朝晩の冷え込みが増し、ストーブの暖かさが恋しい季節になった。だが、灯油価格は依然として高水準で推移しており、消費者やクリーニング業者などには「厳しい冬」の気配。昨年に続いて生活保護世帯に灯油代を助成する行政の動きも出始めた。一方、家電量販店では石油暖房器売り場の縮小が目立つ。
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縮小された石油暖房器の売り場=鳥取市内の家電量販店
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石油情報センター(東京)によると、鳥取県内の十月の灯油価格(十八リットル当たりの店頭販売価格)は二千百十八円。ピークだった今年八月の二千四百十二円より三百円ほど安くなったが、一年前の千五百七円に比べれば一・四倍の高値だ。
風呂を石油給湯器で沸かしているという鳥取市立川町五丁目の主婦(65)は「お湯を使う量を減らしているけど、冬に向けて支出がかさむ」とため息交じりに話す。
鳥取県は昨年に続き、生活保護世帯を対象に市町村が灯油代を助成する場合、一世帯約三千八百円を上限に三分の二を補助する方針だ。現時点で今冬の灯油代助成を決めているのは日南町のみだが、今後増えるとみられる。
灯油高にはクリーニング業者も悲鳴を上げている。プレス加工や蒸気アイロンのためのボイラー燃料、ドライクリーニング洗浄液の石油系溶剤に灯油を使用。県クリーニング環境衛生同業組合の金田敏彦理事長は「大手チェーンとの競争激化で、上昇したコストを料金に転嫁しにくい状況にある。採算が合わなくなって廃業する業者が増えることも考えられる」と危機感を募らせる。
家庭では灯油から電気への移行も進む。鳥取市内の家電量販店は「エアコンや電気カーペットなどの電気暖房器を見て回る来店客の姿が目立つ」と、今期は石油暖房器の売り場を縮小。エアコンの販売目標を前期比150%に設定し、電気暖房機器の販売に全力を挙げる。
岩美町浦富の主婦(32)は「今年の冬は石油ファンヒーターを使わず、エアコンを中心にしようと考えている」と暖房器を切り替える意向だ。
この二カ月、灯油価格は下がったものの、県石油商業組合は「一時的なもの」とみる。「株と同じで原油も投機の対象になり、これまでは株価が下がると原油価格も下がっていた。しかし、これから需要期を迎えると、再び値上がりするだろう」と予測している。