日本の侵略を否定する論文を発表して更迭された防衛省の田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長(60)=3日付で定年退職=が04年に航空自衛隊の隊内誌で、防衛論や歴史観の持論を展開したうえで一般雑誌への投稿を呼びかける文章を書いていたことがわかった。自らの考え方に広い賛同を求めようとしていたとみられる。
田母神氏は、今回投稿して問題となったアパグループ主催の懸賞論文も隊員らに「紹介した」と話している。懸賞には空自自衛官78人が応募しており、防衛省は同氏の影響の有無を調べている。
文章は、空自幹部らが購読している「鵬友(ほうゆう)」の04年7月号に掲載された。当時は、幹部自衛官を教える統合幕僚学校の校長だった。
その中で「これまで我が国では反日的言論の自由は無限に保障されていたが、親日的な言論の自由は極めて限定されていたような気がする」「(南京大虐殺が)無かったことが真実であることは今では十分すぎるほど分かっている。その意味で我が国にもようやく本当の民主主義の時代がやって来たと言えるのではないか」と主張していた。
その上で「すぐにでもできるのは月刊誌に論文を投稿することだと思っている」とし、具体的な雑誌名を挙げ、「雑誌に載るということは、かなり多くの国民の目に触れるということだ」と書いた。
田母神氏は懸賞論文への応募で退職が決まった今月3日の記者会見では、自衛官を応募に誘ったかどうかを問われ、「『こんなのがあるよ』と紹介はしたが、強制はしてない」と語っている。(川端俊一、樫本淳)