「ハクチョウも客も来ない」 餌付け自粛の十和田湖畔

例年のにぎわいが消えたおいらせ町の間木堤。ハクチョウは滞留以外、1羽も寄り付いていない=9日午後2時20分ごろ
 青森、秋田県境の十和田湖畔で4月、ハクチョウから強毒性の鳥インフルエンザウイルスが検出された問題を受け、青森県も東北の他県と同様、水場のある県内7市町に野鳥への餌付けを自粛するよう要請した。県は「ウイルスのまん延を防ぐには仕方のない措置」と説明するが、長年餌付けに携わってきた関係者の不満は消えない。本格的な飛来シーズンを前に、十和田湖畔の“震源地”周辺を歩いた。(青森総局・佐藤理史)

 十和田市奥瀬の十和田湖畔。約30年前から毎年、飛来シーズンにはパンの耳を売る無人の台が設置されてきたが、シーズンに入った今は、その台はない。

 「観光客がパンの耳を買い、ハクチョウに餌としてやる。体験型観光を提供することで、客を増やしてきたのに…」。台の設置者で土産物店「織田観光」店主の織田盛好さん(70)は、ため息をつく。

 11月―4月の毎シーズン、同店の餌の売り上げは約30万円。県による事実上の餌付け禁止命令で「一瞬でパー」になった。ウイルス検出と7月の岩手沿岸北部地震による風評被害のダブルパンチに泣く湖畔では、決して少なくない額だ。

 十和田湖畔から北東に約45キロ、青森県おいらせ町に車を走らせる。毎年約500羽が越冬する間木堤にも、自粛要請の影響がもろに出た。例年ならばもう、150―200羽が集まってくる時期だが、羽をけがして夏から滞留している2羽しかいない。当然、観光客もまばらだ。

 原因は餌不足。餌付けをやめたため、あるべき餌がなくなり、ハクチョウが全く寄り付かない。12年間、町の保護監視員を務める蝦名幸政さん(72)は「こんな状態は初めて。自分にだけでも餌付けを認めてくれれば、すぐに羽数を回復させられるのだが…」ともどかしさを口にした。

 餌付け自粛を決めた県庁から、遠く離れた観光地に漂う閉塞(へいそく)感。県自然保護課は関係者の思いに一定の理解を示しながらも、「関係市町村と協議した上で自粛要請を決めた。協力してほしい」と話している。
2008年11月12日水曜日

青森

社会



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