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Google のマイ・マップというサービスについて、
「これは利用者のために無償で奉仕している」
と思っている人が多い。それは勘違いだ。
マイ・マップというサービスは、金儲けのためにある。その点を明確に指摘しておこう。
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かつて Google 検索サービスをしたとき、
「これは利用者のために無償で奉仕している」
と思っている人が多かった。しかし、それは勘違いだ。Google は検索サービスをしたが、その後まもなく、「検索連動型広告」を始めた。それによって巨額の広告収入を得るようになった。それは途方もない巨額だ。2008年の第3四半期の純利益は13億5000万ドルである。(ちなみにソニーは、2008年度第2四半期の営業利益が 110億円だから、約1億ドルにすぎない。Google の1割にも満たない。)
今やネット広告は収益の塊だ。出版やテレビの広告はどんどん減少しているのに、ネット広告は急成長。そのなかでも圧倒的多数を占めるのが、検索連動広告だ。Google も収益のほとんどを検索連動広告に頼っている。
ところが、こういうボロ儲けの活動(ネット検索)を見て、
「 Google は利用者のために無償で奉仕している」
と勘違いしてしまう人がいるわけだ。
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では、マイ・マップは? まったく同様だ。今は広告が少ないので目立たないが、すでに広告は開始されている。
マイマップのサイトで、「東京」を検索してから、さらに「ホテル」を検索するといい。次のページが表示される。
→ マイマップ「東京 ホテル」
すると、左側の欄に、いろいろと地点(スポット)が表示される。それをどんどんスクロールしていくと、最後のところで、「スポンサーリンク」が表示される。
同様に、京都の場合もある。
→ マイマップ「京都 ホテル」
ここでは、地点(スポット)は二つしかなく、広告は三つもある。
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こうしてみると、この広告の強力さがわかるだろう。たとえば、あなたが京都に出張しようとする。「どこのホテルにしようかな?」と考えるとき、「会場のそばのホテルがいいな」と思う。そこで、会場を地図で表示してから、そのそばにあるホテルを探す。
この場合は、Google マップがとても有益だ。それゆえ、業者としては、ここにどうしても広告を掲載したい。そこで、広告代に多額の金を払う。だから Google は大儲けする。
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こうしてわかっただろう。マイマップというのは、ユーザーのために無償奉仕しているのではない。金儲けのための方法なのだ。
Google は金儲けのために、マイ・マップという事業を営んでいる。そして、その事業において、大量の個人情報を漏洩させている。Google 自体が故意に漏洩させているわけではないが、漏洩するシステムを自分で用意しておいて、漏洩を阻止しようとしない。
ここでは、Google は少なくとも「共同正犯」という形で、個人情報漏洩の犯罪をしていることになる。
ただ、Google の単独犯ではない。漏洩には、別の共犯者である登録者の助力が必要だ。そのせいで、「 Google の責任じゃない」と思う人が多い。「単独犯ではないから、犯人ではない」と。
こうして、Google は人々の錯覚を利用して、犯罪によってボロ儲けするわけだ。
「馬鹿をだまして、ボロ儲け。ウハウハ。ネット・オタクほど、ネット好きだから、あっさりコロリとだませるのさ。ちょろいものさ。儲けた金が、1億ドル、2億ドル、……あんまり多くて、数えきれんわ」
【 追記 】
高木浩光氏が新たな指摘をしている。
→ http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20081109.html
「マイ・マップの情報を削除できない。消したい個人情報が消せなくて、公開されっぱなしで、困っている」
という状況の指摘。マイ・マップのバグ。しかも、ユーザーのバグ報告は1年前から出ているのに、バグはずっと放置されているという。
これは重要な指摘だ。特に私から何か、高木氏に向けてコメントすることはない。
ただ、一般読者に向けて、ちょっと解説しておこう。
このことをもって、「 Google は無能だ」とか、「 Google は悪意がある」とか、そういうふうに認識するべきではない。Google がやっていることは、きわめて当然のことなのだ。そのことは、本項を読めばわかる。
そもそも、Google が狙っているのは、何か? 「ユーザーに対するサービスだ」と思っている人が多いだろうが、それは勘違いだ。Google は、ユーザーのためにやっているのではなく、自分の利益のためにやっている。そして、利益のために大切なのは、広告主である。ユーザーではないのだ。
ここまで理解すれば、Google の対処も理解できる。
Google がバグを放置するのは、バグを修理しても、1円の儲けにもならないからだ。Google にとって大切なのは、あくまでも広告主である。広告主のために至れり尽くせりにすることが最大優先となる。
その一方、金にもならぬユーザーのなんて、何の価値もない。ユーザーは、広告主の広告を見てくれる、ただの餌にすぎない。ユーザーは、お客様ではなくて、ただの食い物にすぎないのだ。( Google のお客様は、広告主だ。金を払ってくれないユーザーは、ゴミ同然である。本人は「無料で嬉しい」と勝手に喜んでいるようだが。)
とすれば、Google にゴミの声が寄せても、そんなゴミの声を聞くはずがない。
たとえば、ユーザーが消したい個人情報が削除できないということがある。また、公開されたくない個人情報が他人によって公開されている。それを苦情として申し立てる声が出る。(高木氏が指摘したとおり。)
では、そういう声を聞いて、Google が対処すると、Google はいくら儲かるか? もちろん、1円も儲からない。それどころか、多額の損をする。
第1に、バグを修正するために、費用がかかる。その費用はまるまる赤字となる費用だ。
第2に、バグを修正すれば修正するほど、公開される情報が少なくなる。「何でもかんでも公開」にしてしまえば、多大の情報が出るが、いちいち制約を付けると、公開される情報が少なくなって、マイ・マップの利用価値が減ってしまう。
さらにまた、麻生邸や石原邸を見たくなる覗き見趣味の人もいるし、また、いけない個人情報をあえて覗き見したくなる人もいる。(出歯亀趣味)
こういう出歯亀趣味の人々がどんどんマイ・マップを見るようになれば、マイ・マップの利用率が高くなるので、広告を見てもらう率も高くなる。
たとえば、私が本項で、「東京 ホテル」や「京都 ホテル」という例を示せば、その例を見て、マイ・マップの広告を見る人が多くなる。
つまり、Google が「個人情報漏洩」という悪をなせばなすほど、「怖いもの見たさ」でマイ・マップを見る人が増えるから、かえって広告効果が高くなる。
何のことはない。Google は自分の欠陥を利用して、大々的に宣伝して、儲けているのだ。欠陥が多ければ多いほど、金が儲かる仕組みなのだ。
実際、ここ数日、Google のマイ・マップの利用率は、驚くほど高くなっているはずだし、広告閲覧率も驚くほど高くなっているはずだ。世間の大騒ぎを見て、Google は「しめしめ、バグのおかげでボロ儲け」とほくそ笑んでいるはずだ。
そして、高木氏であれ、私であれ、そういう Google にまんまと利用されているのである。 (^^);
私たちが Google の悪を指摘すればするほど、Google はますます儲かるようになる。つまり、「悪による金儲け」という新ビジネスモデルを構築したのだ。(もしかしたら特許出願中かも????) (^^);
結論
マイクロソフトであれ、Google であれ、その企業体質は同じだ。「金儲けの最優先」である。
そして、その方針のもとでは、「バグの解消」「セキュリティの向上」という点は、ないがしろにされる。その一方で、「機能の向上」「新機能の追加」は、最優先の課題となる。(金儲けのために)
Google がこの一年間にやってきたことを、振り返ってみればわかる。彼らが全精力を上げてやって来たのは、ストリートビューその他の新サービスだ。そっちに技術者を振り向けてきたから、「マイ・マップのバグ修理」なんていう1円にもならないこと(むしろ損をすること)に、技術者を振り向けるはずがないのだ。
高木氏は最後にこう疑問を呈している。
「グーグル社はこの欠陥の存在を認識しながら放置してきたのではないか」
実は、今さら気づくほどのことではない。ごくごく、当り前のことなのである。
もし人々が、それを聞いて驚くとしたら、「悪魔が悪をなした」と聞いて驚くようなものだ。驚く方が、どうかしている。悪魔は悪をなすのが当然だからだ。
誤っているのは、Google というよりも、人々の認識の方なのだ。世間には悪党は数え切れないほどいる。Google もまた、その一つにすぎない。
なのに、Google を天使のごとく勝手に信じていた人々が多い。そういうふうに、愚かな妄想を信じてきたから、今になって「 Google は悪魔だ」と聞いて、びっくりするのである。ただの当り前のことなのに。
( ※ ついでだが、Google だけが悪魔であるわけじゃない。あらゆる企業はすべて悪魔である。別に、社会奉仕を目的としているわけじゃなくて、単に自分の利益を増やそうとしているだけなのだ。……ただ、こういう連中を、「すばらしい天使だ」と賛美する著述業の人々がいる。そのせいで、人々は勘違いしてしまうのだ。)
( ※ このように Google を賛美してきた著述業の人々とは: → 続・知的生産とパソコン )
同じことは、Google だけでなく、マイクロソフトにも当てはまる。ともあれ、マイクロソフトであれ、Google であれ、根っこの体質は同じだ。ただの「金儲け」である。
マイクロソフトは、 Vista の機能アップにばかりに、技術者を振り向けてきた。
その一方で、セキュリティ面には手抜きした。「怪しい奴は、まとめてブロックしてしまえ」という、おおざっぱな方針を取った。そのせいで、「 XPで動くソフトが Vista では動かない(互換性が取れない)」という問題が多発するようになった。
( ※ OS の基本に触れるような従来ソフトを、一律でウィルスと見なして、作動禁止にしてしまったから。そのせいで MS-Office2002 さえまともに動かなくなってしまった。)
十年ほど前に世間は、こう賛美した。
「マイクロ・ソフトは、IT時代の最先端企業だ。みんなビル・ゲイツをめざそう。そうすればみんな金持ちになれる」
しかしそのメッキは、やがて剥げた。
そして近年では世間は、こう賛美した。
「 Google は、Web 2.0 時代の最先端企業だ。みんな Google をめざそう。そうすればみんな金持ちになれる」
しかしそのメッキは、だんだん剥げつつある。(ま、私は、前からそう言っていたんですけどね。)
《 注記 》
レトリックとしての皮肉が含まれています。字義通りに受け取ると誤解する箇所もあるので、常識で読み取ってください。(馬鹿正直に読まないで、頭を働かせてください、ということ。)
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