建材用亜鉛めっき鋼板の価格カルテルをめぐり公正取引委員会は11日、日新製鋼など大手鋼板メーカー3社を独占禁止法違反の容疑で刑事告発した。違法行為に対する処分を強化した改正独禁法の施行後のカルテルであり、悪質極まりない。
鉄鋼業界はこの数年間に何度も独禁法違反で摘発されている。消費者やユーザー企業の負担を重くし、日本の国際競争力をそいでいる事実に罪の意識はないのだろうか。カルテル・談合を早くやめるよう鉄鋼業界に猛省を求めたい。
告発されたのは新日本製鉄と住友金属工業が出資する日鉄住金鋼板(東京)、新日鉄が最大株主の日新製鋼のほか淀川製鋼所。JFE鋼板(東京)もカルテルに加わったが、最初に自主申告し告発を免れた。
改正独禁法は2006年1月から施行となった。その直後の同年4月ごろ、問題の4社は小口顧客向けの亜鉛めっき鋼板を約10%値上げすることを決め、7月出荷分から実施した。改正法の精神を全く理解しない違反で刑事告発は当然である。
鉄鋼業界の独禁法違反は目に余る。新日鉄など6社はステンレス鋼板の価格カルテルで05年春に総額約67億円の課徴金納付命令を受けた。旧日本道路公団などの鋼鉄製の橋の工事をめぐる談合では鉄鋼会社を含む44社が同129億円の課徴金納付命令を受けている。
さらに鋼鉄製ガス供給管の敷設工事の談合で昨年末、4社が総額7億円強、土木工事用の鋼材のカルテルでは今年6月に新日鉄、JFEスチールなど3社が約20億円の課徴金納付命令をそれぞれ受けた。
昔からのカルテル・談合体質を変えられないとしたら、事態は深刻である。カルテル・談合の首謀者への処分強化などを盛り込んだ独禁法の再改正案は先の国会で継続審査となった。今国会では未審議だが、早く成立させる必要がある。
公取委にも言いたい。今回の事件の解明では改正独禁法で導入した「違法行為を自主申告した企業に課徴金の減免措置などをとる制度」が役だった。だが、この制度の導入は米国に13年、欧州連合に10年遅れた。欧米に学ぶべき点があれば早く採り入れるべきだ。カルテル志向が強い鉄鋼業界の合併を安易に認めてこなかったかも再考の要があろう。
カルテルや談合を何回も摘発された新日鉄グループの総帥、三村明夫同社会長は現政権の経済財政諮問会議議員を務める。日本経済の未来を思うなら、まず自らの会社グループの規律を引き締めてほしいものだ。