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淀川:危険水位ラインに科学的根拠なし 70年前決定

 淀川の洪水防止のため、現在の堤防頂上の下約2メートルに定めている危険水位ライン「計画高水位」について国土交通省は、約70年前に明確な科学的根拠もなく決めた水位であることを明らかにした。国交省は従来、水がこのラインを超えると安全性が急に低下すると説明し、淀川の水位を計画高水位より2センチ下回らせるため、大戸川(だいどがわ)ダム(大津市、建設費1080億円)の建設が必要と訴えてきた。専門家はラインを多少上回っても堤防の安全性は変わらないと指摘しており、ダムの必要性に疑問が生じている。

 国交省は、大戸川ダム計画の説明資料に「(川の水が)計画高水位を超えれば堤防の安全性は急激に低下する」と明記。計画高水位未満の場合の安全性を100%とすると、計画高に達した瞬間、50%程度に下がるとのグラフも示している。ダムを建設しない場合、200年に1度の豪雨の際には、水が計画高水位を17センチ上回るが、建設で2センチ下にできるとの試算も公表した。

 しかし、国交省によると、実は計画高水位の前後で、堤防の安全性がどう変化するか、数量的な計算はない。

 旧建設省作成の資料「淀川百年史」によると、淀川の計画高水位は当初、1896(明治29)年に旧内務省が決めた。洪水記録に基づき、これ以下の高さで水を流せば水害が防げる値として「枚方市周辺で堤防の上端から3尺(約90センチ)下」に設定した。その後、洪水で堤防が決壊したため、1939年に約50センチ引き上げ、現行の値に変更した。

 堤防の高さも段階的に当初より約1.6メートル上げ、現在は計画高水位から堤防の上端まで約2メートル。淀川本川では戦後、水が計画高水位を超えた記録が5回あり、うち約50センチ超が2回、約30センチ超が1回あったが、堤防が決壊したことはない。

 国交省淀川河川事務所の小俣篤所長は「線の引き方が非科学的だと言われたらその通りだが、土木とはそういうもの。国が責任を持つと決めた線だから守らなければいけない」と話した。

 大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)は「計画高水位は豪雨時の流量計算や過去の洪水の経験から、このくらいなら安全だろうと決めた線。1センチでも超えたらいけない線ではないし、超えてすぐに安全性が急激に下がったり堤防が壊れたりもしない。計画高水位以上でも安全性を高める方法はいろいろある」と指摘している。【野田武】

毎日新聞 2008年11月8日 15時23分

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