魔物図鑑



「ブラッディウルフ(人狼)」



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     視界は土煙によって遮られる。

     テリアの意識が次第にはっきりとしてくる。


     「げほっ・・・ごほっ・・・」

     (何だ・・・一体何が・・・)


     荷物は崩れゾーリは横転して車輪が外れ、転がっている。

     ワラジは手綱を引きちぎり遠くへと逃げていく


     (!! ハチ!・・・・ハチは!?)


     テリアはよろよろと立ち上がり辺りを見回す。ハチの姿は見当たらない。

     後ろを振り向こうとしたハチの背中に何か太いパイプのようなものが突きつけられる。

     背後から太い男の声がする。


     「おっと、そこまでだ。両手を挙げてゆっくりこっちを向きな。」


     テリアはぞくりと背筋を震わせる。言われた通り両手を挙げゆっくりと振り返る。


     「テリア・ニッパーだな? 俺の名前は・・・って別に名乗るほどほどのもんでもねえな。」


     目の前の髭の濃い少々太った男は先ほどワラジを撃ったであろう銃のような

     小型の太い筒状の武器をテリアにつきつける。

     テリアが動揺し無言でいると髭面の男はドスの利いた声で不満そうにする。


     「テメエがテリアでいいんだよな? 何とか言えやコラぁ・・・」


     銃をテリアの顎に突き付ける。テリアは震える声で答える。


     「あ・・ああ・・・そうだ。い・・一体あんたは何者だ?」


     「ただのしがない野盗さ。」


     その言葉にテリアは思い出す。

     最近頻発している積荷を狙った盗賊集団による追い剥ぎ事件を。


     「つ・・・積荷が目的か? な・・・なら持って行け。俺達は抵抗しない。」


     その言葉に髭面の男はゴリッと銃を強く突きつける。


     「俺達だあ? 何だ・・・テメエ・・・仲間がいやがるのか!?」


     テリアは敵意はないと伝えたかったのだが逆に野盗に不審感を与えてしまう。

     慌てて言葉を修正する。


     「ち・・・違う!! 俺と同い年くらいの女の子だ・・・」


     その言葉を聞いて髭面の男は分かりやすい淫靡な笑みを浮かべる。

     「ほう・・・女か・・・。まあそっちはいいとして、残念だが俺達の目的は

     そんなチンケな積荷じゃねえ。用があるのはテメエ自身だ。」


     「!!」


     テリアは一瞬で理解する。


     「お・・俺を人質にでもするつもりか・・・!?」


     髭面の男が答える


     「さあな。ただ俺達もいつまでもこんな安っぽい仕事はそろそろ終わりにしてえんだわ。

     察しの良いテメエなら分かるよな・・・?」


     二人が会話していると崩れた荷の後ろ側から数人の声が聞こえてくる。


     「お頭ァ!! そいつの言うとおり女がいましたぜ!! 」


     「へへ・・・! 結構良い女ですぜ! どうします!?」


     テリアがぴくりと反応する。


     「ハチ!? ま・・・待ってくれ!! その娘は関係ない」


     銃が今にも走り出しそうなテリアを制する


     「ウルセエ。テメエは黙ってろ。」


     二人の手下らしき男がハチを連れて姿を現す。

     ハチはぐったりと力なく瞳を閉じ、半ば二人の男に無理やり立たされているように連れてこられる。


     「ハチ!!しっかりしろ!! お・・・お前ら!! ハチに何をした!?」


     髭面の男が喚くテリアの腹に一発重たい拳を叩き込む。

     テリアは全身の力が抜け、地面に両膝をつき殴られた腹を押さえ嗚咽する。


     「!? げほっ!! がはっ・・・!! ハ・・・ハチ・・・!」


     野盗の頭はハチの眉間に銃を突き付けドスの利いた声で怒声を浴びせる。


     「ぎゃあぎゃあウルセエっつってんだよ。何勘違いしてんだ?


     俺達はまだ何もしてねえ。あんまり騒ぐとそのどてっぱらに風穴が開くぜ?」

     テリアは足が震える。自分が置かれた今の状況も十分に恐怖したがそれよりも

     ハチが死んでしまったのではないかと気が気ではない。


     「お頭!! そいつはまずい! そいつ殺したら人質として身代金を要求できなくなっちまう!!」


     手下の一人が慌てて喋る。

     頭は眉間に皺を寄せうんざりした顔をすると答える。


     「脅しだ馬鹿野郎!! いらねえことをベラベラ喋ってんじゃねえ!!」


     これでは何のために目的を隠していたのか分からない。

     無能な部下を持つと上司は苦労するというのはどこの世界でも同じようだ。

     野盗の頭はそう言うと仕切りなおして手下に尋ねる。


     「で、その女。生きてんのか?」


     手下の一人がいやらしい表情でハチの胸に顔をうずめるようにして耳を当てる。

     テリアは言い知れぬ殺意が沸いてくるがどうすることもできない。

     手下の一人が伝える。


     「へーい! 息はあるみたいですぜ。どうやら気絶してるみたいでさ!!」


     その言葉を聞くとテリアはほっと安堵する。

     だが次の瞬間テリアのそんな思いは脆くも崩れ去る。


     「そうか。ならそいつは犯っちまおう。」


     テリアの脳天を衝撃が駆け巡る。


     「ま・・待て!! 待ってくれ!! 頼む!! その娘は関係ないんだ!!

     頼むから見逃してやってくれ! お願いだ・・・!!」


     テリアは地面に頭を擦り付けるようにして懇願する。

     突然の動きに野盗の頭は動揺し手下達は皆不思議そうな表情をしていたが

     すぐに気を取り直した頭が見下すようにテリアに話しかける。


     「おい・・・テメエ。」


     テリアはずっと頭を地面に伏せている。

     野盗の頭がそんなテリアの頭を足で踏みつける。


     「ぐあっ・・・!?」


     「ウゼエんだよテメエは。何で俺達がテメエの言うことをいちいち聞かなきゃなんねえんだ? あ?

     自分の立場分かってんのか?」


     ぐりぐりと容赦なくテリアを踏みつける。

     テリアはそれでもお願いしますと言い続ける。


     「チッ。もういい。おいお前ら!! その女犯っちまっていいぞ!」


     手下はその言葉を待ってましたとばかりに感嘆の声をあげる。


     「ええ!? ほんとですかい!?」


     「ひゃっほう!! 女だ女ァ!! 早く剥いちまおうぜ!! お・・・おりゃあもうビンビンだ!!」


     情欲剥き出しの野盗の手下は気絶したハチの衣服を乱暴に破く。

     ハチの衣服は鬼畜達によってボロボロに引き裂かれ無垢な白い肌が露になる。

     テリアは悔しさで胸が引き裂かれそうになる。


     (くそっ・・・!! ハチ・・・!! 何で・・・こんな・・・畜生・・・畜生・・・!!)


     テリアの頬を熱いものが伝っていく。

     野盗の頭は銃を突き付けテリアを踏みつけたまま手下の動向を伺っている。


     「あんまり派手に犯るんじゃねえぞ!! 特にその女の処女は俺のモンだ!

     お前等の汚ねえチン○ぶち込んで射精しやがったら

     承知しねえぞ!! 犯るなら口かケツにしとけ!!」


     テリアにとって大事なハチがまるで物のように扱われる。


     (畜生・・・こんな奴等に俺のハチが・・・くそ・・・誰か・・・頼む・・・・誰か助けてくれ・・・!!)


     「さてと・・・ん? 何だ? テメエ・・・泣いてんのか? チッ・・・情けねえ。

     そんなに大事な女ならもう少し抵抗しろよ、オラ。どうした? 怖くて立てねえか?

     もっとも立てたところでテメエの体のどこかに風穴が開くだけだがな! はははははは!!」


     まさに外道。

     そんな外道達にいいようにされて

     テリアは自分の不甲斐無さに打ちひしがれる。

     そんなテリアの心情に同調したかのように雲行きが怪しくなってくる。

     先ほどまで晴れ渡った夕暮れの空を、黒い雲が覆い尽くし灰色の世界が出来上がる。

     野盗のお頭も不思議そうに空を見渡す。

     周囲は濃い霧に包まれ始め見通しが悪くなっていく。


     「どういうこった・・・こいつは・・・。チッ・・・こりゃあ一雨きそうだな。

     おいお前等! ここは一旦引き上げるぞ! その女も連れて行け!

     もし騒ぐようなら口を・・・塞いで・・?・・・・・・何だ?」


     突然野盗達が静かになる。

     皆視線が一点に集中する。

     テリアは何が起こっているのか把握できない。ただ、野盗達は何かに動揺している。


     「何だテメエ・・・ギルドの回し者か・・・?」


     どうやら誰かと会話しているらしい。何者かがこちらに向かって近づいてくる気配がする。

     野盗が声を掛けた正体の分からない者は何も答えを返さずこちらに異様な威圧を放ち近づいてくる。


     「おっと! そこまでだ・・・。こいつが何だか分かるよな? それ以上近づいたらこいつの命は・・・」


     野盗のお頭が言い切る前に一陣の風がテリアの真上を通過する。

     途端、テリアを踏みつけていた野盗の頭の足がふわりと宙に浮く。

     銃が音を立て地面に落とされる。次に重たいドスンという鈍い音が聞こえる。

     テリアはゆっくりと顔を上げる。

     目の前には横たわった野盗の頭。それを見てテリアは初めて野盗のお頭が転倒したことを理解した。

     手下が慌てふためいて喋る。


     「お・・・お頭ァァァアァ!? くそう・・・! テメエ・・・一体何者だ!?」


     「よくもお頭を・・・! 許さねえ・・・!!」


     テリアは手下の喋り掛けている相手に視線を移す。

     華奢な体つきの髪の短い黒髪の女性らしき人物が立ち尽くしている。

     と、言うことはこの完全にのびている野盗のお頭もこの女性の仕業だろうか?

     どう見ても丸腰のこんな細身の女性がどうやってあんな髭面の大男を倒したというのだろうか。

     とても想像できない。謎の女性は深みのある篭った声で呟くように喋る。


     「お前達に用は無い・・・。そこの人間を連れて去れ・・・。」


     その言葉に手下達は頭に血が上り逆上する。


     「テメエ・・・ふざけんな!!」


     「テメエも犯してやる!!」


     手下達が鋭利なナイフを取り出し女性に切りかかる。

     テリアが女性に向けて叫ぶ。


     「あっ・・・危ない!!」


     謎の女性は不適な笑みをこぼす。

     ふいにテリアの視界から突如として女性の姿が掻き消える。

     その時、先ほど感じた一陣の風が野盗達の間を縫うようにして駆け巡る。

     そう思った次の瞬間には女性は野盗達の背後に佇んでいた。

     そして野盗達がばたばたと崩れるようにして地面へと倒れていく。

     何が起こったのかさっぱり理解できない。

     気がつくと野盗達は打ちのめされ、皆倒れ伏していた。

     テリアはゆっくりと立ち上がる。謎の女性は無言で地面に横たわる気絶したハチの前に立つ。

     これは天の救いだろうか。先ほど野盗の頭が「ギルドの回し者か」と尋ねていた。

     もしかするとこの人はギルドから派遣された賞金稼ぎの方なのかもしれない。

     ちょうど現場に差し掛かり自分達を助けてくれたのだろうとテリアは思った。

     祈りは通じたのだ。誰だかは分からないがともかく礼を言わなければ。

     テリアはよろよろと謎の女性に声を掛ける。


     「あ・・・あの・・・すみません・・・」


     謎の女性は無言でハチの前に腰を下ろし何事か思案しているようだ。

     テリアの声は届いていない。テリアは再度、大声で話しかける。


     「すみません!」


     少し間を置いてから謎の女性は答える。


     「・・・そいつ等の命までは取らない。お前にも用は無い・・・。去れ・・・。」


     ぶっきらぼうな物言いにテリアは少々ムッとする。


     「去れ・・・って・・・。ちょっとあんた・・・!助けて貰っておいて何だけれど俺はこいつ等とは無関係だ。

     その娘を連れて町に戻るところをこいつ等に襲われたんだ。

     もうあんたの用事は済んだんだろ?俺達を帰してくれよ!」


     謎の女性が立ち上がりテリアに向き直る。

     その表情はまるで虫けらでも見ているような冷たい氷のような眼差しだった。


     「五月蝿いなお前・・・」


     テリアは妙に威圧感のある謎の女性に怯む。何故か謎の女性はひどくイライラしているようだった。

     威圧されたテリアはなるべく機嫌を損ねないように


     「なっ・・・。わ・・分かった・・・。俺からも報酬を支払う・・・。だからもう俺達を町まで帰してくれ・・・。」


     その言葉に謎の女性は表情を変えず答える。


     「・・・報酬などいらない・・・代わりにこの娘を頂いていく・・・。

     それでお前は自由だ・・・。どこへなりとも去れ・・・。」


     理不尽な答えにテリアは困惑する。折角助かったと思ったのにまた変なのが沸いて出た。

     とかくこの世は狂気に満ちている。次から次へと物事はおかしな方向へと進んでいく。

     テリアはそう感じた。

     あと少しで町に帰れるところだったのに。

     いきなり運命の歯車が狂ったかのように世界は歪み、テリアは次第に狂気の渦へと飲み込まれていく。



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