京都府木津川市の浄瑠璃寺や奈良県葛城市の当麻(たいま)寺で、アライグマが国宝や重要文化財を傷つけるなどの被害が続出していることが分かった。京都府内の8割の寺社でアライグマの痕跡が確認されたとの調査結果もあり、文化庁が6日、浄瑠璃寺の現地調査に入った。
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浄瑠璃寺では国宝・三重塔内の柱に描かれた天部(てんぶ)像の顔がひっかかれ、天井の一部が破損。重文の薬師如来像も右肩の衣部分の朱色顔料などに傷つけられた跡があった。アライグマは塔の軒下の穴から入り込んだとみられ、文化庁の奥健夫・文化財調査官は「文化財価値にも影響するので被害を防ぐよう管理してほしい」と話した。
一方、当麻寺の国宝・三重塔の西塔では今年5月、足跡が見つかった。同寺中之坊の茶室「九窓席」(重文)では屋根裏を走り回り、天井の数カ所に穴が開いたという。県猟友会葛城支部が6月、境内におりを設け、居着いていた1匹を捕獲した。被害は世界遺産の東大寺(奈良市)や清水寺(京都市)にも及んでいるという。
奈良県森林保全課によると、アライグマの捕獲数は近年急増し、07年度は県内で136匹。関西野生生物研究所(京都市)によると、京都府内では調査した約400寺社の8割で足跡やフンなど痕跡が見つかった。同研究所の川道美枝子代表は「狭くて暗い寺社の天井裏を好んで、すみかとしているのだろう」と分析する。【三野雅弘、山本和良、花澤茂人、谷田朋美】
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