[ 目録 ]
インフルエンザワクチンについて

 インフルエンザは5〜14歳の罹患率が最も高く、秋から春先にかけて毎年流行します。インフルエンザは、潜伏期が非常に短く1〜2日で発病し、典型的な症状として、突然の発熱、悪寒があります。鼻汁、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛みなどの普通のかぜでもみられる症状のほかに、関節痛、筋肉痛なども加わります。肺炎、気管支炎のほか、脳炎、ライ症候群、心筋炎、中耳炎などの合併症や生命の危険もはらむ決して軽い病気ではありません。とくに幼児がインフルエンザにかかると、ごくまれに脳炎・脳症を併発して死亡するといった問題も指摘されています。
 これを予防するためには、インフルエンザワクチンを接種して血液中の抗体価を高めておくことが必要です。ワクチンによってインフルエンザにかかるのを防止でき、たとえかかっても発熱などの症状が抑えられ、合併症や死亡する危険から守るのです。
 現在、インフルエンザウイルスは、Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)、B型の3種類が同時に、あるいは混在して、毎年少しずつそれぞれが変異しながら流行を続けています。このため、ワクチンもそのシーズンに流行すると予想されるウイルス株に応じて造られています。

◆2000〜2001年にかけてのインフルエンザワクチンの製造株◆
 A型株:A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)(IVR-116) HA含有量:30μg/1ml
     A/パナマ/2007/99(H3N2)(NIB-41) HA含有量:30μg/1ml
 B型株:B/山梨/166/98 HA:30μg/1ml

※HA(ヘムアグルチニン)抗原含有量:ワクチン0.5ml中に各株のHA蛋白を15μgずつ含有する。
従来CCA表示によってワクチン含量を表示してきましたが、2000年よりSRD法が導入されるため、含量の設定は行わないこととなりました。
 CCA:ニワトリの血球を凝集する抗原量のこと
※NA(ノイラミザーゼ)

 化血研・藤沢のインフルエンザHAワクチンは、1999年10月よりゼラチンを除去しました。現在の添加物は、チメロサール0.001W/V%(0.01mg/ml)、ホルマリン0.01W/V%以下(ホルムアルデヒド換算)です。

インフルエンザワクチンって効果はあるの?

 インフルエンザワクチンを接種しても、絶対にインフルエンザにかからないというわけにはいきません。効果は80%程度と考えてください。これは実際の流行株が必ずしもワクチンの株と完全一致するわけではないこと、接種を受けた全員が感染を防ぐ抗体価まであがるとは限らないこと、ワクチンによってできる抗体では実際にウイルスが感染する上気道での防護には有効でないことが理由だと考えられています。インフルエンザワクチンは、ウイルスの感染を防ぐのではなく、重症化を防ぐと考えた方がよいでしょう。
 しかし、世界的には、インフルエンザワクチンは一定の効果があるとされています。信頼すべき疫学研究によると、65歳未満の健常者では、ワクチン接種すると発病は70%減少します。65歳以上の方の場合は、発病は30〜40%しか減少しませんが、肺炎その他により入院するほど重症化することは、70%減少するとされています。また、老人施設などの入所者については、肺炎その他が原因での入院は50〜60%、死亡は80%減少するという結果がなされています。
 ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがありますが、インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。生ワクチンは毒力を弱めたウイルスを接種する方法で、できる免疫は強くなりますが副作用の頻度が多めになります。不活化ワクチンは生きたウイルスではないので副作用の頻度は減りますが、免疫ができる効果は弱くなります。そのため、昨シーズン前にうった注射の効果は今シーズンには残っていません。これも毎年ワクチン接種をおこなわなければならない理由の一つです。よって、インフルエンザワクチンは毎年シーズン前に接種しなければなりません。

どのように接種するの?


 インフルエンザの流行期は、通常12月〜翌3月頃です。インフルエンザワクチンは、接種後2週間で効き始め、およそ5ヶ月ほど免疫が持続するといわれています。一般的には、インフルエンザの流行のピークは年を越した2月前後にずれることが多いので、接種の時期としては、毎年11月頃がいいでしょう。

 インフルエンザワクチンは0.5mlを皮下に、1回またはおよそ1〜4週間の間隔をおいて2回注射します。

 ※平成12年4月に中央薬事審議会において最近の研究成果を踏まえ、接種回数の見直しにつき審議が行われ、その結果に基づき平成12年7月に薬事法上の用法・用量が変更されて、1回で十分になりました。2回注射する場合の間隔は、4週間が抗体産生やその持続もよいために最適です。

 ただし、6歳から13歳未満のものには0.3ml、1歳から6歳未満のものには0.2ml、1歳未満のものには0.1mlずつ2回注射します。
 副反応をなるべく少なくするために、体の少ない幼小児には1回の接種量を少なくしますが、免疫反応が十分でないと目的が達せられないので、2回に分けて免疫反応をよくしようということになったものと聞いています。
 1歳になると免疫機構も相当成熟し、ワクチン効果も高くなります。1歳児はインフルエンザで最もひきつけを起こしやすいので、1歳児が冬を迎える前に2回ワクチンを接種しておくのがよいでしょう。

他のワクチン製剤との接種間隔について
 生ワクチンの接種を受けた場合は、通常4週間以上、また他の不活化ワクチンの接種を受けた場合は、通常1週間以上経過した後にインフルエンザワクチンを接種します。

インフルエンザワクチンの副作用は?


 副作用としては、注射した部位が腫れて痛みがあること、時に発熱、悪寒、頭痛、倦怠感などがみられますが、これは通常2〜3日中に消失するようです。非常にまれに急性散在性脳脊髄炎(過去9例の報告)があります。他のワクチンと比べると副作用は少ないのですが、ワクチン接種をした方がいいかどうかは慎重に考えて決めるべきです。
 卵アレルギーやゼラチンアレルギーがある方は、医師に相談してください。インフルエンザウイルスの増殖には孵化鶏卵を用いるので、わずかながら卵由来の成分が残存して、これによる卵アレルギーの副作用がごくまれに起こり得ます。近年は高純度に精製されているのでほとんど問題となりませんが重篤な卵アレルギーがある場合、例えば鶏卵を食べるとひどい蕁麻疹や発疹を生じたり口腔内がしびれる人に対しては、接種を避けるか、注意して接種する必要があります。
また、これまで予防接種で副作用があった方も、医師への相談が必要です。万一、副作用が出た場合の補償は通常の医薬品と同様に医薬品副作用被害救済制度が適応されます。

どういう人がインフルエンザワクチン接種をすべきなの?

次の方々が考えられています。

 A.特別接種計画の対象グループ
  1. 合併症を起こしやすいハイリスクグループ
    • 65歳以上の者
    • 老人施設入所者、慢性疾患療養施設入所者
    • 呼吸器系、循環器系の慢性疾患を有する者(気管支喘息の小児を含む)
    • 慢性代謝性疾患(糖尿病を含む)、腎機能異常などで過去1年間に追跡検査や入院を要したもの。
    • 長期のアスピリン投与を受けている6カ月〜18歳の者
  2. ハイリスク者にインフルエンザを伝播する者
    • 医療施設の医師、看護婦、およびその他の医療従事者
    • 老人施設や慢性疾患療養施設の従業員
    • ハイリスク者の在宅看(介)護に従事するもの
    • ハイリスク者の同居家族(子どもを含む)
B.その他
  1. 一般人:接種希望者、地域にとって必須な活動に従事する者、学生、共同生活をしている者(寮など)
  2. 妊婦 :特にハイリスクの妊婦、およびインフルエンザシーズンに妊娠3ヵ月をむかえる妊婦

  3.  ※妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対してインフルエンザワクチン接種をしたという調査成績はまだ十分なものは集積されていません。
      しかし、インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンであり、胎児に影響を与えるとは考えられていないので、妊婦は接種不適当者には含まれません。
  4. HIV感染者
  5. 海外への旅行者


どこでインフルエンザの予防接種を受けられるの?


 多くの病院でインフルエンザの予防接種を実施していますが、予約制の場合もありますので、電話でまず聞いてみてください。
 現在インフルエンザの予防接種は保険が利きませんので、実費扱いで、1回5000円程度かかります。


予防接種を受けた後の注意は?


(1)インフルエンザワクチンを受けた後30分間は、病院にいるなどして様子を観察し医師とすぐに連絡をとれるようにしておきましょう。
(2)インフルエンザワクチン接種後、24時間は副反応の出現に注意しましょう。
(3)入浴は差し支えありませんが、注意した部位をこすることはやめましょう。
(4)接種当日は接種部位を清潔に保ち、いつも通りの生活をしましょう。また、はげしい運動はさけましょう。
(5)万一、高熱やけいれん等の異常な症状が出た場合は、速やかに医師の診察を受けて下さい。

2000/11/2