受賞を古典芸能の襲名に例えた。「受け継いだ名前を小さくしないよう、責任を感じています」
幸田露伴や川端康成、吉行淳之介などの「文豪」が名を連ねる、純文学のビッグタイトルを手にした。「重要な賞を受けたからといって、自分のスタイルを固まらせないで書き続けたいと思います」と改めて決意を語った。
97年、デビュー作「くっすん大黒」で野間文芸新人賞。以来、00年に芥川賞、05年に谷崎潤一郎賞を受賞するなど、わずか10年余りの間に文学の世界で圧倒的な存在感を得た。「足元が見えない暗闇の中を手探りで歩いているような10年でした」と振り返る。
受賞作は、刀を大権現に奉納する旅に出た主人公が、不可思議な「贋(にせ)の世界」にはまりこんでしまう物語。単行本で約600ページ。執筆に7年を費やした大作となった。
入り乱れる虚構と現実、本当とニセ……。「本当だと思っていることに根拠がなかったり、本当のことを言われると逆に怒ったり、常に何かが反転しているところが人間にはある。そこを書きたいと思った」
パンクロック歌手や俳優、詩人、小説家と幅広い顔を持つ。受賞作のタイトル「宿屋めぐり」になぞらえて自分のことを言い表してほしい、との質問に、少し考えて「居酒屋めぐり」と答え、笑いを誘った。【棚部秀行】
【略歴】町田康(まちだ・こう)さん 大阪府出身。81年、パンクバンドのボーカリストとしてデビュー。最近は作家活動を中心にする。46歳。
毎日新聞 2008年11月9日 0時09分
| 11月9日 | 町田康さん=「宿屋めぐり」で第61回野間文芸賞を受賞 |
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