日ごろは閑静な学問の府に模擬店が立ち並ぶ、にぎにぎしい大学祭の季節を迎えた。近年は未成年者の飲酒や泥酔によるトラブルを防ぐため、期間中の禁酒を通達する大学が増えている。福岡県内でも福岡大や久留米大などに続き、豪快さとバンカラを旨としてきた九州大もついに今年、全面禁酒に踏み切ることになった。 (社会部・仲山美葵)
●時間限定販売案実らず
来春のキャンパス移転に伴い、六本松地区(中央区)における九大祭は今年が最後(21‐23日)。準備が進む先月下旬、学生と教員の代表が本館に集結した。大学側が九大祭の禁酒を打ち出し、学生から反対意見が噴出したことを受けた「禁酒討論会」と「禁酒禁煙会議」だった。
九大祭は例年、六本松グラウンドに部活動やゼミナールが出す焼き鳥、おでん、お好み焼き屋などが軒を並べ、料理とともに酒も供されてきた。「ほろ酔いで、友と、卒業した先輩と語り合うのが楽しみだし、九大の伝統だったのに」とある男子学生はいう。
一方で、一昨年の九大祭では急性アルコール中毒になり救急車で運ばれた学生がいた。ふだん六本松地区に通う学生は1、2年生が中心で未成年者も少なくない。
こうした賛否が交錯して、討論会・会議はけんけんごうごうとなった。九大祭実行委員会がまとめた議事録によると‐。
飲酒派の主張「テンションが上がり楽しさが広がる。模擬店は売り上げがアップする。西南や福大は芸能人が来るが九大は呼べない。代わりに酒で(盛り上がりたい)」
禁酒派の主張「周囲に迷惑をかける行為、飲酒運転、急性アルコール中毒の心配がある。何かことが起これば大学側の責任問題になる」
学生からは、飲酒時間を制限することなど罰則を含めた折衷案も出たというが、大学側は「酒に頼らないといけないような九大祭なら、やめてしまえ」と一蹴(いつしゆう)。実行委は「九大祭の存続」を最優先にやむなく禁酒を受け入れた。
学生たちにはなお不満がくすぶる。昨年は、お客さんの年齢を免許証などで確認し、車で来ていない成人に限って「御酒(おさけ)手形」を発行、酒類を販売する自主ルールを定めて成功したという。九大祭実行委員長の工学部3年水本聡さん(22)は「十分対策を講じるつもりだった。学生に任せてほしかった」と話していた。
ちなみに、キリスト教を建学の精神とする西南学院はかねて禁酒、九州産業はビールに限り時間制限つきでOK、北九州市立は今年も酒が飲める。
=2008/11/08付 西日本新聞夕刊=