工場排水に含まれる金やプラチナなどの希少金属(レアメタル)を、微生物の「呼吸」を利用して回収する方法を、小西康裕・大阪府立大教授らが開発した。従来の方法より作業時間が短く、費用も少なくて済むという。企業にも共同研究を呼びかけ、実用化をめざす。
希少金属は、パソコンや携帯電話に不可欠だが、埋蔵量が少なく、価格が高騰している。
小西さんらは、海や川にすむシワネラ・オネイデンシスとシワネラ・アルジェという微生物のユニークな性質に着目した。これらの生物は呼吸の際、酸素の代わりに泥の中の鉄イオンを取り入れ、別の鉄イオンにして体外に出す性質をもつ。
この「鉄呼吸」をレアメタルの回収に活用できないか研究を進め、鉄の代わりにレアメタルのイオンを取り込み、体内で金属粒子に戻させることに成功した。200ppmの金イオンが溶けた水溶液の実験では、30分でほぼ全量の金を回収できた。同じ濃度の排水1トンならば、200グラムの金を回収できる計算だ。
金のほか、プラチナや、排ガス浄化用の触媒に使われるパラジウム、ロジウムの計4種類が回収できた。
排水からレアメタルを回収する手法はいくつかあるが、大半は、水溶液に電流を流して化学反応を起こさせるなど、煩雑な工程が必要だ。「鉄呼吸」を利用する方法では、レアメタルの濃度が低くても回収でき、時間も短く、作業も簡略化できるという。
金属工場の排水には、鉱石の精錬作業で取りきれなかったレアメタルが多く含まれている。
小西教授は「基礎技術はほぼ確立できた。排水の中で微生物が流出しない工夫を進め、実際に工場で利用できるようにしたい」と話す。(田之畑仁)