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2008年11月12日

◎新幹線延伸論議 責任持って年内に方向性を

 北陸など整備新幹線の延伸について話し合うため、与党の整備新幹線建設促進プロジェ クトチームがきょう十二日、再始動する。福田康夫前首相の退陣後、一気に強まった解散風で延伸論議も宙に浮いた格好になり、沿線自治体などをやきもきさせてきたが、もう議論を先送りする理由はなくなったと言ってよいだろう。来年度政府予算の財務省原案内示まであと一カ月余り、精力的に調整を重ね、責任を持って方向性を出してほしい。

 八月の概算要求では、与党の要請で「安定的な財源見通しの確保に努め、それができ次 第、(未着工区間の)着工についての追加要求をする」という一文が盛り込まれた。にもかかわらず、当てにできそうな財源は、今のところ整備新幹線の開業後にJRが国に支払う貸付料だけである。

 これでは、未着工の北陸新幹線金沢―敦賀、北海道新幹線新函館―札幌、九州新幹線長 崎ルート諫早―長崎の三区間を建設する財源としては十分とは言い難い。民間資金の活用など別の財源案も浮上してはいるものの、短期間でめどを付けるのは容易ではないはずである。加えて、既着工区間の予算確保もおろそかにはできない。関係議員は心して議論に臨んでもらいたい。

 ただ、仮に来年度予算編成までに新たな財源を手当てすることができなかったとしても 、三区間すべての着工を見送る必要はあるまい。まずは現時点で使える財源を有効活用して投資効果の高い区間から建設に着手し、残りの区間の財源については、さらに時間をかけて協議するという選択肢もあっていいのではないか。

 北陸では福井駅部が先行整備されており、財源が限られるのならば、その先の福井―敦 賀を後回しにしてでも金沢―福井に集中投資してレールを早くつなげるのが現実的であると思われる。「同時着工」「一括認可」というと聞こえはいいが、それにこだわり過ぎて何の答えも出せぬまま年を越すのは避けたい。ここは、変な横並び意識を捨てて、とにかくレールを一メートルでも先へ延ばすことを最優先課題に据えたい。

◎金融機関の商談会 産業支援への役割期待

 北陸三県の銀行、信金がそれぞれ連携し、広域的な枠組みで商談会を開催しているのは 歓迎すべき動きである。北陸でも景気後退色が鮮明となり、企業倒産件数も増加している。金融機関に求められるのは地域経済の血液としての機能にとどまらず、厳しさを増す経営環境を打開するための新たなビジネス創出の橋渡しである。産業支援へこれまで以上に積極的な役割を担ってほしい。

 富山県の金融円滑化連絡協議会に続き石川県でも十二日に金融円滑化会議が開かれ、県 や企業団体などが金融機関に企業の資金繰り支援などを要請する。年末の資金需要期を迎え、金融機関の役割は例年にも増して重くなっている。

 そうした中で北國、富山第一、福井の三行は十一日、金沢市内で「FITネット商談会 」を開き、五百七十九の企業・団体が参加して商談が行われた。これに先立ち、十月には三県の全十八信金が「北陸ビジネス街道」と銘打った商談会を開催している。営業区域が限定された地域金融機関ほど広域連合を組む意義は大きいだろう。

 北陸では地銀や信金がそれぞれグループ化し、全国に先駆ける形でATM相互無料開放 などの業務提携を進めてきた。金融の広域化がビジネス創出の協力強化へと発展するのは望ましいことである。行政の産業支援は県境を意識しがちだが、実際の経済活動は一県にとどまらない。現実に即した広域的な枠組みで出展企業を集めれば一層の商機拡大が期待できよう。

 金融機関にとっても、商談会は融資の新規掘り起こしや企業との取り引き拡大につなが る。そうした実利を増やすには金融機関が蓄えてきた企業情報をネットワーク化し、仲介機能のみならず、自らが提案力を高める必要がある。

 北陸では地域資源を活用した農商工、医商工など異分野連携による産業創出の取り組み が活発化している。そうした動きに合わせ、組み合わせを絞った商談会、あるいは大学も巻き込んだ企画も考えられるだろう。経済状況が悪化するほど、金融機関主導の商談の場は目に見える成果が求められることを認識する必要がある。


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