特集:
Sony BMGコピー防止機能付き音楽CDが招いた大問題
トロイの木馬などを誘発する「rootkit」で
パソコンセキュリティの低下を招き、世界レベルの訴訟へ
●「Sony BMGの件」とは、昨年末、欧米でソニーの子会社であるレコード会社Sony BMGに対して頻発している一連の訴訟問題のことを指す。総合家電企業であると同時に世界有数のエンターテイメント企業としての顔を持つソニーがなぜ、音楽事業でこのようなトラブルを起こしたのか。ソニー本体をも揺るがす大問題となった「懲罰」に至る過程と、その背後にあったSony BMGの思惑を解説しよう。
文/津田 大介(ネオローグ)
2006年1月31日
2005年10月31日、米国の著名なプログラマーであり、ライターとして複数の書籍も執筆しているMark Russinovich氏が、自身のブログで「Sony BMGがリリースしている音楽CDに付属しているコピー防止技術『XCP』が、ウイルスなどの一種である『rootkit』に類似した技術を用いている」と指摘した。これがすべての始まりだった。
その翌日、フィンランドのセキュリティ・ベンダーであるF-Secure社も、自社のブログ上でXCPによるrootkitの不正インストールを確認し、事実関係を公表した。この情報は瞬く間にネットを通じて世界中に広まり、その2カ月後には全世界を巻き込んだ訴訟問題へと発展することとなる。
「rootkit」とは一体何か? 一般的にコンピュータに対して不正侵入やデータの破壊などを行うクラッカーが侵入した証拠を隠すため、OSそのものを改ざんし、再度侵入しやすくする“裏口”(バックドア)を作るソフトのことを指す。
Mark Russinovich氏とF-Secure社は、rootkitがSony BMGが発売したコピー防止機能付き音楽CD(海外では「Copy Protected CD」、日本では「コピーコントロールCD(CCCD)」と呼ばれることが多い。以下では「CCCD」として統一して使う)内に密かに隠されており、「ユーザーがパソコンにXCPのCCCDを挿入して、専用プレーヤーソフトをインストールすると、知らない内にrootkitがインストールされる」という事実を解析したのだ。
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