【北京=峯村健司】先週まで北京で開かれたチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の特使との協議の責任者である中国共産党統一戦線工作部の朱維群副部長が10日、朝日新聞記者らの取材に対し、「中国政府が譲歩することはあり得ず、ダライ・ラマ側が我々の要求に従って改善すべきだ」と述べ、ダライ・ラマ側が妥協しなければ、対話路線を見直す可能性もあることを示唆した。
今年5月の協議再開後、担当の高官が外国メディアの個別取材に応じたのは初めて。北京五輪を前に国際社会の求めに応じて再開した協議が再び暗礁に乗り上げる公算が大きくなった。
インドで17日から開かれる亡命チベット人の緊急会議では、チベット独立を求める急進派から対話路線の見直しを求める声が強まるのは必至だが、朱副部長は「中国政府に何らかの影響を及ぼすものではなく、会議で誤った選択をすべきではない」と警告した。
その上で朱副部長は、協議を打ち切った場合の対応について「今後どうなるかはわからないが、ダライ・ラマがチベットは中国の一部であるという大前提を認めて、生存中に正しい選択をすべきだ」と求めた。