3日、記者会見する田母神俊雄・前航空幕僚長=東京都中央区、越田省吾撮影
頭を抱えたのは防衛省だった。官房長への文書での届け出なしに論文を発表したことは防衛省の内規違反に問われるが、空自トップによる政府見解を否定する言動が「懲戒免職」に相当するかは前例がない。ある政府高官は「(減給より軽い)戒告が精いっぱいでは」と見ていた。
田母神氏は辞表提出を求めた防衛省側に「論文内容は誤っていない」と主張。懲戒手続きに入った場合は争う構えを示したことも混乱に拍車をかけた。処分内容の妥当性を問う審理手続きに入ると、決着がつくまで通常10カ月以上かかるためだ。
航空幕僚長(定年62歳)を解任された田母神氏は空将の定年(60歳)に達していた。一方、自衛隊法では大臣判断で60歳6カ月までの延長が可能で、延長すれば田母神氏は来年1月まで在任できる。
田母神氏が徹底抗戦し、審理が終わらないうちに定年を迎えると、結局は退職金が支給される――。浜田氏は11月3日、田母神氏の定年延長を解除する形で退職させた。
6日の参院外交防衛委員会。浜田氏は懲戒処分に踏み切った場合、「退職金と(定年までの)月々の給料が支払われる」と説明。6千万円程度とみられる退職金については「自主返納は本人の判断を待ちたい」と述べ、自主返納がない限り田母神氏に支払われるとの見通しを示した。(山田明宏)