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【コラム】危ない日本(上)

 どの国にも狂人はいるものだ。だから田母神俊雄という前航空幕僚長が、日本の侵略戦争や植民地支配を「ぬれぎぬだ」と強弁した主張自体に、さしたる意味を見いだそうとは思わない。

 しかし、今回の件は時間がたてばたつほど、日本の歴史に暗うつたる1ページとして残る可能性が高まっている。それは、この問題の後始末において、逃げ腰で優柔不断な姿勢や、統帥権の制度的な欠陥をあらわにした日本政府のせいだ。

 田母神氏は日本の国家理念を否定した。「植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、(中略)深い反省の念を表明」(1995年に衆院本会議で可決された不戦決議)し、「恒久の平和を念願」(日本国憲法前文)するという宣言が、日本の真意だと前提すれば、だ。同氏の主張は、例えるなら韓国空軍の参謀総長が「6・25(朝鮮戦争)は韓国の先制攻撃であり、北朝鮮の反撃は民族解放戦争」と主張したのと同じだ。

 韓国なら軍法会議にかけられているだろう。日本は名目上、軍隊がないから軍法もない。せいぜい、普通の会社員のように懲戒解雇処分を受ける程度だ。ところが、懲戒処分が複雑だという理由から、日本政府は退職金6000万円を渡し、田母神氏を定年退官させた。するとこれを批判する世論が巻き起こり、防衛相が「退職金を返納せよ」と要求、同氏に拒否されるという事態も起きた。

 この問題に対する麻生首相の対応は、野党に「逃げ腰」といわれるほど手ぬるいものだ。「航空幕僚長として不適切な行動」「再発防止策を検討している」という言葉でその場をしのぐだけで、首相自身の真意さえ疑われている。日本の首相は自衛隊の最高指揮監督権者、すなわち事実上の軍隊である自衛隊の統帥権者だ。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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