勝間和代のクロストーク

「隠れた問題 テーブルに」サンデー毎日・山田道子編集長と対談

2008年10月07日

◇「報われる」仕組み構築を

 ベストセラーを連発している経済評論家の勝間和代さん(39)。今最も「旬」の女性と、今月週刊誌「サンデー毎日」初の女性編集長となった山田道子(46)が対談した。詳しくは今週発売の「サンデー毎日」10月19日号を読んでいただきたい。ここでは、山田が勝間さんの新刊「勝間和代の日本を変えよう」(毎日新聞社)について聞いた。

20081007.jpg ◇いわく「日本はよくなる」の世代 週刊誌がなくなるような 「ユルさ」許されない世の中は嫌--山田編集長

 ◇声をあげ、反映させるには問題を認識するべきだと思う--勝間さん

 山田 勝間さんは「年収10倍アップ」などビジネス書の分野で多くのベストセラーがありますが、今回はちょっと別の次元の本になりましたね。「日本を変えよう」というストレートなタイトルで書かれた理由を聞かせてください。

 勝間 現状を分析すればするほど、日本の先がどう見ても暗いんですね。それは、漫画家の西原理恵子さんや作家の雨宮処凛さんと対談した中でも浮かび上がってきました。そこで、子どもたちが未来に希望の持てる国にするにはどうしたらいいのか。私たちが日常生活でできることは何かを考え、まとめました。

 山田 お二人との対談も収録されていますね。西原さんとの「最強ワーキングマザー対談」というタイトルはよかった。勝間さんは3人の娘さんがいらっしゃいます。

 勝間 一番上の娘は18歳ですが、彼女を産んだ18年前と今とでは女性が働く環境はずいぶん改善されたと感じます。もちろん現在、男女共同参画が完全に実現しているかというと、そうは言えません。でも、女性たちがずいぶん声を上げてきましたから、状況は確実に良くはなっています。このままあと20~30年たてば大丈夫じゃないかと思っているんですけれど。

 山田 私は男女雇用機会均等法施行の1年前に入社しました。「女性初」はつきまといましたが、確かに働きやすくなりました。男女共同参画はめどは立っているとしても、ほかに問題があるというのですね。

 勝間 今一番関心があるのはポスト資本主義、貧困問題や格差問題です。これらは今後、悪くなっていくことはあっても、良くなるとは全く想像できません。先日、日産自動車CEO(最高経営責任者)のカルロス・ゴーンさんにお目にかかった時、「どうやって日産を立て直したんですか」と尋ねたら、「問題はテーブルの下に隠れていた。それを僕は、プット・オン・ザ・テーブル(putonthetable)にしただけだ」とおっしゃるんですね。隠れていた問題を明示してあげれば、やる気のある人が手を挙げて、解決したくなるというのです。

 山田 それで本という形で問題をテーブルの上に載せたのですね。一つ気になったのは、40代後半以上の人は「それでも、日本は良くなると考えている」という指摘です。なんだかんだ言っても日本は大丈夫だと思っていると……。私もこの世代に入りますが、世代間で危機感にかなり差があるわけですね。

 勝間 私は今年で40歳ですが、日本が良くなるとはちっとも思っていません。でも、もっと若い世代、20代後半以降の人たちは、相当の危機感を持っているんですね。本当に仕事がないから、将来に対する不安でいっぱいなんです。すごい勢いで自分がホームレスになるんじゃないかという危機感を増幅させています。それに対し、企業は経営が大事ですから、同じ成果を生むならコストが安い方を志向します。従って、年代別のゆがみはますます広がっていきます。

 山田 本の中で、「正規雇用と非正規雇用の均等待遇の実現」や「最低賃金の引き上げ」などワーキングプア・貧困対策のための四つの提言をしていますね。

 勝間 世界のさまざまな国を思い浮かべてみるとある意味、日本は特に大きな問題のない社会なのかもしれません。「努力すれば報われる」ということは確保されています。ただ、確保されている人といない人がいるのが問題だと言っているのです。確保されている人たちが、確保されていない人に対して「報われる」仕組みを作らなければ一体誰が作りますか?

◆まずは、「選挙で投票に行こう」

 山田 その役割は政治も果たすべきだと思います。解散・総選挙が取りざたされていますが、今の政治をどう見ていますか。

 勝間 私は政治家や官僚にたくさんお会いします。でも、本当に悪意があったり、心底悪い人なんてそういないんですね。ただ、どうやったら良くなるかが分からない。人間は自分の利害が一番大事です。しかし、政治家や官僚にとっての利益の最大化が、私たちにとっての利益の最大化と一致していないというのが一番の問題だと考えます。しかも経済学の「プリンシパル・エージェント・プロブレム」という理論によると、プリンシパルである国民とエージェントである官僚や政治家の利害が一致していないと、エージェントは自分の利益を優先するのです。解決のために私たちは、彼らに正しい情報と、私たちの本当の希望を伝える努力をしなければならないのです。

 山田 だから、日本を変えるためにはまず、「選挙で投票に行こう」と呼びかけているのですね。

 勝間 若い人の投票率は高齢者より低い。選挙は「私たちのためにこういうことをしてください」という考えを社会に反映させる貴重な機会であることを認識すべきです。

 山田 どのような声をあげていいか分からない人も多いのではないでしょうか。

 勝間 だからこそ私は、声を上げてもらうため、問題を認識してもらおうと考えるのです。そのためには「情報リテラシー」を身につけてほしい。山田さんには申し訳ないのですが、マスメディアだけを見聞きしていると誤解もするんですよ。

 山田 分かります。新聞にしても週刊誌にしても、取材対象に迫りながら、自らがどこに立っていて物事を見ているのかを客観視することは大切です。

 勝間 ワーキングプアの問題にしても、マスメディアで働いている人たちがワーキングプアから遠いことが多いので、実像よりは縮小されて伝わってしまうんですね。世の中に起きていることの本当の写像になっていないのです。男女共同参画の問題も、取材する側が8割ぐらいは男性なので、なかなか写像にならない。政治も同じ。9割男性。しかもご高齢だし、2世、3世が多い。

 山田 10月5日から毎日新聞のくらしナビ面で勝間さんが始めた連載「勝間和代のクロストーク」は、マスメディアのあり方に一石を投じるものです。

 勝間 もっといい知恵があるのではないか、と読者と双方向で会話しながら進めていきたい。あるテーマについて私がコラムを書き、賛否をネットで読者から募り、結論を新聞に戻す。必要に応じて政党や官庁に質問書や意見書を出したりしていきたい。新聞をかませることで匿名性と攻撃性の強さというITのマイナス面を消し、「衆人の知恵」を集めたい。私は今、日本に変化を起こすためのキーワードは「衆人の知恵」だと思っています。

 山田 少しでも暮らしやすい世の中にするため、「サンデー毎日」も、「衆人」の中に入っていければと考えています。雑誌の廃刊が続いていますが、私は週刊誌がないような、ユルさが許されない社会には生きたくないと思っているんです。

 勝間 いま勢いのあるのは女性の読者が多い雑誌ですね。女性の方が元気がいいですから。「サンデー毎日」の読者層はどうですか?

 山田 調査によって多少幅があるんですが、おじさんがほとんどです。男性の読者に引き続き読んでいただきつつ、かつ元気な女性の読者を増やしたい。これが最大の目標です。

 勝間 私は出版マーケットがなぜ一番好きかというと、フェアなところなんです。いいものを作れば、反応がすぐ返ってくる。ちゃんと売れるんですよ。

 山田 勝間さんは、年収や効率を10倍アップするための本も出されています。ぜひ、サンデー毎日の部数10倍アップ法を教えていただきたい。

(この続き・詳細は、今週発売の「サンデー毎日」10月19日号で。政治、経済から女性を取り巻く現状などについてさらに語り尽くします)

 
 

勝間さんの提言「年金改革」に対する
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