冷え込む景気の影響で財布のひもは締まりがち。そこに「食不信」の連鎖が続く。そうしたなかでも売れ行きを伸ばしている食材がある。レトルト食品やふりかけ、茶漬けなどご飯関連の商品だ。背景には「外食」から「内食」への回帰もあるようだ。【遠藤拓】
主婦や親子連れが行き交うイトーヨーカドー新浦安店(千葉県浦安市)。食品売り場の一角に、コメとご飯関連の商品を並べた特設のコーナーがある。
「コメに引っ張られる形で、ご飯関連の商品が伸びています。顕著なのはふりかけやレトルトカレーなど。コメと合わせ、食品全体に占める存在感も増しました」と佐々木毅副店長(40)。
メーカー各社もホクホク。即席カレー最大手のハウス食品(東京都千代田区)は4~9月、レトルトの「※(カリー)屋カレー」の売り上げが数量ベースで前年同期比20%以上、レトルトカレー全体でも10%強伸びているという。
「ご飯中心の食事のなかでカレーはそれだけで完結するメニュー。『内食』や手作り志向もあったのだろう」(広報・IR室)
複数の食品関係者によると、数年前から、レストランなどで食事をする「外食」から、自宅で食事を楽しむ「内食」への回帰が始まっているという。ただ、景気の減速が原因なのか、家族の“復興”、それとも、一人で食事をする「孤食」現象の深化が要因なのかは、はっきりしないという。
ふりかけ最大手、丸美屋食品工業(東京都杉並区)は、ふりかけ関連の商品全体が1~9月で前年同期比約10%の伸び。「混ぜ込みわかめ」シリーズやレトルトの丼ものの具は20%超の増となったという。「中国製ギョーザの中毒事件も影響しているでしょう。こんなに伸びたのは初めてで驚いている」と横山茂・広報宣伝室長は言う。
永谷園(東京都港区)も4~9月、茶漬け商品の売り上げが前年同期比約10%増。主力商品の「お茶づけ海苔」は約20%増だった。
副食ブームを支えているのは「内食」への回帰だけでない。価格面でのコメの優位性も指摘されている。
小麦価格は世界的に高騰し、農林水産省は10月、国内の製粉会社に対する輸入物(主要5銘柄)の売り渡し価格を10%引き上げ、1トン当たり平均7万6030円とした。半年ごとに改定し、これで引き上げは4期連続だ。
一方、財団法人コメ価格センターによると、07年産米の全銘柄平均価格は60キロ当たり1万5075円で、06年産から656円下がった。「パンやめん類よりもコメに割安感が生じ、ご飯関連の商品の売り上げが伸びた」(食品メーカー)。
日本の食料自給率は07年度、カロリーベースで、前年度の39%から1ポイント上昇し、2年ぶりに40%を回復した。コメの消費拡大はこの要因の一つと受け止められている。
ただ、ご飯関連の商品には、懸念の声もある。名古屋学芸大大学院の足立己幸教授(食生態学)は言う。
「手軽に使える一方で味も栄養分も偏りが大きく、孤食を助長する面も心配だ。特に子供のいる家庭では、ご飯関連の商品を使った食事は1日1食が限度。他の1食は普通のご飯と主菜、副菜が組み合わさった食事にした方がいいでしょう」
※口編に「加」と「啀」の圭が里
毎日新聞 2008年11月8日 10時59分(最終更新 11月8日 12時57分)