11月の朝雲ニュース

11/6日付

ニュース トップ

東北方の大型震災対処訓練
津波災害への対応重視
警察・消防と連携、救助活動

 
入り組んだ海岸に点在する被災地への人員・物資輸送に活躍したヘリ部隊(11月1日、岩手県・遠野総合運動公園で)



倒壊した木造校舎の中を捜索、被災者を次々と担架で校庭のトリアージ場所に搬送して消防の救急隊員に引き継ぐ陸自隊員(10月31日、宮城県南三陸町・旧清水小学校で)


訓練統裁部で災派部隊の行動を調整する企画統制部のブース。プロジェクターにはヘリ伝送映像や部隊の展開状況などが表示されている(10月31日、仙台駐屯地体育館で)


浮橋の架設現場には大量の車両を統制する「施設交通統制指揮所」が置かれた(11月1日、宮城県・北上川で)

 10月31、11月1日の2日間にわたって行われた陸自東北方面隊の震災対処訓練「みちのくALERT2008」では、宮城・岩手2県の主な訓練会場が報道陣に公開された。リアス式で知られる長く入り組んだ三陸海岸を持つ両県の沿岸各市町ではチリ地震津波(昭和35年)で多数の犠牲者が出た事例などを踏まえ、津波によるさまざまな被害状況が設定され、人命救助訓練が行われた。
 10月31日、岩手県釜石市の狭隘な海岸線内部の平田埋立地会場には大量の流木と押しつぶされた家屋の模型、実物の車両が持ち込まれ、9高特大(岩手)の44人が警察、消防と被災地域を分担して救助活動を展開。数名の生存者を発見・救助した後も、隊員たちは流木の山の中を慎重に探索、「誰かいませんか」と声をかけながら、残された被災者がいないか何度も確認していた。
 宮城県南三陸町の袖浜海岸では6戦大(大和)の30人が地元消防団、日本救助犬協会の救助チームと共同で津波被害を受けた流出家屋と砂浜に埋もれた被災者の捜索活動を行った。複数の班に分かれた隊員が流木の散乱する砂浜に横一列に並び、救助犬の反応を見ながら捜索用の棒を慎重に砂に差し入れ捜索を実施。突然、一班から「1名発見! 救急の方、確認お願いします」の声が上がり、消防の救急隊員らが駆け寄る。自衛官がシャベルで素早く掘り起こし、砂まみれの被災者を救出、担架で救急車に搬送した。班長が「まだ被災者がいるかもしれないから慎重にやれ」と声をかけ、捜索隊員たちが発見場所をさらに堀り広げていった。
 同町の高台にある旧清水小学校では、20普連(神町)の42人が倒壊した2階建て木造校舎内を1、2階の順に捜索。教室内で被災者を発見すると担架に乗せ、狭く暗い廊下を「担架通ります」と声を上げながら次々と運び出し、校庭に設けたトリアージ場所に移した。
 翌11月1日、快晴の宮城県・気仙沼港に海自の輸送艇2号(横須賀)が接岸。飲料水5トンを積んで陸路同港まで進出した9後支連(青森)の給水車2両を搭載し、沖合の大島・浦の浜漁港に給水支援に向かった。
 同県石巻市北上川の飯野橋上流では2施団(船岡)が架設した全長約220メートルと過去最大級の橋梁が公開された。主な使用器材は92式浮橋とボーク固定橋。施設教導隊(勝田)と協力して31日早朝の地震発生から約24時間で完成させた。橋の上では多数の地域住民が笑顔で往復、「対岸まで何歩あった」などと話し合っていた。
 今回の訓練には在日米陸軍司令官のフランシス・ワーシンスキー准将も訪れ、宗像東北方総監とともに各訓練会場を精力的に視察した。