◎歴史まちづくり法 城下町を磨く好機にしたい
金沢市が全国に先駆けて適用申請した「歴史まちづくり法」は文化財周辺の景観づくり
が目的であり、金沢にとっては「城下町」の個性を磨き、際立たせるための格好の道具となる。来年一月にも「歴史都市」の第一号認定が見込まれているが、新たな仕組みを上手に使いこなし、法律に基づき策定した「歴史的風致維持向上計画」を着実に実行に移したい。
歴史まちづくり法は一九六六年に制定された「古都保存法」の理念を拡大し、奈良、京
都、鎌倉など保存法で指定済みの十都市以外についても「国民共有の財産」として支援するのが狙いである。「古都」以外の「歴史都市」についても法的な位置づけがなされ、総合的な支援の枠組みができたことの意義は大きい。法の趣旨を考えれば、金沢について、いまだに時折耳にする「古都」「小京都」といった言葉を願い下げにし、全国に数ある「城下町」の代表格として内外にアピールするきっかけにしたいものだ。
金沢では世界遺産運動の広がりを背景に、金沢城址が国史跡に指定され、主計町の国重
要伝統的建造物群保存地区選定、今年度内には前田家墓所の史跡指定なども見込まれる。歴史的財産が文化財としての価値を高める中で、さらに面的に「城下町」の景観を広げるには無電柱化や用水の開渠(かいきょ)化、町家の保存など周辺整備も一体的に進める必要がある。
国の従来の制度では、市街地の用水を開渠しようにも農業施設という性格上、農水省の
補助基準に縛られ、無電柱化でも道路整備の中で位置づけられるなど行政の縦割りが補助金の使い勝手を悪くしていた。
新法は国交省、文科省(文化庁)、農水省の三者が共同で所管し、補助金行政のすき間
は多少なりとも埋められた。さまざまな制度が「歴史的資産」の保全を軸に運用され、支援の幅は格段に広がることになる。
新法の仕組みは金沢の都市課題に重なる部分が多く、国の取り組みもようやく地域の実
情に近づいたということだろう。北陸新幹線開業へ向けた魅力づくりを加速させる推進力にしたい。
◎ずさんな公金処理 増税論がむなしく響く
会計検査院が毎年指摘する税金の無駄遣いなど公会計の不適切な処理がいっこうに改め
られず、〇七年度検査で問題のあった経理処理が前年度より四倍以上増え、過去最悪になったのは憂うべきことである。麻生太郎首相は大胆な行財政改革と景気回復を前提に、三年後の消費税増税に言及したが、会計検査院の指摘事項は行財政改革以前の問題である。こうしたずさんな公金の扱い方を改めずして増税論が国民に受け入れられるはずもないことを首相は認識してほしい。
今回の会計検査は各省庁や出先機関、国が出資する特殊法人、自治体など約三万四千三
百カ所のうち約三千三百カ所を対象に実施された。不適正な経理処理は約九百八十件、千二百五十三億円と報告されたが、実際には単純推計でその十倍はある計算になる。
報告のうち、法令などに違反する不正経理は約三百八十億円に上る。その中には、生活
保護事業費や雇用保険の失業給付金をだまし取るなどの悪質なものも含まれる。こうした不正が毎年指摘され、絶える気配がないのは嘆かわしい。麻生首相が強調する行財政改革の大前提として、まず公金管理について職員が襟を正すことから始めなければなるまい。
今回の報告では、調査対象となった十二道府県で約十一億円の不正経理が指摘された。
架空発注などで支払った公金を業者の口座にプールする「預け」が長年続けられていた実態も明らかにされた。大方は私的流用を否定しているが、こそくな裏金づくりと批判されても仕方がない。
国庫補助金を本来の事業以外に使うなどの不正経理は、自治体が要望する財源移譲を伴
った分権改革の高まりに自ら冷や水をかけることにもなりかねない。
独立行政法人(独法)の不透明な契約状況も問題である。百二の独法が結んだ契約のほ
とんどは、一般に割高になる随意契約で、独法出身者が在籍する法人との契約額が異常なほど多い。競争のない契約による無駄遣いと癒着を疑わせる状況を正すことも、あらためて注文しておきたい。