新コミQ&A

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まんが家になったら、徹夜仕事になるのでしょうか?

必ず徹夜になるわけではありません。仕事のスタイルは作家さんによって様々です。徹夜は絶対にしない作家さんもいますし、完全に夜型で夕方〜朝方にかけて仕事をする作家さんもいます。体やアシスタントさんへの負担を考えると徹夜はしないほうがいいのですが、普段は昼型でも、締め切りに間に合わせるために仕方なく…という作家さんもいるようです。

描く絵がどうしても好きな作家さんの絵に似てしまいます。

最初は仕方ないと思います。プロの作家さんも、最初にアシスタントに入った作家さんの絵に似てしまうことはよくあります。描いているうちにオリジナリティーが出てきますから、今は心配しなくてもいいと思います。

本名が有名なまんが家さんのペンネームと同じなのですが…

同姓同名では混同してしまいます。ペンネームを使い、違う名前にしたほうがいいでしょう。

受賞してもプロの作家として活動する意志がない場合でも、応募していいのですか?

質問をどう理解していいのかわかりませんが、「今はプロとしてやっていく自身がない」のか、「あくまでアマチュアとしてまんがを描いていきたい」のかによっても違います。受賞やデビューの時点でプロになる自信がないのは、多くの応募者がそうです。本当の意味でのプロ作家への道はデビューした後に始まります。いくつかの読み切り作品を描いたり、読者の反響を感じたり、締め切りに追われたりしながら、次第にプロとしてやっていく自信がついてくるものです。今は自信がないけど、将来はプロになりたいというのであれば、応募は大歓迎です。しかしもしあなたが受賞してもプロになることをまったく考えていないのであれば、応募はやめたほうがいいと思います。受賞すると担当編集者がつきます。その編集者はあなたの作品を高く評価しており、あなたと一緒に面白いまんがを作って、多くの読者に読んでもらいたいと思っているはずです。でもあなたはその雑誌で描かない… これではお互い不幸なだけです。

アシスタント経験があるとデビューや受賞に有利ですか?

アシスタント経験の有無で優遇されることはありません。審査はあくまで作品で判断されます。ただし、アシスタントをしていると、画力が上がるだけでなく、作家の先生に絵コンテ(ネーム)を見てもらってアドバイスを受けたり、アシスタント同士で作品を見せ合ったりできますから、確実に作品の質が上がります。仕事場に来る編集者と知り合いになれば、担当になってもらうこともあるでしょう。審査には影響ありませんが、デビューや受賞のチャンスはより大きくなると思います。

働きながら、子育てをしながらまんがを描いています。審査やデビューにあたってマイナスにはなりませんか?

質問は34歳の女性の方からで、年齢的なことも心配されているようです。以前にも書きましたが、新人コミック大賞は年齢やキャリアで差別は一切しません。第55回の青年部門の受賞者は当時48歳の方でしたし、30歳以上の受賞者も毎回います。要は本人のやる気次第なのです。ご質問の方のように、働きながら、子育てをしながら、どうしてもプロのまんが家になりたくて応募される方も多いようです。確かに、受賞はしても実際プロとしてやっていけるのかどうか不安だ、というのもよくわかります。ですがそれはプロになったときに考えればいいことだと思います。担当になった編集者と相談し、あなたの状況にあった作画ペースを見つければいいのではないでしょうか。


新コミの受賞作がそのまま連載になることはありますか?

可能性はあります。受賞作を雑誌に掲載したら、読者の反響がすごかった。しかもその作品の完成度が高く、連載した場合でもキャラクターやストーリーの広がりが期待できるなどと判断されれば、連載も可能でしょう。たとえば高橋留美子先生は『勝手なやつら』で新人コミック大賞に入選し、連載しました(タイトルは『うる星やつら』に変更)。ただし現実的にはその作品のまま連載ということはあまりありません。何作か読み切りを掲載し、実力をつけてから連載というのが多いようですね。

もし受賞したら、必ず授賞式に参加しないといけないのですか?

強制ではありません。授賞式は平日の午後に行われますので、学校や仕事が休めずに参加できない受賞者もいます。ただそういった事情がないのであれば、ぜひ参加することをおすすめします。それは記念になるからといった理由だけでなく、他の受賞者に会って情報交換したり、担当以外の編集者と会って刺激やアドバイスを受けたりする場にもなるからです。

現在16歳です。今からまんが家を目指しても遅くはないでしょうか?

決して遅くありません。とあるプロの作家さんは、大学を出てサラリーマンをしていました。はじめて投稿をしたときは24歳でした。その後、連載が決まり、会社はやめたのですが、そのときは26歳です。同様な経歴の作家さんはたくさんいますし、30歳を過ぎてデビューした方も何人もいます。


まんが家養成講座では「絵コンテ」と紹介されているのですが、ある雑誌では「ネーム」と呼んでいます。どう違うのですか?

同じです。ノートなどにコマを割って、セリフや簡単な絵などを入れた、いわばまんがの設計図を「絵コンテ」もしくは「ネーム」といいます。まんが雑誌の編集部やプロの作家さんは「ネーム」と呼ぶことが多いようです。ただフキダシの中の文字を「ネーム」と呼ぶこともあるので、混同しないように、まんが家養成講座では「絵コンテ」と呼んでいます。


少女まんがを描きたいのですが、男の子が主人公でもいいのですか?

主人公の性別よりも、どんな読者に読んでもらうのかが大切です。女性の読者に楽しんで読んでもらえる作品ならそれは少女・女性まんがです。


ペンネーム以外に本名が出ることはありませんか?

雑誌に掲載される場合や受賞作の発表などはすべてペンネームになります。本名が出ることはありません。


歴史上の人物なら実名で登場させてもいいのですか?

基本的には問題ないと思います。実際、タイムスリップものなどで、有名な武将などがよく登場しますね。ただいくつか気をつけなければならないことがあります。それは、その人物をどう描くのかということです。
たとえば、ある宗教家を悪人のように描いたり、誹謗中傷するような内容であったりすれば、その信者の人たちから、抗議をうけるかもしれません。また、戦争犯罪者を美化・賛美するような内容だった場合、その被害をうけた人々から抗議をうけるかもしれません。なんの配慮もなしに、有名だからという理由だけで登場させると思わぬ問題になったりします。注意してください。


はじめてまんがを描きます。まず何からやればいいのでしょうか?

まったくのゼロからというのであれば、最初は鉛筆で描くことをおすすめします。もちろん鉛筆画で新人コミック大賞に応募はできませんが、まずは絵を楽しく描くことから始めてみましょう。好きな作家さんのまんがを模写してもいいかもしれませんし、カッコイイ男の子の絵を描くのでもいいでしょう。ペンを使うのは、鉛筆で自在に絵が描けるようになってからでもいいのです。


ある小説の主人公が好きなので、まんがにしたいのですが…
既存の小説のキャラクターを無断でそのまままんがにしてしまうと著作権の侵害になります。それは絶対にしないようにしてください。またちょっと名前を変えて、小説のストーリーや構成そのまんまにまんがを描くことも、絶対にいけません。「あまり有名じゃない小説だから大丈夫だろう…」と安易にまんがにしてしまうと、まんが家を続けていけないくらいの社会的制裁を受けることもあるのです。ではそのままではなく、自分なりにキャラクターメイキングしてまんがにした場合、どこまでその小説キャラクターの影響を認めるかですが、とても線引きの難しい問題です。外見、口調、性格、趣味趣向… そのキャラクター設定の一部でも似ていたらダメなのか、というとそんなことはありません。たとえば『刀を持つ退魔師の少女』という設定なら、よくあるキャラクターですから問題ありません。しかしそれに炎髪やメロンパン好きなどの特徴が加わったらアウトです。「よくある=普遍的で汎用性がある」は大丈夫ですが、「その作家の独自のもの」の領域まで入ってしまってはなりません。自分だけのキャラクターを作る土台にするだけならば許されるでしょうが… 小説家もまんが家と同じようにキャラクター作りでは大変な苦労をします。それを勝手に盗用してしまうことは、同じ創作者として厳に慎まねばなりません。
『読み切り』とは、なんですか?

一話で話がきちんと完結していることです。これに対し雑誌の連載作品などの場合は、その回だけでは話が完結しませんから、読み切りではありません。新人コミック大賞の場合、読み切り作品の形で応募していただくのが原則です。これは『指定したページ内で話をまとめる力があるのか? ストーリー構成がうまくできているか?』などの力を見るためです。


まんが家は高学歴(大学以上卒業)じゃないとなれないのでしょうか?

以前のQ&Aでも書きましたが、まんが家になる条件と学歴には何の関係もありません。ただし、第一線で活躍されているプロの先生に高学歴な先生が多いのも事実です。しかし先生方はまんが家になるために大学に行ったわけではありません。大学でどのくらい勉強したかは人それぞれでしょうが、むしろ人生経験を積んだり、興味あるものに打ち込んだりしたそういう経験が、結果的にまんが作りに役立っているのです。同様のことができるなら、大学ではなく、社会人になる選択だってあるでしょうし、アルバイトをしながら旅をする、なんてこともいいのかもしれません。判断するのはあなた自身です。


小学生や中学生でも、デビューしてまんが家になれますか?

デビュー作品が雑誌に掲載される=まんが家、と考えるなら、なれます。ただし、定期的に(週間連載や月刊連載)作品が雑誌に掲載される=まんが家、ならば厳しいでしょう。新人コミック大賞や月例のまんが賞で賞をとり、その作品が掲載されることは年齢に関係ありませんが、小学校や中学校に行きながらプロとして定期的に作品を描き続けることは、現実的には不可能です。少女まんがでは高校生でデビューする作家さんもいますが、本格的に作家活動を開始するのは学校を卒業してからになります。
早くから目標や夢を持つのはいいことだと思いますが、小学生・中学生の段階で自分の将来をまんが家に決めてしまうのは早計でしょう。高校生でも早すぎるかもしれません。学生時代を通して友人関係や社会のしくみなどを理解し、映画や小説など、まんが以外の他のエンターテインメントにも触れ、それでも「やっぱりまんが家になりたい!」のであれば、それからまんが家を目指しても遅くはありません。高橋留美子先生や青山剛昌先生ら、現在、まんがの第一線で活躍している作家さんの多くは大学卒業です。そして一様に『大学時代に経験したことがまんが作りにも役立っている』と考えています。まんが家としての評価とデビューの早い遅いは無関係なのです。
また、あなたが未成年なのであれば「まんが賞に応募する」ことを親御さんにも伝えておいた方がいいと思います。

まんが家になるためには、まんがの専門学校などに行ったほうがいいのですか?

もしあなたがまったくのビギナーならば、まんが専門学校などに行くのも手です。きちんと基礎からまんが作りを教えてくれますし、なによりまわりに同じようにまんが家を目指す(もしくはまんが好きな)人たちがたくさんいるわけですから、かなりの刺激になります。もちろん年間の授業料が必要になりますから、親御さんとも十分相談してください。
また、もしあなたがまんが賞などに常時応募しているくらいの実力を持っているなら、むしろプロの作家さんのアシスタントなどに入ったほうが早道です。現場の実践的なテクニックも身に付きますし、雑誌の編集さんもよくやってくるので、担当になってもらうチャンスもあります。


ストーリーにつまってしまった場合、まんが家の皆さんはどうしてますか?

プロの作家さんも、ストーリーにつまることはしょっちゅうです。何で悩んでいるかにもよりますが、たとえば「あと1つ2つアイデアがでればうまくいきそうだ…」と見えていれば、徹底的に考えます。逆に「ここから先がまったく思い浮かばない…」ような場合は、そのストーリーすべてを一回白紙に戻して、まったく違うストーリーを目指すこともよくあります。プロの作家さんの場合、時間との闘いになるので、まったくのゼロから考え直すことは賭でもありますが、煮詰まってムダに時間を浪費するよりもうまくいくことが多いようですね。
新人コミック大賞への応募作品なら、ストーリーでもキャラクターでも、かけられる時間は自由です。それでも煮詰まってしまうのであれば、そのストーリーやキャラクターは一度中断して、ゼロから作り直したほうがいいのではないでしょうか? もちろんまったく捨ててしまうのではなく、なにかの拍子にアイデアを思いついて、うまくできそうになったら再利用すればいいのです。


今、会社勤めをしています。もし受賞したら会社をやめた方がいいのでしょうか?

受賞したからといって、すぐに会社や学校をやめる必要はありません。受賞=すぐにまんが家として1本立ち、というわけではないのです。何度もここで書きましたが、まずは読み切り作品を何本か描いて読者の反応をみて、それから連載というのが一般的な流れです。また連載が始まっても読者の支持が得られずに、すぐに終了ということもありえます。何の保証もないのがこの世界なのです。そんな状況で今の仕事や学校をやめるのは、リスクが大きすぎます。もし連載が決まった場合、仕事や学業と両立させるのは困難なので、やめてしまう人は多いのですが、ギャグまんがなどの連載や月刊誌の連載などでは時間的に余裕があります。実際、サラリーマンをやりながら、連載している作家さんもいます。まんが家としてやっていけるめどがついてから決断しても遅くありません。


ギャグまんがとストーリーまんがはどう違うのですか? またギャグまんがで受賞したら、ずっとギャグまんがを描かないといけないのですか?

おおざっぱに分類すれば、

  • ストーリーまんが=物語性を重視したまんが
  • ギャグまんが=お笑いを目的にしたまんが

となるでしょうか。
しかしこのような分類は今やとてもあいまいになっています。作品によってはストーリーまんがにも多彩なギャグがあるのが当たり前です。現在純粋にギャグまんがと呼べるものは4コマ系のまんがだけでしょう。ですからことさらストーリーだ、ギャグだと意識しなくてもいいと思います。迷ったらストーリー部門に応募すればいいでしょう。
  またギャグまんがで受賞したからといって、ギャグにこだわることもありません。4コマまんがでデビューした人が、ストーリーで大ヒットを飛ばしたこともありますから。


韓国に住んでいる漫画家志望の21歳です。日本でのコミック雑誌掲載を目指しているのですが、どうすればいいでしょうか?

新人コミック大賞では、海外からの応募ももちろん大丈夫です。ただしいくつかのハンデがあることも事実です。それは作家さんと編集者とのコミュニケーションの問題です。特に受賞後、デビューや連載に向けて編集者と緊密な打ち合わせをする場合、どうしても言葉の壁が問題になります。すでに実績のある、海外の作家さんの作品を翻訳・出版することは日本の出版社でも当たり前になっていますが、コミック作家育成となるとまだまだ環境は整っていません。質問は韓国の方からですが、ある程度、現地で経験をつんでから、出版社経由で日本のコミック雑誌編集部を紹介してもらうのがいいのではないでしょうか。

プロの作家さんにはアシスタントさんは何人くらいいるのですか?

作家さんによって、また週刊連載か月刊連載か、などによっても異なります。月刊連載の場合ですと、アシスタントをまったく使わない作家さんもいます。ただ週刊連載となれば、アシスタントなしではほとんど不可能です。だいたい3〜4人が平均でしょうか。


アシスタントは何歳からできますか?

年齢の規定が明確にあるわけではありませんが、20歳以上でしょうか。作家さんによっても違いますが、アシスタントに入ると2〜3日は先生の仕事場に入ります。学業との両立は難しいので、学校を卒業してからとなります。また、仕事が徹夜になることも多いので、未成年の方も難しいでしょう。


受賞して、すぐ連載できますか?

すぐに連載できるかどうかは実力次第です。受賞作のレベルが高く、編集部が『この作家さんなら、すぐにでも連載ができる』と判断すれば、連載となります。しかし連載ともなると、週刊誌なら、毎週きちんと描けるか? 読者の反応はどうか? など様々なハードルがあります。ほとんどの受賞者さんは、アシスタントをしたり、担当編集者と打ち合わせを重ねたりしながら、力をつけ、まず読み切り作品で読者の支持を得て、それから連載、というケースが多いようです。


スクリーントーンはどこで買えるのですか?

大きめの画材店や文具店などで手に入ります。最近はまんが画材コーナーなどもあるようですが、建築デザインのコーナーに置いてある場合もあるようです。また、老舗のレトラセットの他、アイシー、デリーター、マクソンなどからも出ていますので、自分にあったものを探してください。近くに画材店などがない場合、WEB通販などを利用してみてください。


男性の作家さんに女性のアシスタントは可能でしょうか?

仕事中は泊まり込みになる場合もありますから、異性のアシさんは不可なことが多いようです。もちろん作家さんによりますので、当該編集部にお問い合わせください。


応募した作品を自分のHPなどで公開してもいいでしょうか?

応募規定にある「投稿された作品の雑誌掲載権〜」の注意事項は、主に二重投稿などを防ぐためのものです。作品自体の著作権は当然作家さんにありますし、WEB上での公開までは規定していませんから、公開しても問題ありません。ただし受賞した場合、その作品が雑誌に載る場合もありますので、WEB上での公開は当該編集部と話し合ってください。


通ってる学校はアルバイト禁止です。もし受賞してプロになる場合はどうしたらいいのですか?

14歳の方からの質問です。面白い作品であれば、年齢は問いませんから、14歳で受賞、プロデビューということもありえます。受賞して雑誌に掲載することがアルバイトに該当するかどうかはわかりませんが、学校側に事情を話して許可を得たほうがいいでしょう。また現実的には、学校の卒業を待って本格的な執筆ということになります。


まんが家になるには学歴は関係するのですか?

学歴、年齢、性別、いっさい関係ありません。おもしろいまんがを描ける実力だけが要求されるのです。


アシスタントはやった方がいいのですか?私は人づきあいが苦手なのですが…

これも経験上でお答えしましょう。やった方がいいです。画力は確実にアップします。しかも身近にプロの作家さんがいるわけですから、すごく参考になります。いわばお金をもらいながら、まんが家の勉強ができるわけです。例えば少年サンデーで『金色のガッシュ!!』を連載している雷句誠先生は、藤田和日郎先生のアシスタントをやっていました。ビッグコミックスピリッツで『高校アフロ田中』を連載している、のりつけ雅春先生は、ロドリゲス井之介先生のアシスタントをしていました。週刊連載をしていると、だいたい3人くらいのアシスタントが必要になります(例外はありますが…)。同じアシスタント仲間に刺激を受けたり、描いたネームを見せ合ったりと、まんがに浸れる環境としては申し分ありません。また自分が連載作家になって、アシスタントと仕事をする時も、その時の経験がきっと役に立つはずです。


地方でまんがを描いているのですが、東京に行った方がいいのでしょうか?

もしあなたがまだまんがを描き始めたばかりであったり、未成年でしたら、そのまま地元(もしくは親元)にいた方がいいと思います。東京で一人暮らしをするためには、アルバイトなど収入を得る手段を考えなくてはなりませんし、まんが家としてある程度の将来設計が描けない段階では、リスクが大きすぎます。ただ、新人コミック大賞で入選したとか、担当編集者に勧められた、などの場合は、東京(もしくは近県)に来た方が有利です。担当編集者と打ち合わせしたり、ネームをみてもらう時、もちろんFAXと電話やメールでも可能ですが、直に会って話をした方が伝わりやすいのです。ネームを読んでもらっている時の担当編集者の表情の変化はとても参考になりますし、まんがとは直接関係ないような「昨日みた映画なんだけどさ〜」といった話が実は大切だったりするのです。余談ですが、「まんが家なのですが、アパートを借りたい」と不動産屋さんに行っても、なかなか貸してくれません。以前に新人まんが家さんと仕事場探しをしたことがあったのですが、3店で断られました。不安定な職業と思われているのでしょうか。最終的に4店目で、私が保証人になることで借りられました。「学生です。親が保証人になります」と言ったほうが確実です。


いいアイデアや題材が、浮かばない時はどうしたらいいのですか?

いきなり直球ですね。プロの作家さんもこれにはいつも悩んでますし、答える私たちの方も、いい方法があったら教えてもらいたいくらいです(笑)。質問をいただいたあなたが、まだまんがを描き始めたばかりの方であると仮定して、基本中の基本を一つお話ししましょう。それは「換骨奪胎(かんこつだったい)」です。この言葉を辞書でひくと「他人の発想や形式を踏襲しながら、独自の作品を作り上げること」とあります。要するに、既にある作品からネタを拝借することです。もちろんそのまま描いたら、ただのパクリですし、へたをすると著作権侵害で訴えられてしまいます。あくまで参考や下敷きにするのです。黒澤明監督の作品が、いろんなクリエイターに「換骨奪胎」されたのは有名ですし、黒澤監督自身の作品も古典に影響を受けていたりします。カッコよくいえば「インスパイアされた」ですか。例えば、15少年漂流記の舞台を宇宙にしたら…とか、戦国自衛隊のアメリカ版だったら…とか、そんな発想の仕方です。ただそのためには、たくさんの小説を読み、映画を観て、自分にストックしておかねばなりません。そしてそういう人は無意識のうちに自然に「換骨奪胎」して、オリジナルな作品を作ってしまうのです。


私は32ページくらいのまんがを描くのに3か月くらいかかります。プロの作家さんはどのくらいのスピードでまんがを描くのですか?

作家さんによって違います…と言ってしまったら元も子もないのですが、本当にそうです。例えば、週刊連載をしている作家さんで、1週間に18ページくらいのまんがを描く場合、早い作家さんで打ち合わせから原稿アップまで3日という方もいますし、フルに1週間使い切ってもまだアップしない方もいます。平均すると、ネームに2〜3日、作画に3〜4日というところでしょうか。こうやって考えると、相当早いと思われるかもしれませんが、作画にはアシスタントさんも入りますし、プロの作家さんも最初からそんなに早かったわけではありません。デビュー前は32ページ描くのに、数か月かかっていた方もいます。要は慣れなのです。たくさんのまんがを描いているうちに、上手く早く描くコツを身につけていったわけです。ですから今の段階では、そんなにスピードを心配しなくてもいいと思います。