国内電機メーカー同士の初の大型再編が動き始めた。パナソニックと三洋電機は、パナソニックが三洋電機を子会社化することを正式に発表した。両社は資本・業務提携に関する協議を始める。子会社化が実現すれば連結売上高十一兆円を超える国内最大、世界では米ゼネラル・エレクトリック(GE)に続く第二位の電機メーカー連合が誕生する。
電機業界は、韓国や台湾、中国メーカーの台頭で世界規模の競争が激化している。一方で、国内市場は少子高齢化で縮小しており、総合電機メーカーの生き残りをかけ、事業レベルでは提携が進んでいた。
その中で売上高十兆円を目標に掲げるパナソニックは海外市場でのグローバルな展開が不可欠として基盤固めを進めてきた。十月一日に松下電器産業から社名を変更し、ナショナルなどのブランドもパナソニックに統一したことは、海外での事業拡大に向けた強い意志の表れといえよう。
三洋電機は二〇〇四年の新潟県中越地震で半導体工場が被災したあたりから経営不振が表面化した。経営再建を進め、得意とするリチウムイオン電池事業や太陽電池事業に人と金を集中することで最悪期は脱したものの、半導体や冷蔵庫、洗濯機といった白物家電などの不採算事業を抱えている。また、大株主の三井住友銀行など金融三社が、三洋の優先株を自由に処分できるようになる期日が来年三月に迫っていた。
パナソニックは今後、金融三社と優先株の買い取り交渉を進める。子会社化することで、リチウムイオン電池などの充電池事業で圧倒的な世界シェア確保を目指すことができる。三洋はパナソニックの販売網を活用した事業拡大やコスト削減を進める。両社の思惑がうまくかみ合うとともに、最近の世界的な株価急落や円高進行も交渉に拍車をかけたようだ。
リチウムイオン電池は、ハイブリッド車をはじめ次世代の環境対応車開発の鍵を握るといわれ、今後の技術開発が期待される。得意分野を生かし、一層の飛躍につなげたい。半面、これまで両社が競合してきた家電製品などの部門は、今後の協議でどう整理していくか、課題も少なくない。
国内の家電業界は企業数が多いとされる。厳しい国際競争を勝ち抜くためには、一段の経営基盤の強化が必要だ。今回の再編の動きは、各企業に戦略転換を促すとともに、さらなる再編への弾みにもなりそうだ。世界市場を視野に、国際競争力のアップにつなげてもらいたい。
政府は「二〇〇八年版自殺対策白書」をまとめた。年間の自殺者が十年連続で三万人を超えたことに危機感を示し、対策として「心の健康づくり」の重要性を指摘している。
具体的には、うつ病などに関する精神科医療の充実や職場でのメンタルヘルス強化などを挙げた。従来から必要性が指摘されていることである。社会全体で危機意識を共有して、さらに本腰を入れて対応を強めていきたい。
自殺対策白書は昨年に続き二回目となる。昨年の自殺者は前年に比べ2・9%増の三万三千九十三人で、〇三年に次いで過去二番目に多かった。自殺の原因は健康問題が63・3%と最多だった。以下、経済・生活、家庭、勤務の問題が目立った。
それぞれの理由が複雑に絡み合うケースもあるだろうが、とにかく悩みを抱えた人が孤立せず、誰かに相談できるような環境を整えることが欠かせない。
これまで自殺予防対策の取り組みは遅れていた。自殺は個人的な問題であり、他人が関与しにくいテーマという考えが社会に根強かったからだ。
だが、昨年六月に自殺対策基本法に基づき国が策定した自殺総合対策大綱は、一見個人の問題と思われる要因も専門家への相談やうつ病の治療など社会的支援を差し伸べることで防止が可能とした。
これを受けて官民の関係機関などで本格的な対策が取られ始めたが、まだ緒に就いたばかりといえる。政府は最近開いた自殺総合対策会議で、市町村に対し自殺問題の担当部局の設置を働き掛けるといった対策加速化プランを決めた。会社や地域、学校など各分野で現在の対策の問題点や課題を整理し、行政と協力して実効性の高い取り組みにしていく必要がある。
(2008年11月8日掲載)