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社説:トヨタショック 金融危機の直撃を受けた

 金融危機が拡大し実体経済にも深刻な影響が及んできた。企業業績が急速に悪化している。それを象徴しているのがトヨタ自動車の業績予想の大幅な下方修正だ。09年3月期の連結営業利益が、前期比で7割余りも減り6000億円にとどまる。トヨタショックの波紋が広がっている。

 急激な需要の落ち込みが、経営を直撃した格好だ。鉄鋼など原材料の高騰によるコスト上昇は、資源価格の急落を反映し、緩和に向かうとみられる。

 しかし、実体経済の悪化は、今後さらに深刻化し、自動車の販売も落ち込んでいくことになるだろう。

 販売台数で米国のゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて、世界最大の自動車会社となったトヨタだが、7割という大幅な減益は、世界経済の危機的状況を投影している。

 業績の急激な悪化を受けて、トヨタを含め自動車各社は国内での減産を余儀なくされている。これに伴い期間工などの削減を実施するという。自動車産業は部品メーカーや下請けなども含め、すそ野が広い。

 主力産業の自動車の減産が与える影響は大きい。雇用の確保・安定化は社会的責任でもある。最大限の努力をしてもらいたい。

 一方、GMなど米国の自動車会社は、経営が危機的状況に陥っている。GMとフォードの7~9月期はともに大幅な赤字だった。

 GMは「足元の資金繰りを確保することに専念する必要がある」として、クライスラーとの合併協議を中断したことを明らかにした。また、「来年前半については、政府からの緊急支援がなければ資金が枯渇する」と窮状を訴えている。

 こうした米国の自動車産業の厳しい状況は、金融危機の直撃を受け、米国での自動車販売が極度の不振に陥ってしまったからだ。その北米市場を最大の収益源としていたトヨタも、あおりを食った格好だ。

 米国経済の過剰消費体質はかねて指摘されてきたところだ。北米市場への利益の過度な依存を改め、日本の国内市場も含め、バランスのとれた形で世界から収益をあげられる仕組みを構築してもらいたい。

 トヨタに限らず、輸出産業は急激な円高も加わって経営環境が急速に悪化している。円安バブルとも呼ばれた状態が続いていたが、一気にはじけてしまった。

 金融危機という外的要因によるものとはいえ、円安バブルは、長期にわたる超低金利政策の結果で、このところの急激な円高は、そのツケという面も否定できない。行き過ぎには反動が生じるということを改めて指摘しておきたい。

 自動車各社は厳しい状況にあるが、低燃費車の開発など、次を見据えた研究開発にこれまで以上に力を注ぎ、新たな地平を切り開いてもらいたい。

毎日新聞 2008年11月9日 東京朝刊

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