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社説:金融サミット 新しい時代へ結束の第一歩を

 新しい結束のページが開かれるだろうか。

 米国発の世界的な金融危機を受けて主要20カ国・地域(G20)の首脳が今週末、米ワシントンに集まる。日米欧の先進国だけでなく、中国やインド、ブラジルなど新興国も参加し、首脳レベルで非定例の会議を開くという異例の出来事だ。

 第二次大戦後の世界経済秩序を築いた1944年のブレトンウッズ会議にちなみ、「ブレトンウッズ2」などと期待をかける向きもある。しかし急に開催が決まった1回の会議に、画期的な成果を期待できるほど問題は簡単ではないだろう。先進国と新興国の指導者が共通の理想と原則を掲げ、結束して一歩を踏み出す誓いの場にしてほしい。

 サミットに先立ちブラジルのサンパウロで開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議では、新興国が、新しい枠組み作りに伴い、自らの発言力向上を訴えた。国際経済で無視できない存在となった彼らが積極的に関与することは当然だが、権利の主張だけでなく参加者としての責任を担っていく覚悟が求められる。

 先進国も、主導権争いのための非難合戦などで分裂するようなことがあってはならない。G20サミットが新たな対立の場と化すようなことがあれば、市場から手痛い制裁を受けることになろう。

 現在の経済危機が過去のものと異なるのは、第二次大戦後の国際経済を主導してきた米国で、その成功の根底を揺るがす危機が起きたという点である。市場を最重視した資本主義のモデルが崩れ、基軸通貨ドルの信認も大きく揺らいだ。

 米経済やドルに集中し過ぎた役割を、今後いかにみんなで分担し支え合っていくのか。金融の暴走を防ぎ、世界経済をしっかりとした成長軌道に引き戻すために何をするのか。課題は極めて大きい。

 今回の会議で議長役を務めるのは任期切れ間近のブッシュ大統領だ。よって本格的な実質面での議論は、オバマ新政権の誕生を待ってからということになろう。つまり今回の会議は、次期米大統領に対し、米国以外の世界が、経済や金融の立て直しについてどのような考えを持っているかを示す機会ともなる。

 それだけに、活発な発信を続けているのが欧州勢だ。会議を提唱したのも欧州だった。それに対しアジアは、団結して何かを提案するという動きが乏しい。そんな中で中国は、総額57兆円の景気刺激策を発表するなど、会議を意識し存在をアピールしている。

 世界第2の経済大国、日本は、国内の政治日程や定額給付金をめぐるどたばたに明け暮れている。主要な国際協調の場が「G8」から「G20」にシフトしようとしている中、この体たらくでは、ますます存在感が薄れてしまうだろう。

毎日新聞 2008年11月11日 東京朝刊

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