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【社会】

エチゼンクラゲどこへ 北京五輪影響ささやかれる

2008年11月6日 夕刊

無発生が生態系の謎を深めている大型クラゲ

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 例年この時期に各地で大発生する大型クラゲ(エチゼンクラゲ)が今年はまったく姿を見せない。

 被害に苦しむ漁業者は大喜びだが、発生のメカニズムが解明されない中での“神隠し”に、研究者の間ではさまざまな見解が。中国沿岸が発生源とあって、「北京五輪影響説」もささやかれている。

 「今年は魚価の上がる正月商戦まで出漁できる」。福井県越前町漁協の斉藤洋一組合長(64)は胸をなで下ろす。二〇〇二年以降、定置網にクラゲばかりがかかって漁獲高が激減。早期に漁を打ち切る年は「億単位」の損害があったという。

 漁業情報サービスセンター(東京都)によると、近年十、十一月には各地の定置網に毎日一千−三千体のクラゲが揚がっていた。それが今夏以降、国内沿岸では目撃情報も数体にとどまっている。

 大型クラゲは中国と朝鮮半島に挟まれた海域で繁殖、成長して、夏をすぎると対馬海流に乗って日本沿岸にやってくる。魚の乱獲や温暖化が大量発生の要因とみられるが、実害の少ない中国で研究は進まず、日本人研究者が中国海域で調査する環境も整っていない。

 水産総合研究センター日本海区水産研究所(新潟市)の飯泉仁部長は、五輪ヨット会場で藻が大量発生するなど、同海域では例年にはない“異常”が見られたとし「開幕前には大規模な排水規制や建設ラッシュがあった。クラゲの無発生に五輪の影響がないとはいえないのでは」と関連がある可能性を指摘する。

 日中間の定期船上から目視観察を続けている広島大の上真一教授(生物海洋学)は、「夏前の繁殖が極めて少なかったので、何かが起きていると感じた。詳しく調査したいが、あの海域はブラックボックスなので…」と残念がる。

 

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