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【主張】自己資本規制 全銀行に同一基準検討を
金融庁は、銀行などの経営の健全性を示す自己資本比率規制を一部緩和する方針を発表した。
米国発の金融危機に伴う株価の急落で、国内の銀行が保有する株式の評価損が拡大しているためだ。現行の規制のままでは、自己資本比率が大きく低下する可能性が高いため規制を緩和し、いたずらに銀行が危機に陥るのを防ぐようにした。
金融危機による信用収縮は世界的に広がっており、トヨタ自動車が今期の営業利益を1兆円下方修正したのも無縁ではない。株価下落で銀行の財務がさらに悪化すれば、貸し渋りに拍車がかかる。
平均株価が8000円を下回るような異常な株安水準にある以上、自己資本比率の規制緩和はやむを得ない対応だろう。
今回の緩和策では、国内で営業する地方銀行や信用金庫などが保有する株式や社債などの評価損をその金融機関の自己資本から差し引かないようにする。
自己資本比率は、貸出残高に対する自前の資本の割合を計算するため、各金融機関は株価も考慮しながら、全体の貸出額を決めている。株式の評価損を算入しなくてよければ、金融機関は貸出額を減らす必要性が低くなり、貸し渋り防止につながる。
しかし、今回の措置は地銀などに限られる。国際業務を行っている大手行は、国際的な銀行規制に関するルールに縛られるため、現行のまま評価損を算入しなければならない。
欧米の銀行はほとんど株を保有していないし、自己資本比率に算入していない。これに対して、日本の銀行は株を大量に保有している。これを自己資本に算入したままだと欧米銀との競争上、不利になる。緊急避難措置として、規制を緩和するなら、大手行の株の評価損不算入も認めるようルールの変更を米欧の金融当局に働き掛けるべきではないか。
米欧はサブプライム関連商品の時価評価についても、一部緩和を打ち出し、日本もそれに合わせる方向で企業会計基準委員会で見直しの議論を進めている。これも、自己資本比率の規制緩和と同様に平時には取りえない対策だ。
その意味で、自己資本規制緩和を平成20年12月期決算から24年3月期までの時限措置としたのは妥当である。金融機関もそれを自覚して、透明性の確保と財務の健全化努力を怠ってはならない。