米大統領選挙はオバマ氏の圧勝となった。未曽有の経済危機の中で、「変化」の必要と必然が国民の共感を得た結果だと思われる。緊急な事態を切り抜けるためにも、より根本にさかのぼっての変革が求められる。
経済面ではウォール街を中心に、金融の拡張作用をてことした拡大で世界経済を牽引(けんいん)してきたやり方の破綻(はたん)に対し、もっと実のある生産や販売、またサービスの充実に根をおく経済をめざし、金融とのバランスを正常化する方向だろう。
また富裕層を活性化して経済を拡大することよりは、働く人々の意欲を引き出し、下からのエネルギーを活性化する手綱の引き方に転換する機会でもある。行き過ぎがあれば一転して方向を転換し、いきさつにはこだわらない米国人の長所を考えれば、それは考え得る選択だろう。
しかし、それにしても今回の金融、経済の破綻の底は深い。1929年の大恐慌と比べると、大型の政策を積極的に重ね打ちしたことで底への落ち込みのスピードは緩やかだが、いつ底打ちするかはまだ見えていない。バブルの震源である住宅市況が来年まで下降を続け、ヘッジファンドからの資金の引き揚げも一段と強まる可能性がある。新興国の成長にもブレーキがかかっている。
この中では米国のこれまでの過剰消費の修正が大きな流れとならざるを得ない。それは世界同時不況の厳しさにもつながるのだが、新大統領がこの試練を米国や世界の望ましい未来をつくるために必要なこととして、どう前向きに説得できるかが重要である。
試練は、避けるものではなく、発想やいきさつの大転換によって新しい自分になってゆくための重要な機会だからである。(瞬)