不運にも感染したら――。
「高熱が出て2日以内にタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬を服用する」のが、考えられる治療法だ。
インドネシアでのH5N1鳥インフルエンザ感染・発病者119人を地元の研究者が調べたところ、発熱後24時間以内にタミフルを服用した人は全員が回復。4日以内だと55%生存で、服用しなかった33人は全員が死亡した。体内のウイルスがまだ少ない段階での服用が生死を分ける。
通常のインフルエンザにかかった10代が、日本でタミフル服用後に異常行動を起こしたとされる「副作用問題」は未解決だ。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「薬の副作用か病気の特性なのか完全に結論は出ていない。インフルエンザそのものでもそうした症状は起こる。新型のように危険性が高いとなれば功罪承知で使うのはやむを得まい」という。
タミフル入手には医師の処方箋(せん)が必要だ。処方箋を求めて患者が殺到すると病院が感染の場となるため、厚生労働省は「発熱したらまず保健所に電話で相談してほしい」。保健所に専用の相談窓口を作るというが、患者が増えたら電話はパンクしそうだ。
国は自治体に、医師が詰める「発熱外来」の設置を促している。詰める医師が十分にいるのかという問題は残るが、自分の町のどこにできるのか流行前に調べておこう。
国の専門家会議委員を務める野口博史・成田赤十字病院第3小児科部長は「緊急時なのだから、カルテがある患者には発熱などの電話確認でタミフルの処方箋をファクス送信するようにしてはどうか」と提案する。法改正が必要だが、処方箋のファクス送信は遠隔地医療では実績がある。
抗インフルエンザ薬は足りるのだろうか。
国の備蓄は全人口の23%。厚労省は与党の提言に沿って45%まで引き上げる。ただしあくまで患者の分で、家族などの予防分は、流行の初期を除くと含まれない。
流行が始まったら、できるだけ早く個人にタミフルを配る仕組みも不可欠だ。しかしそのための具体的なシステムは、まだ確立されていない。