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産科診療再開 安心できる医療整備が急務2008年11月11日

 出産は病気でないが、胎児の発育状況や妊婦の健康状態によって、母子共に危険が伴う。これを回避するため、複数の産婦人科医と助産師らが協力し、出産に対応することで日本の産科医療は新生児、妊婦の死亡率を減少させ、世界最高水準に達している。
 が、24時間体制で取り組む医師が過酷な仕事に耐えかねて辞めていく。結果、医師不足となり、産科診療を見合わせる病院が出ている。
 産科の診療制限をしてきた県立北部病院に2人の産婦人科医師が着任し、4人態勢での診療が始まった。医師増員で北部地域の産科診療に一定の安心感が持てることを歓迎したい。
 救急患者の受け入れを含めた完全再開は12月ということだが、事前の妊婦健康診査などを北部病院で受診していない人や、生まれそうになっていきなり病院に駆け込む「飛び込み出産」は、県立中部病院が対応するなど課題は残る。
 北部病院は2005年4月に医師不在のため産婦人科を休止。07年12月に医師2人が配置され、婦人科外来診療だけ再開した。08年7月から産科の一部を再開し、異常妊娠や合併症妊娠の紹介患者を受け入れてきた。
 北部病院の産婦人科休止で、早産などの異常出産の危険性がある北部地域の妊婦の多くは、中部病院が受け入れていた。
 12月以降、北部病院は急患を受け入れることになるが、休止する前の受け入れ状態に戻るには時間がかかるとみて、中部病院は引き続き協力態勢を取る。完全な受け入れ態勢が整うまで、両病院間の連携は重要だ。
 北部病院が担当する地域は12市町村に及ぶ。地域の中核医療機関として、態勢強化は肝要だ。医師が長期間にわたり勤務できる環境づくりが必要だ。地域と医師のきずなを深めることはもとより、国や県は地域医療立て直しの財源確保に努め、世界に誇る安全な産科医療を継続するため、産科医が働きやすい環境整備が急務だ。


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