「改造」して捕まりましたね。我々もクラシックの銃を壊れやすいから補強したり、映画撮影用として火が出る様にします。映画の撮影くらいはいいんじゃないか、みたいなザル法的な雰囲気もあるんですけど、今は非常にそういうことにうるさくなってきています。映画で使うための改造と違法になる改造の違いは、例えば銃口線が一本入ってるインサートっていう棒。これで弾が出ない様に食い止めるんですけど、悪い人はこれを取って弾が出るようにしちゃう。これが「改造」なんですね。映画で真っ正面の寄りのアップから撮るとその棒が目立っちゃうので昔はこれを取ったりもしてたんですけど、いまそれをやると捕まっちゃう。まあそうは言っても銃口を閉塞ではなくて一本で止めてるだけだから、弾は出ないけど火は出ます。その弾に、映画的な仕掛けをするんです。
銃が本物らしく見えるコツは、撃つ時に噴く火だけじゃなくて、その反動が来た時の体の動き。クリント・イーストウッドの『ダーティーハリー』(1971)が流行った時は、わざとらしいほどみんな反動の動きしてましたからね。あと血糊も大事ですね。原理としては洋服に火薬と血糊を仕込むんですけど、それにコードがついてて、我々がスイッチを押す仕組みです。あと、飛んだりはねたり、またひいたショットでの血糊のシーンは、自分で手押しのスイッチを持ってて押すんですよ。まず普通の人は99.9%気付かない。でもこの話を一度聞くと、ちょっと気をつけるとわかる様になります。『ラストサムライ』(2003)の馬の上のシーンで、よく見ると手がそういう形になってますよ。肌からの流血の場合は、特殊メイクを使います。お腹なんかは比較的細工しやすいです。一時期、額を弾が貫通ってのが流行った時期がありましたね。額に小さな火薬と小さな血糊袋を仕込んで特殊メイクをするわけですけど、これをどんなに小さくしてもフランケンシュタインみたいになっちゃう。だから一瞬しか使えないんですよ。すぐ違うカットにつなげられる。そうすると時間と手間がかかるし、最近はメイクで弾痕を描いちゃいます。ボンって当たって後ろから出るのが最近多いですね。僕も『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)でおでこを撃たれましたよ。
いま流行りの銃は...、ちょっと前まではベレッタの92F。最近はグロックとかかな。蘊蓄になっちゃいますけど、『ダイ・ハード』(1998)の時飛行場の機内預けの中でに敵キャラが使ってて、ブルース・ウィリスが「こんな銃使ってるのはその辺のチンピラじゃない」て言うシーンがあるんです。高い銃なんですよ。なんで高いかっていうと、飛行機に乗ってもばれないようにプラスチックなんですよね。グロック。これは比較的人気がありますね。

.写真:RPG7。実際にイラク戦争で使用したもの。