日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
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この情報の最も新しい更新日は11月7日(金)です。 |
「わが国民は賤民意識の とりこ」 海上自衛隊 教育資料に記述 部外の大学教授の 著書を引用した (朝日 11月7日 朝刊) |
[概要]自衛隊の海上幕僚監部が作成した一般隊員・幹部向けの精神教育参考資料に、「敗戦を契機に、わが国民は自信を失い、愛国心を口にすることはおろか、これをタブーとし、賤民(せんみん)意識のとりこにさえなった」という表現があることがわかった。 6日の参院外交防衛委員会の審議で明らかになった。民主党の白真勲氏が防衛省から提供を受け、「『賤民』という言葉は一種の差別用語ともいえなくない。極めて問題だ」と指摘した。浜田防衛相は「極めて違和感がある。しっかり確認し適切でなければ変えさせていただく」と応じた。 この資料は02年3月付。該当部分は部外の大学教授の著作(1976年)から引用したとしている。 [コメント]自衛隊が行う精神教育とは、隊員の意識向上のために行われる自衛隊向け”公民授業”のようなものである。私が少工校で精神教育の授業を受けたのは週2時間ほどで、金曜日の昼飯後の2時間の授業時間があてられていた。内容は、”躾(しつけ)”の大切さというものから、楠木正成がいかに忠孝であったかを聞いた思い出がある。しかし授業を受ける生徒はよく寝ていた。教官は主に教育隊長(3佐)が行い、期末テストがないからである。しかし中国で実戦経験(終戦時 少尉)のある教育隊長が自分の戦闘体験を語った時はみんな起きて真剣に聞いていた。 防衛大学校、幹部候補生学校、幹部初級課程(BOC)、幹部学校の指揮・幕僚課程(CGS)、統幕学校などでは、外部から大学教授、歴史研究家、評論家、メディア関連の編集委員、体験者などを招き、外部講話として精神教育を行っている。むろん一般部隊でも、部外講師を招き、歴史教育、時事問題などを聞く会などを開催している。 一般に上級機関(学校など)ほど自衛隊向け”精神教育”を行う傾向が強いと思っている。すなわち田母神氏が懸賞論文で記述した内容や、今回の教育資料に記述してある様なことである。 そうそう、少工校の1年生の時にこんなことがあった。精神教育の時間になるといつもちり紙で耳栓をしている同期がいた。その同期は兄貴が自衛官で、「兄貴から聞いたけど、この精神教育を聞くと自衛隊を辞められなくなるそうだ。オレは少工校を卒業して普通の大学に行く。大学はアルバイトで働いて勉強できるから、自衛隊を辞められなくと困るんだ」と話していた。数年前にそのことを本人に話したら、「オレがそんなことを言ったのか」と照れていた。その同期はOB会の元会長で、今は自衛隊後援会の役員をやっている。 この記事を読んで気がついたが、これから自衛隊員の内部告発が多くなると思う。今まで精神教育で押しつけられる価値観や歴史観に違和感を持っていても、自衛隊という組織の中では何も言うことは出来なかった。しかし田母神騒動を切っ掛けにしてその封印が解かれた。ホテルチェーンのアパグループの代表を、田母神氏が小松基地(石川県)司令時代にF−15戦闘機に乗せていたなど、大量の内部告発がメディアや政党関係に寄せられるだろう。緊急に防衛省や自衛隊高官が、その引き締めに必死の対策をとるだろう。 |
誤解を与えやすい表現 「発言」を訂正。 「私は防大に関係なし」 (11月7日 深夜0時25分) |
たった今、TBSラジオから自宅に帰ってきました。帰りのタクシー内で気がつきましたが、昨日(6日)に生放送したTBSラジオ「アクセス」(22時〜23時45分放送)で私が発言した内容に、誤解を与える言葉のあったことに気がつきました。
テーマは「田母神氏の更迭問題」です。放送中に田母神氏の年齢が60才であることを話した際、「田母神氏は防大の15期生です。私は17期生ですから2才下です」と話したと思います。これは年齢差のことを話したので、正確には、「田母神氏は防大の15期生で、私は17期生相当ですから2才下です」と話すべきでした。私が防大の17期生だったという意味ではありません。 私の少年工科学校の同期が防大に進学したり、一般大学(夜学など)から一般幹部候補生に進んだものは、防大17期に相当しているという意味でよく使います。 私は防大に入学したことも、中退したことも、卒業したこともありません。まったく防大の教育とは無関係です。もしかすれば誤解を与えた可能性があるので、緊急に訂正して、放送を聞かれた皆さんにお詫びします。 私は陸自の少年工科学校の12期生です。3年生の時に中退し、その後はフリーの報道カメラマンなどを経験しています。私は防大とはまったく関係ありません。(11月7日 深夜0時40分 更新) |
米大統領にオバマ氏 試される日米同盟 対テロ戦 新たな支援要請も (毎日 11月6日 朝刊) |
[概要]米大統領選でオバマ当選を受け、麻生首相は「日米同盟は日本外交の機軸」と表明した。首相は5日発表した談話で「日米両国は自由・民主主義、基本的人権の尊重、市場経済の推進といった価値観を共有」と強調。そのうえで、「日米同盟は日本外交の基軸であり、アジア太平洋地域の平和と安定の礎だ」と重ねて指摘した。 オバマ氏は「テロとの戦い」で主戦場をアフガンに移す方針を鮮明にしており、インド洋での給油活動継続に加え、日本に新たな支援策を求めてくる可能性がある。日本がどこまでオバマ氏との国際協調路線で足並みをそろえられるか試される局面も出てきそうだ。 ブッシュ政権は日本にアフガンへの陸自ヘリ部隊派遣を水面下で要請した。政府は6月に現地調査団を送って派遣の可能性を探ったが、「治安が極めて悪く困難」と判断した経緯がある。再びオバマ次期政権からアフガンでの追加支援を求められた場合、日米関係がぎくしゃくすることも想定される。 オバマ氏の北朝鮮政策は、直接対話の可能性に触れる一方で、「脅威への対峙には軍事的オプションも排除しない」という発言もしている。外務省幹部は「硬軟どちらが出るか未知数」と語る。8年ぶりに政権につく民主党内の人脈構築という課題もある。 [コメント]すでに防衛省では来年度の予算案で、輸送ヘリCH−47のエンジンをパワーアップさせ、アフガンのような高地でも運用できる改修費を計上している。 そこで陸自・部隊がアフガンに派遣できる条件を検討すると、現行の法制度では次ぎのような想定が考えられる。@タリバン(主力・オマル師)がアフガン政府との休戦に応じて、双方が国連に平和維持軍(PKO)の派遣を要請すること。Aアフガンとパキスタン国境付近に潜伏するアルカイダとタリバンの同盟関係は決別する。Bアルカイダ掃討作戦には米軍を主力とした戦闘部隊があたる。Cアルカイダ掃討作戦を行う地域を限って、アフガン政府、パキスタン政府は米軍の軍事作戦を許容する。D国連PKO活動に参加した部隊(自衛隊など)はアルカイダ掃討作戦地区には立ち入らない。 このような状況が生まれるなら、現行のPKO協力法で自衛隊のアフガン派遣は可能である。自衛隊のアフガンPKO派遣に新たな特措法の制定は必要ない。 要は、アルカイダ掃討作戦はアメリカの対テロ戦争で、01年9月の米・同時多発テロの首謀者とその中枢組織を壊滅(敵討ち)させると位置づける。その上で、アフガンに関してはアフガン政府とタリバンが紛争停止に合意し、国連平和維持活動の部隊が治安回復や社会インフラの整備を行い、安定した国家建設の基盤を作るというものである。 すでにアメリカはその方向で動き出している兆候がある。というのは、これ以外にアフガン問題を解決出る方法はなく、、オバマ新政権でも、このままアフガンに米軍を増派しても、米兵の犠牲を増やすだけである。 タリバンの指導者オマル師は、米同時多発テロの直後、アメリカにアルカイダのビンラディンを差し出すように申し出たことがある。しかしビンラディンがオマル師に多額のお金を支払ったことと、アメリカのネオコンはタリバンもイスラム原理主義の過激派(テロ集団)と考えてアフガン戦争を始めたという経緯があった。 パキスタン政府や軍情報部は、タリバンがアフガン政府に加わることに反対はしない。そこで隣国イランがどうでるかだが、イランはイラクから米軍が撤退するなら、イラク情勢が気になってアフガンに干渉する暇はないと思う。 私はアフガン政府(カルザイ政権)とタリバン(オマル師など主力勢力)が和平に合意し、国連を通じて平和維持軍(PKO)の派遣を求めるなら、自衛隊をアフガンに派遣することは賛成である。そのようにすべきである。 またアフガン軍にこれから増設される新国軍の約7万5000人は、和平に応じたタリバンを編入させる可能性が高い。彼らを組織化して、アフガンの治安維持にあたらせるためだ。 このような提案を日本案としてオバマ次期米大統領にすべきである。日本が言い逃れのためのインド洋の海自・洋上給油はもうやらなくいい。日本の洋上給油は日本の知恵のなさと、都合よく責任逃れする汚さのかたまりになっている。アフガンに真の平和と安定を築く役割を果たしたいなら、オマル師とカルザイ大統領を仲介するサウジ国王を支持すべきである。 |
宇宙戦略本部 早期警戒衛星 導入を検討へ 「安全保障衛星」分野を提唱 (朝日 11月5日 朝刊) |
[概要]政府の宇宙開発戦略本部(本部長・麻生首相)の専門部会は4日、弾道ミサイルの発射を宇宙からいち早く探知する「早期警戒衛星」の導入など、宇宙の防衛利用を検討していくことを決めた。来年5月ごろに策定予定の宇宙基本計画に向けて、今後の議論を本格化させる。 同日に開かれた第2回専門調査会で、ミサイル防衛構想に欠かせない早期警戒衛星や、自衛隊の海外活動に必要な衛星通信手段の確保など、専守防衛の範囲での防衛利用について「検討を促進していく」とした事務局の提案を了承した。 専門調査会の事務局では、日本の衛星需要見通しで、商業衛星や気象衛星などとは別に、「安全保障衛星」という新区分を提唱。98年の北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けて導入が決まった情報収集衛星を例に挙げた。 [コメント]これは日本の安全保障でいう専守防衛のためではない。これは悪徳政治家や防衛企業が”防衛利権”を稼ぎ出すための”ダミー事業”に他ならない。この程度の浅知恵で軍事常識を知らない国民をだませると思う根性が汚すぎる。どうせ元防衛相の00が考えた理屈だろうが、ミサイル防衛(MD)と同様に、ドブにお金(国防費)を捨てさせ、悪徳政治家がドブさらいするようなものである。 その理由を説明する。早期警戒衛星というのは高度約3万5000キロの宇宙に静止させる軍事衛星のことである。写真撮影や地上レーダーで地表を探る偵察衛星は、高度約500キロ前後で地球を周回している軍事衛星(日本の場合)だ。まず運用方法と高度が500キロ(周回)と3万5000キロ(静止)の違いがあることを知って欲しい。 なぜ早期警戒衛星が必要かといえば、敵の核攻撃(弾道ミサイルの発射熱)を一秒でも早く探知して、味方の核ミサイルによる反撃を可能にし、そのことで核抑止力を高めることを目的にしている。すなわち早期警戒衛星は”核戦略”の一翼として必要な兵器システムなのである。 核武装しない日本が早期警戒衛星を宇宙に配備することは、日本が将来は核武装をすることを世界に宣言する行為に等しい。 また将来に、日本が仮に核武装して、IRBM(中距離弾道核ミサイル・射程5500キロ以下)を配備して、早期警戒衛星で中国やロシアの核ミサイル発射を探知しても、核ミサイルは十数分で日本に到達するため、発射の兆候を捉えても、火山など噴火や工場の爆発事故などとの確認をしているうちに着弾する。そのため昔から、日本は中国や旧ソ連に近いために、早期警戒衛星の効果はないと言われてきた代物である。 早期警戒衛星は攻撃的な兵器ではなく、あくまで敵の攻撃を探知するだけの防衛的な兵器という理屈は”詭弁”でしかない。日本のMD導入で防衛利権の甘みを知った政治家が、国産の早期警戒衛星を開発するという口実で、こんな防衛利権を考えたにすぎない。 早期警戒衛星を運用しているアメリカ人技術者が知れば、日本の政治家はなんてバカなのかと呆れることは間違いない。日本が早期警戒衛星を配備することは軍事的に意味がないからである。 日本のメディアは若い優秀な記者を選び、長い時間と研究費(学資)をつぎ込んで、将来の有能な防衛担当記者を養成して欲しい。この程度のインチキをすぐに見破る能力を持った軍事専門性のある記者である。 私は宇宙開発の輝かしい未来を期待しているので、このような汚いやり方で日本の宇宙開発が汚されることが我慢できない。日本の安全保障にとっても有害である。 |
防衛省 会見に難色 田母神前空幕長 異例の定年退職 「退官日」発令繰り上げ (産経 11月4日 朝刊) |
[概要]防衛省は3日、先の大戦に関し政府見解と異なる論文を投稿して更迭された田母神前空幕長(60)を定年退職とする人事を発表した。空幕長の定年は62才だが、田母神氏は10月31日付で空幕幕僚監部付(階級は空将)になったため、「空将」の定年の60才が適応されると判断した。 当初は双方が4日の退官で合意していたが、田母神氏が4日に防衛省内の防衛記者会で記者会見して、論文の真意を弁明する意向を示したため、急きょ退官日を休日の3日に繰り上げた。これに対して、田母神氏が3日に防衛省記者会で会見を行う動きを見せたが、防衛省は退官発令を理由に同省への登庁を禁じた。 田母神氏は防衛記者会幹事社の時事通信本社で同夜、記者会見を行い、「国家国民のためにという信念に従って書いたもので、その結果、解任になったことは断腸の思いだ」と述べた。さらに、「(制服のトップが)このくらいのことを言えないようでは、自由民主主義国家といえない。政府見解に一言も反論できないなら、北朝鮮と同じだ」などと主張した。 [コメント]北朝鮮と同じなら定年退職ではなく、間違いなく銃殺刑である。そのあたりの発想に空自の”支離滅裂”さを感じる。昔から空自の特徴として、”勇猛果敢”と”支離滅裂”がいわれてきた。田母神氏は昨夜の記者会見で、民主党が求めている国会の参考人招致に応じる意向を示している。ぜひ田母神氏の主張(歴史観)を国会という場で聞いてみたい。 田母神氏には正論を語ることで罰を受ける者の悲壮感がまったくない。「かくすれば、かくなることと知りつつも、やむにやまれぬ大和魂」(頼 山陽)という大和心とは無縁である。「自分が正しいと思うことは、すべての者にも正しいことである」というだけの教祖的な発想である。田母神氏に論争や反論への備えがあるとは思えない。階級が幅をきかす自衛隊社会で、独善の論を振りまいてきただけのように思う。 今朝のNHKニュースでは、田母神氏が一位となった懸賞論文に、50人以上の自衛官が応募していたという。おそらく田母神学校の教え子が師(田母神氏)に薦められて応募したものと考えられる。その自衛官全員の論文を読んでみたい。読むのは批判したり反論するためではない。彼らの論文には単に口先の言葉だけではなく、その決意があるか知りたいのだ。 決意がないのに言葉遊びで書いたなら、俗論以下の駄文である。日本は思想・言論が自由な国である。自衛官も例外ではない。しかし自衛官は破壊力の大きい武器を持つことが許され、国家の危機には敵を殲滅(殺戮と破壊)することが許された組織である。そのような者は、外部に公表する論文は単に口先だけの言葉遊びであってはいけない。中国や韓国に対する配慮以前の問題である。その覚悟を知りたい。 |
前空幕長論文 更迭 辞職、懲戒、定年? 防衛省 処遇に悩む (読売 11月3日 朝刊) |
[概要]田母神前空幕長(60)(10月31日付で航空幕僚監部付)が政府の見解と異なる論文を発表して更迭された問題で、今後どのように処遇するか防衛省が揺れている。空幕長の職は解かれたが、「空将」の階級はそのまま。本人は進退を明らかにしていない。このままでは国会審議や外交関係に影響が出ることは必至で、同省は早期収集策を模索している。 防衛省にとって最もダメージが少ないのは、田母神前空幕長が浜田防衛相に辞意を表明して辞職を選ぶこと。省内では、空自のトップを務めた人物だから自分で辞意を表明して欲しいという声が強い。しかし2日までに田母神氏から進退に関する明確な意思表示はない。 省内には懲戒免職という案も検討すべきとの意見が出始めている。しかし今回の論文が懲戒免職の対象となる規律違反に該当するかは微妙な問題だ。もし組織の長だった者が懲戒免職になれば現場にも大きな動揺が走るとみられる。 自衛官の定年は役職や階級によって決まり、空幕長の定年は62才だが、更迭された空将の現在は60才の「定年退職」扱いが可能。だが、そのような前例がなく、同省の幹部は頭を悩ませている。 [コメント]空幕長を更迭後も本人から進退(辞職)に関する表明がないことは、この更迭に不満を表明して、さらに長引けば個人で反抗を試みていることになる。田母神氏も確信犯である以上は、責任を認めて職を辞めるのは心苦しいことである。同省が辞任を迫ることは、正当性を主張する者に、短刀を差しだし、これで腹を切れというものである。 絶対にあり得ないのは、田母神氏を懲戒免職とすることである。外部に発表した論文が政府見解と異なれば「懲戒免職」という前例になれば、憲法が保証した言論の自由を禁じることになる。先月、中国の潜水艦が火災で浮上した情報を、情報本部に務める空自の1佐が新聞記者に漏らした件で、この1佐が懲戒免職で処罰された。(その後、この1佐は地検で起訴猶予)。この場合でも、懲戒免職が妥当かどうかと問われれば、私は「懲戒免職は重すぎる。停職30日程度で十分ではないか」と答えると思う。懲戒免職という処罰は大きく重いことを忘れないで頂きたい。 そこで残る第3案の空将は60才定年を適応する案だが、これが最も適当で、これなら自爆覚悟で論文を公表した田母神氏の名誉も守られると思う。明治時代、政治犯を収監する監獄は、入口を高くして、政治犯が頭を下げずに入獄できたと聞いた。これが武士の情けである。前例がなくとも、60才定年で田母神氏を退職させる道を考えるべきだ。 もし田母神氏が懲戒免職になれば、陸・海の幕僚長は防衛相に抗議の辞表を出して、自衛官の言論の自由を守るための意思表示をして欲しい。田母神論文の主旨に同調するのではなく、言論の自由を守るために戦うのである。それくらいの覚悟がなくては日本の国体は守れない。 |
「侵略は濡れ衣」 航空幕僚長を更迭 過去の戦争めぐる論文 政府見解を逸脱 (毎日 11月1日 朝刊) |
[概要]航空自衛隊の田母神(たもがみ)幕僚長(60)が、日本の過去の戦争をめぐって「我が国が侵略国家というのは濡れ衣だ」と主張する論文を執筆し、懸賞論文で最優秀賞を授賞し、31日からネット上などに英訳とともに公表されていた。 このことを受けて、浜田防衛相は31日、「先の大戦の評価など政府見解と明らかに異なる意見を公表しており、航空幕僚長にふさわしくない」として、田母神幕僚長を更迭した。論文は日中戦争について「我が国は蒋介石により戦争に引きずり込まれた被害者」と指摘し、旧満州や朝鮮半島が「日本政府と日本軍の努力によって、圧政から解放され、生活水準も格段に向上した」と植民地支配を正当化。その上で「多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している。我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣だ」と結論づけている。 自衛隊のあり方については、集団的自衛権、武器使用の制限を挙げ、「自衛隊は雁字搦(がんじがら)めで身動きできない。マインドコントロールから解放されない限り我が国を自らの力で守る体制がいつになっても完成しない」と記している。こうした政府見解を否定する論文を執筆したことで、野党やアジア諸国の反発が予測される。 田母神・空幕長は31日夜、自宅前で報道陣の質問に答え、「(更迭には)淡々と政府の指示に従う」と答え、論文の内容を変更するつもりがないことを話した。 [コメント]最初にこの報道を聞いて、やはり日本は言論の自由な国だと思った。空自で空幕長という制服トップが、今までいろいろな機会や場所で同様の発言をしても空幕長になり、空幕長という立場で英文の論文が出たところで「政府の見解と違う」と更迭される。それほど言論の自由が確保されている証明だ。 しかし、今まで航空総隊司令官や統幕学校校長、空幕長だった田母神氏から同じ話しを聞いていた人は、今回の騒ぎをどのように理解するだろうか。空幕長になったら、論文などを部外に発表する際、政府見解と異ならないように注意するしかない・・・という気持ちだけではないだろうか。また、今回のように確信犯的な行動であれば、まったく事前に対処できないことになる。 空幕長を間もなく退任する前に、大きな花火を打ち上げて、自己の主張を知らしめる確信犯的な行為であると思う。空幕長でなければだれも注目しない「負け惜しみ」の主張である。 私は栗栖元統幕長が「超法規的行動」で金丸信防衛庁長官(当時)から更迭された時のことを知っているが、多くの制服自衛官が栗栖氏を支持し尊敬していたことを覚えている。私自身も退職された栗栖氏の自宅に伺い、何度かのテレビ番組のインタビューをさせて頂いた。栗栖氏なら防衛問題の本質が聞けると思ったからである。 しかし今回の田母神氏の発言には制服自衛官は尊敬を感じないと思う。「ああ、とうとうやっちゃた。やっぱり」ぐらいの反応しかないのでは。同じ制服トップの更迭でも、栗栖氏と田母神氏との大きな違いに驚いている。社会に与える重さもインパクトも桁違いに小さくなった。 戦火のイラクで空輸支援にあたる空自隊員が、名古屋地裁で「憲法違反の判決」が出て悩んでいる時に、幕僚長が「そんなの関係ねえ」と発言しても助けたことになはならない。田母神氏には現場隊員に対する配慮が欠けていると思った。 まさに今回は田母神氏の「最後屁」だった。今回のことで田母神氏への世論の支持が高まり、これから田母神氏の発言が影響力を増すことは考えられない。まさに自爆か自沈である。 |
最精鋭 外部と遮断 金総書記の 警護強化 護衛総局 第6局が担当 (産経 10月31日 朝刊) |
[概要]韓国紙「中央日報」が30日に報じた韓国当局の分析によると、金総書記に対する身辺警護が強化され、外部からの接触が完全に遮断された状態であることが明らかになった。金総書記の警護は、護衛総局の中でも最も精鋭とされる「第6局」だけが担当している。 韓国政府の高官は金総書記の症状に対して、「死去していないのは間違いない。だが、正常でないことも確かだ。現状では完全な回復は少し難しいとみられる」と語った。 金総書記は8月14日に軍部隊の現地指導を行って以来、公の場から姿を消し、「顔なき統治」は30日で77日になった。これは94年に父親の金日成主席が死去して、喪に服した87日間のケースを除けば最長になった。 [コメント]金総書記の病気が当初報じられた「脳溢血」ならば、もし、回復症状が見られるのは1〜2週間後の早い段階ではないか。これほど長い時間が経過すると、脳機能は深刻なダメージを受けたことを証明しているのでは。これほど長期化すれば、経過が「良好」ということはあり得ないと思う。 私の義母が8年前に「くも膜下出血」で倒れたことがある。1月2日の朝8時半頃に自宅で倒れ、救急車で運ばれた救急病院でくも膜下出血を告げられた。その時、脳外科の医師から「この病気は1/3が即死で、1/3が数日で死亡する。生き残った1/3にもマヒなどの深刻な後遺症が出る」と言われたことを覚えている。 脳外科のベテラン医師が緊急に呼ばれ、正午過ぎから夜の8時頃まで手術が行われた。いわゆるクリップ手術というもので、脳の血管で穴のあいた部分をクリップで挟んで止血するのである。さらに脳内から首筋(内部)を通って横隔膜(腹部)までのパイプが通された。これは脳内圧力(出血)をパイプを通して横隔膜で抜き、異常圧力による脳のダメージを防ぐための処置と聞いた。 この手術は大成功で、義母の意識は翌日に戻った。術後2日目には普通の会話ができた。心配した体のマヒもなく、ただ片方の聴力(耳)だけがなくなった。くも膜下出血だったという話しを信じてもらえないほどだった。退院後は一人でタクシーに乗って美容院に行き、デパートで買い物をして、一人で外食して帰宅することに支障がなかった。(そんな体調が7年間以上続いた)。 だから金正日が発症直後に、回復したという韓国報道にはそれなりの説得力を感じていた。しかしこれほど長く金総書記の姿が見えないなら、脳が深刻なダメージを受けている可能性が高いと思う。 すでに長男の金正男がパリに行き、堂々と脳外科の最高権威であるフランス人医師に治療を依頼するほどである。金正日の症状は隠し通せるほど甘くはないと思う。いくら金総書記の身辺を精鋭の第6局で固めても、外国人医師を通じて金正日の症状が外部に漏れることは隠せない。フランスの情報機関は昔から荒っぽいから、この医師の経理申告(税金)を徹底的に洗うと脅せば、医師から金正日の症状をフランス政府要人が知ることはたやすい。金正男はそのことを承知(権謀術数)でフランス人医師に治療を依頼している。 いつも言うことだが、日本政府も”その時”に備えて緊急対応に備えるべきと思う。ついに米ソ冷戦で分断された最後の国家が消え去ろうとしている。 |
韓国、新計画策定へ 北朝鮮混乱に 対応策 米との調整が課題 共同作戦計画 5029 (朝日 10月30日 朝刊) |
[概要]韓国政府関係者によると、韓国政府は北朝鮮と戦争に至らないものの、北朝鮮国内が混乱する非常事態に備えた独自の対応策の検討に入ったことを明らかにした。北朝鮮からの難民、韓国人人質事件などの対処を検討し、省庁別のマニュアル化の作業を行う。これは9月に表面化した金総書記の健康悪化説が作業を後押ししている。 対応策のうち北朝鮮難民への対応では、収容所や食糧、韓国では撲滅した伝染病ワクチンの確保などを目指す。また、盧武鉉前政権までの太陽政策で拡大した南北交流で、開城工業団地や金剛山観光地などにいる韓国人(常駐・1636人・29日現在)への対応策も検討する。 今回の対応策には軍事的な措置は含まれないが、韓国は別途に米国との間で共同の軍事計画作りを進める。具体的には、両国が99年に基本的な想定と戦略方針を定めた概念計画「5029」を「実戦」に耐える作戦計画に格上げする。 5029が想定する@大量破壊兵器(WMD)の管理不能 A大量難民の発生 B飢餓など人道問題の発生 C北朝鮮内での人質事件の発生 D内戦の発生ーーの5つのケースも見直す。ただ、5029が想定していた5件のケースは、約10年前のデータで、再検討すれば難民など数値が大きく変動する可能性がある。また、WMDの拡散阻止に強い意欲を示す米国との間で、政策の優先順位をめぐる調整などの課題が山積みしている。 米国はテロ集団がWMDを奪った場合、軍事力行使を辞さないという考えを示している。これに対して韓国政府は、まず北朝鮮政府にWMD拡散阻止を求めるなど、可能な限り軍事力の行使を控えたい考えが強い。北朝鮮の非常事態は主に北朝鮮内で進行するので、状況把握が難しいという課題も抱えている。 [コメント]この記事でもふれているが、米韓軍には北朝鮮と戦争状態を想定した共同作戦計画「5027」がある。しかしすでに米韓軍と北朝鮮軍の全面戦争は想定自体が無理である。北朝鮮軍の旧式な兵器システム、原始的な通信・指揮・情報、貧弱な補給・兵站能力、訓練・演習の未熟と、どれをとっても北朝鮮軍は米韓軍とまともに戦える相手ではない。もう「作戦計画5027」は歴史の金庫にしまい込んでもいいと思う。 そこで「作戦計画5029」を今の状況に合わせ、対応を整えておくことは必須の課題である。しかし北からの難民対策や緊急食糧支援など、すべて軍事力で対応することは限界がある。そこで韓国政府は民政部門で出来る範囲と能力の具体的な検討に入った。 同じことは、日本でも検討すべきことである。日本政府は韓国政府の北朝鮮緊急支援計画について、日本の備蓄米(100万トン程度)の提供、日本に漂着した北朝鮮難民の韓国移送などを決めているという。この他にも感染症ワクチンの準備、難民一時収容所の設置、海上警備パトロールの実施、武装難民の武装解除など、日本でも明日にも起こる可能性の非常時への準備である。 昨日の韓国紙「東亜日報」(29日付け)によれば、韓国政府は金総書記の容体が悪化したという情報を入手し、確認を急いでいるという。韓国政府関係者の話しとして、「26日に金総書記の身辺に深刻な問題が生じたとの情報が入り、関係当局が確認作業に追われている」と報じた。(この部分、産経新聞 10月30日 朝刊より) やはり中国が推測するように、末尾に9のつく年は大変動が起こり、来年の2009年に朝鮮半島で北朝鮮が消滅することになるのだろうか。 |
米軍のシリア越境攻撃 対テロ特殊作戦か シリア圧力の見方も 米当局者「作戦は成功」 シリア外相「テロ攻撃だ」 (読売 10月28日 朝刊) |
[概要]シリア東部のイラク国境地帯アブカマルで26日に起きた戦闘は、テロリストのイラク侵入を阻止する米軍の特殊作戦の可能性が高いが、この時期にシリア攻撃を行った背景には、不透明な部分も残る。イラク政府報道官は27日、ロイター通信に「攻撃されたのはイラクを攻撃するテロリストの拠点だった」と語った。 この攻撃は日没前に行われ、攻撃の事実を内外に示す米国の意図も感じ取れる。退陣前のブッシュ政権がシリアに軍事力を誇示し、アサド大統領がテロリストをかくまうのをやめるように圧力をかけたとの見方もある。 しかしシリアは、属国扱いしてきた隣国レバノンと初めて外交関係を樹立、国際社会からの孤立状態を脱しつつある。今回の米軍の攻撃は、シリアの外交的な立場をむしろ強化したともいえ、アサド大統領は米次期政権をにらみ、対シリア政策の見直しを働きかけるとみられる。 AFP通信によると、米当局者は27日、米軍によるシリア攻撃を認めた上で、「作戦は成功だった」と述べた。作戦の目的はシリアからイラクに流入するテロリストの一掃が目的との認識を示した。一方、シリアのムアッリム外相は27日、ロンドンで記者会見を行い、米軍のヘリがシリア領内に侵入し、民間人を殺害したとして、「国際法上のテロ攻撃だ」と強く非難した。米政府に対して、事実関係の調査と釈明を求めた。 [コメント]米軍ヘリから攻撃されたアブカマルの農場はイラク国境から8キロの場所にあるという。アブカマルはシリアからイラクに渡る武装勢力の越境拠点と知られている。(この部分 毎日新聞 10月27日付け 夕刊)。 米軍の攻撃は4機のヘリが投入され、特殊部隊員を乗せた2機が着陸し、地上でも掃討作戦が実施された。米軍がシリアに越境攻撃をしたのは初めて。 それでは米軍の特殊作戦(昼間)はどのように行われるのか。その基本形について説明すると、まずテロリストが潜むと推測される建物や施設に空から奇襲の空爆が行われる。使われる機体はF−15E戦闘機やF−18スーパーホーネット戦闘機などの精密誘導爆弾(威力が大きすぎる)ではなく、AC−130対地攻撃機やAH−64攻撃ヘリなどを使って対地攻撃が行われる。その間、上空には無人偵察機が旋回し、地上から打ち上げられる銃弾の発火位置(赤外線)を探知する。その場所にさらに上空のAC−130機の105ミリ砲や、AH−64のロケット弾が撃ち込まれる。 次は敵の風上側に大量の煙幕弾が投下される。地上に降下し、特殊部隊員を降ろすヘリを煙幕で隠すためである。煙で視界を遮られたゲリラは、ヘリや特殊部隊員を銃撃することができない。こうして地上に散開した特殊部隊員は風上から風下の敵に向かって攻撃を行う。 攻撃終了後は、再び、煙幕が張られ、特殊部隊員は風上に着陸したヘリで回収されて撤退する。その間、15分〜20分ぐらいの地上戦闘でテロリストの拠点(武器庫や弾薬庫)は完全に破壊される。米軍が射殺したゲリラは顔写真が撮られ、死体から指紋を採るぐらいの証拠は採取される。 今回の米軍の特殊作戦は、シリアへの初の越境作戦だったという点と、明るい昼間に行われたことに特徴がある。明るい昼間に作戦が行われたので、戦闘の一部始終が米軍によってビデオ撮影され、特殊部隊員の養成教材として活用される。これはシリアからの非難(民間人を攻撃)に備えるためでもある。 このように、日本の海自の特別警備隊が特殊部隊だといっても、米軍の特殊部隊と規模や実績と比較するには無理がある。お互いの違いを自覚することも大事なことである。 |
武装勢力と対話へ パキスタン軍が 対テロ方針転換 「武力だけでは永久に勝てぬ」 −−掃討作戦司令官 (毎日 10月26日 朝刊) |
[概要]パキスタン軍がアフガン国境付近で続けているイスラム武装勢力掃討作戦で、同軍が武力による掃討から「対話による解決」に方針転換を図っていることがわかった。これを受け、パキスタン国会も22日、対テロの見直しを政府に求める決議を全会一致で採択した。 アフガンでもカルザイ政権が武装勢力タリバンとの対話路線を模索している。パキスタンが対話路線にかじを切れば、米国がこの地域で進める対テロ戦戦略は大きな転換を迫られることになる。 パキスタン軍で掃討作戦を指揮するパシャ中将は議会上下院に対し、今月8日、極秘裏に国境地帯の軍事情勢の説明を開始。「武力だけでは永久に勝てない」として武装勢力と対話による政治解決が必要という結論を伝えた。武装勢力を封じ込めない理由を、住民が武装勢力を支持しているためと指摘した。アフガン政府がタリバンと対話路線に転換したことも、パキスタン軍が戦闘に固守する姿勢を転換させた。 パキスタンは経済が極度に悪化し、債務不履行(デフォルト)に陥る可能性があるとして、国際通貨基金(IMF)に緊急融資を求めている。経済悪化の理由に、国際的なエネルギーや食糧の急騰のほか、対テロ戦争で国内治安が悪化し、外国からの資金が流出していることがある。 一方、アフガンから米軍の越境攻撃は最近になって連日のように続き、地元民が武装勢力支援に転じる原因になっている。パキスタン側は治安改善のために、米軍に越境攻撃をやめる様に求めるという。地元メディアによるとパキスタン国内でも対テロ戦見直しを支持することが圧倒的。選挙で選ばれたザルダリ人民党政権は国会や世論を無視できないとみられる。 [コメント]パキスタンのこの変化も、アフガンのカルザイ政権がタリバンと対話路線に切り替えたのと同様に、この地域での戦闘に重大な変化を呼び起こすことになる。このような構造的ともいえる変化は、米大統領選で民主党のオバマ候補の優位が決定的になり、ブッシュ政権とは別の対テロ戦略が採られるという読みがあるからと思う。その点では、すでにブッシュ後の政情に向かって動き出している。 ここで勘違いしてはいけないのは、アフガンとパキスタン両政府は、武装勢力でもタリバンとの和解は目指しても、外国人が多いアルカイダとは一線を引いている。たとえ地元部族でも、アルカイダを支援する者には容赦しない攻撃を行うと思う。またアメリカ軍のアルカイダ攻撃は容認するだろう。両政府の狙いは、タリバンとアルカイダを分離させることである。またアルカイダと辺境州の部族と切り離すことである。 そうしてアフガン・パキスタン国境付近であぶりだしたアルカイダを、一気に殲滅するというのが、オバマ候補が演説した対テロ作戦の根幹である。その際、パキスタンは国土がアメリカの対テロ戦争の主戦場になることを避けるためには、自国民をアルカイダから分離させるしか方法はない。これはパキスタンの生き残り作戦なのである。 そのようなパキスタンの姿勢(戦略)をアメリカが許すかという点だが、間違いなくオバマ新大統領は支持すると思う。そうしないとアメリカの対テロ戦争は終わらないからである。アメリカの金融危機も莫大な対テロ戦争の出費を止めることが緊急の課題になっている。 アフガンとパキスタンがこのように舵を切りだすと、この地域の和平構築に向けた日本の支援はやるべきことが山ほどあるし、かつ、確実な効果(ハイリターン)が期待できる。具体的には、アルカイダの掃討が終われば、もはや辺境州などと呼ばないで、この地域の開発を国際社会(機関)に働きかけて支援するなどのことである。戦争よりも平和によって受ける恩恵がはるかに大きなことを住民に知ってもらうのだ。 |
安保不慣れな中曽根外相 「お粗末」答弁で 参院外交委紛糾 アフガン掃討作戦は 武力行使に当たらない (毎日 10月24日 朝刊) |
[概要]23日の参院外交防衛委員会で実質審議入りした新テロ対策特措法改正案は、安全保障に不慣れな中曽根弘文外相の憲法解釈に関する答弁で紛糾した。 発端は米軍などのアフガン掃討作戦について、外相が「武力行使に当たらない」と明言したことで審議が中断した。今まで政府(外務省)の見解は、同作戦はアフガン政府が多国籍軍に治安維持を依頼した形で、国際法上は武力行使ではないが、日本憲法でいう武力行使は制約が多く、「慎重な検討が必要」と断定を避けてきた経緯がある。 外相の答弁を受け、犬塚直史(民主党)が「(憲法の)武力行使でないなら、自衛隊をアフガン本土に出せるのか」と追求。あわてた政府は「憲法では武力行使に当たりうる」(河村建夫官房長官)などと釈明に追われた。 [コメント]この記事を読んで紛糾した理由が理解できず、2度、3度、読み直してやっと理解できた。そして中曽根外相が文教族で安保問題に不慣れで紛糾したのではなく、政府(外務省)の屁理屈的な解釈(軍事常識)に問題があると考えた。これでは勝手にねじ曲げられた憲法が可哀相である。 今のアフガンのカルザイ政権は、アメリカがタリバン後を考えて作り出した傀儡政府である。まず誰でも理解できるこの認識が必要だ。傀儡政府が出来るまでのアフガン戦争(対タリバン)はアメリカ軍の武力行使で、傀儡政府が誕生した後はアフガン政府から依頼された治安維持活動で国際法上は武力行使ではないという”屁理屈”が問題である。外務省はこんな身勝手な屁理屈を述べて、国際的な同意を得られると思っているのか。その身勝手さを憲法のせいにして屁理屈をいう。 これ以上に、外務省のいい加減さを証明できるものはないかも知れない。私が憲法改正を主張するのは、ここまでねじ曲げられた憲法解釈を正す時がきたと思うからだ。これで外務省はアフガン政府から治安活動を依頼されれば、自衛隊のアフガン派遣は出来るという解釈に切り替えようとしている。外務省はアフガンの治安活動は武力行使であるという認識を意図的に否定している。 どうして日本はここまで安全保障政策をねじ曲げてきたのか。それは外務省が自衛隊の役割を米軍追随のための武装組織としか考えてこなかったからである。これから日本は自衛隊の平和的な国際貢献の時代を迎えることになる。もはや外務省の屁理屈は日本の安全保障に有害である。それを正すのは現憲法を改正するしかないまでに追い詰められた。 護憲の人も憲法を壁に貼って、手を合わせて「平和、平和」と念じる時代ではない。憲法の精神を変えることなく改正し、憲法を平和大国のために活用する時代なのである。 |
露、イラン、カタール ガス版OPEC 創設へ 世界埋蔵量6割、連携強化 (産経 10月23日 朝刊) |
[概要]天然ガスの埋蔵量で世界1〜3位のロシア、イラン、カタールの3カ国は21日、石油輸出国機構(OPEC)と同様に、天然ガスの生産量や価格を調整するカルテルを形成することに合意した。3カ国埋蔵量が世界の6割を占め、さらに参加国が広がれば7割以上の埋蔵量を握る可能性がある。ガスを輸入に頼る欧州などが警戒を強めることは必至だ。 3カ国は01年から存在する非公式組織「ガス輸出国フォーラム」(GECF)を常設組織に発展させることを念頭にしてきた。インターファックス通信は来月18日、モスクワで開かれる会合で何かの規約が採択される見通しと報じた。ロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」のミレル社長も、「ガス版OPEC」の表現は避けながら、3カ国が「ガスの探査、採掘、輸送、共同市場調査まで、価格を形成する過程の全体」について緊密に連携する考えを示している。 天然ガスについてはパイプラインを通じた長期的な供給契約が主流で、「ガス版OPEC」の実効性を疑問視する見方がある。しかしカタールのように船舶で輸送可能な液化天然ガスによる供給が増え、中期的にはカルテロ組織が大きな影響力を持つとの見方が強い。 ロシアは06年に、親欧米系政権が誕生した隣国のウクライナに、外交圧力を加えるためにガスの供給を停止したことがある。また、ロシアが結成を目指しているガスのカルテルをめぐっては、06年にNATOで機密文書が明らかになって以来、欧米諸国の強い警戒を招いている。 欧米はロシアを回避する中央アジア産ガスのパイプライン敷設を模索するなどの経緯があり、天然ガス獲得をめぐる駆け引きはいっそう激しさを増しそうだ。 [コメント]「ガス輸出国フォーラム」(GECF)に参加している国はロシア、イラン、カタールを含む16カ国である。この会合が始まった01年には、ガス版OPECではないことを宣言していた。しかし今回のガスプロムのミレル社長の言葉は、欧州の各国では戦闘宣言のように聞こえたはずだ。心底震え上がるのではないか。 ロシアの狙いは天然ガスの供給を調整して価格を上げ、その資金で新たな天然ガス田の開発を行うというガス田開発戦略がある。その成長とともに欧米のロシア依存度は高まっていく。また06年のウクライナのように、反露親欧的な国家にはガス供給を中断して外交圧力に使うこともやる。しかしロシアの石油や天然ガスは、宗教や共産主義のような思想ではない。このエネルギーを使って冷戦のような政治環境を作り出すことはできない。エネルギーの供給と需要を通じて互いが繋がっているだからだ。 私が新冷戦という言葉を嫌うのは、このような世界のエネルギー構造が冷戦のような封じ込めや対立という構造で語ることができないからだ。これは軍事力の限界を越えている。世界は石油や天然ガスを送る側(産油国)と、エネルギーを受ける側(消費国)だけで動いていない。これからはパイプラインや石油(天然ガス運搬船)タンカーを破壊するテロリストや反グローバル化の過激派が存在する。 そればかりではない。世界には宗教や民族、領土や帰属まで、冷戦思考では解決できない問題が山積みされている。私は来月の米大統領選で、マケイン候補では複雑化した世界情勢に対応できないと考えていた。オバマ候補が勝つことはほぼ間違いないが、アメリカは安易に対立を好まず、世界が和解する方向に進んでいくことを期待している。 |
海保、海賊への武器使用 「公海上の攻撃は 合憲」 憲法9条が禁じる 「武力の行使」にあたらない (朝日 10月22日 朝刊) |
[概要]政府は21日の閣議で、海上保安官が公海上で海賊など国籍不明の不審船に武器を使用することについて、「国籍がない船舶の場合、我が国法令上の犯罪を取り締まるための武器使用は、国際法上、問題となることはない。憲法9条が禁じる『武力の行使』にはあたらない」との答弁書を決定した。これは民主党の長島昭久衆院議員の質問主意書に対する答弁。 [コメント]01年に起きた東シナ海の不審船銃撃・自爆事件の時は、ウソでも不審船が中国の国旗を掲げたので、自爆した不審船に海保(※)が行った銃撃では、中国側のクレームが来るかと心配した。しかし不審船を逃走・追跡中に、海保(※)は中国・海上警察に問い合わせ、不審船が中国籍の漁船ではない旨の連絡(確認)を受けていた。 それでも心配であったので、このHPで日本は水深100メートル前後に沈んでいる不審船を引き上げるように提言した。不審船の船内から武器や通信機が見つかれば、海保(※)が中国の漁船を銃撃したのではないことを証明できるからである。また、北朝鮮の関与を証明できるからである。 今ではあの時の海保(※)の行動は、断固とした対応で不審船を取り締まったと称賛されているが、実は公海上で航海の自由を認めている国際法ギリギリの対応だった。あの不審船は日本の領海を侵してはいなかったからだ。 今回の答弁書は、ソマリア沖の海賊やアデン湾の海賊に、海保が取り締まりのために武器を使用しても問題がないというお墨付きになる。海上自衛隊の交戦規定(ROE)よりも、はるかに柔軟に武器の使用が可能になった。海保はこれを機会に真剣にソマリア沖への派遣を検討して欲しい。 また陸自(空自も?)はスーダン南部のPKO活動(10月4日の What New を参照)に部隊派遣を視野に入れて準備が始まると思う。これらは自衛隊、海上保安庁ともに、臨時新法(特措法)制定が必要がない国際貢献である。 次の総選挙で民主党が衆議院の過半数を得て、衆参で与党になっても現実化できる自衛隊の国際貢献策であると思う。 アフガンは国軍の規模拡大に日本が経済支援を行い、タリバンの資金源になっている麻薬(アヘン)撲滅に貢献する方法がある。タイやミャンマー南部にあった”黄金の三角地帯”を潰した同じ方法が使える。 ※海保と書くところを、間違って海自と書いていました。読者の方からメールで厳しく誤字を指摘されました。あわてて訂正しました。すいませんでした。 |
中朝国境が大きく変化 中国、「統一朝鮮」 にらむ 貿易拠点整備 急ピッチ (読売 10月21日 朝刊) |
[概要]中国が改革・開放政策を導入して30年がたった。中国東北部の吉林省、黒竜江省、遼寧省も大きく変化した。北朝鮮、ロシア、韓国を巻き込みながら、変ぼうする国境地帯や沿海部の最新事情を現場から報告する。(特集「変貌東北」 第1回目) 中朝国境を流れる鴨緑江で、夜の闇に包まれる午後7時過ぎに、中国吉林省・長白朝鮮自治県の岸辺から、木とタイヤで作ったいかだに荷物を積んだ二人の男が、水深数十センチの川を対岸の北朝鮮両江道の恵山市に渡っていく。近くを散歩中の男は「中国の朝鮮族住民と北朝鮮兵士の密輸さ」とこともなげに話す。中国側からは食糧や服、家電、ガソリン、化学肥料が運ばれる。北朝鮮からは水産物や漢方薬材、鉱物、時にはニセ煙草などの違法商品が中国に運ばれる。中国の長白地区にはたいした産業がないから、地元の警察も見て見ぬふりをしている。 しかしこの一帯が大きく変化しようとしている。9月8日、恵山市の対岸にある長白朝鮮自治県に地元政府などが5000万元(約7億5000万円)以上を投じて卸売りセンターを建設した。中朝国境で最大規模の商業センターがうたい文句だ。将来は中国と北朝鮮の自由に往来が出来る自由貿易区を設けたいと意気込んでいる。すでに同センターには国内業者100店舗が出店を決定している。「北朝鮮では密輸で儲けた金持ちが生まれている。北朝鮮は国境貿易で最後に残るフロンティア。リスクも大きいが、前途を信じる」(出店する中国人男性)。 急ピッチでインフラ整備が進むのは、韓国マネーを呼び込むと同時に、「将来の『統一朝鮮』をにらんだ中国政府の戦略がある」(外交筋)とみられる。「統一朝鮮」出現後に朝鮮族を中国内につなぎ留めるため、国境地帯に「富」の集積地を作っておこうという狙いだ。 金正日の健康悪化説はこの地域にも広く流れている。金総書記の病気次第で長白の将来が左右される。北朝鮮情勢が依然不透明なことが最大の懸念材料だ。 [コメント]私が初めて海外に出たのは27才の時だった。羽田空港から日航機で北極圏経由の北回りでパリに向かった。私のカメラバッグには3台のカメラがあった。そのうちの一台のニコンFMは質流れの中古を買って、”予備カメラ”兼”帰りの航空券”にするつもりだった。そのころヨーロッパに渡った若い貧乏旅行者の中には、パリの空港に着いた時に、両腕に10個の腕時計をしている者がいた。いずれもSEIKO製の中古品で、スペインやモロッコなどで売れば数ヶ月の旅費を稼ぐことが出来たからである。国境という線で商品を行き来させれば、それくらい稼ぐことは訳ないことだった。まあ規模は小さいが、これは密輸の醍醐味みたいなものだと思っている。 そのような密輸を木とタイヤで作った筏(いかだ)ではなく、国境の拠点に自由交易センターを作って合法的に行えば、莫大な富を生む金の卵の養鶏場になる。北朝鮮は軽工業産業を発展させて、統一後の産業育成を図るだけが安定の方法だけではない。第1次産業と第2次産業を国境交易で交換させて富を得る方法もある。 北朝鮮の閉鎖的な独裁政治さえ変化して、南北が統一して改革・開放すれば、中国東北部の発展に乗じる(貢献)ことができる。これは北朝鮮のチャンスだと思う。 北朝鮮の独裁体制は、戦前の日本の天皇制を真似ている。日本人であれば、その独裁の終わらせ方も見つけることができるのではないか。一見、強固に見える北朝鮮の体制も、強固すぎて脆くなっているという指摘ができる。例えば、もし金正日の後継者に次男の正哲氏を担ぐグループが、警護の甘い中国滞在中の長男正男氏を暗殺すれば、北朝鮮の体制は一気に崩壊するような弱さである。 |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。