【第17回】 2008年09月09日
いつも「笑顔」は逆効果。
むしろ「無表情」に徹する
ハルバースタット博士は、有名な15の雑誌に掲載されている広告の登場人物の写真を抜き出し、その広告人物について、どれくらいパワーを感じさせるのかを、多くの人に評定させてみた。
広告人物の表情は、あらかじめ3段階に分けられていて、「無表情」、「微笑」、「満面の笑顔」の3つの分類がなされていた。左図は、評定者たちが、それぞれの表情に対して、どれくらいパワーを感じたのかの得点を示したものである。
この実験から明らかなように、ニコニコ・ヘラヘラしていると、相手に舐められてしまうわけである。
たいていのビジネス書に書かれている「笑顔で人に接しよう」というアドバイスは、実際のところ、相手に舐められて、逆効果になってしまう場合があるのである。笑顔を見せていると、卑屈で、弱そうな人物だと思われてしまうかもしれないのだ。
カラスを飼いならすなら
下羽を切り落とせ
名将と呼ばれたハンニバルは、無数の人種がまざりあったきわめて大きな軍団を率いて、しかも異郷の地での戦いに連戦連勝であった。
彼の統率力は絶対的で、彼の軍団の中では、兵隊同士の諍いさかいとか、指揮官に対する反乱などは、一度ももちあがらなかった。なぜなのだろうか。それは、ハンニバル自身が、とても残酷で、怖い人間だったためである。
無敗を誇った中国の孫子にもやはり非情なところがあって、命令にそぐわない人間の首をはねることを厭わなかった。だからこそ、こういう将軍の下にいる兵士は、きちんと命令に従ったのである。
常識的なことかもしれないが、私たちは、怖い人間には、頭があがらない。実際に残酷になれとか、非人道的な振るまいをしろとアドバイスするつもりはないが、「何かやりそうだ」という雰囲気は、たえず匂わせておかないと、人はあなたの言うことを聞いてくれなくなるであろう。
韓非子には、カラスを飼いならすには、まず下羽を切ってしまえ、そうすればカラスは人間にエサをもらうしかなくなるので、どうしたって馴れないわけにはいかないのだ、という主張が書かれている。
怖い人間だと思われるには、相手の下羽を切るくらいの行動をとってもいいのだ。
最終回 | ホンネを聞き出すなら「ブサイク」なほうがいい (2008年09月29日) |
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内藤誼人
(心理学者)
慶応義塾大学社会学研究科博士課程修了。(有)アンギルド代表取締役。現在は、企業研修や講演等で、心理学の法則をもとにした人材育成や販売促進、企画力促進などに力を注いでいる。著書に『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『人は「暗示」で9割動く!』(すばる舎)、『パワーセルフ』(ダイヤモンド社)ほか多数。
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