◆妊娠・出産時に脳出血が多いのはなぜ?
なるほドリ 妊娠中の女性が脳出血で亡くなったね。妊娠や出産に関連して亡くなる女性はどのくらいいるの?
記者 日本産科婦人科学会の04年調査では、12万人の妊婦のうち32人が死亡しています。脳出血は4人です。91~92年の国の妊婦死因調査によると、出産時の出血性ショックの38%に続き、脳出血が10%で2番目でした。最新の国の調査では、06年に少なくとも39人が妊娠・出産に関連して脳出血を起こし、7人が死亡しました。
Q 妊娠・出産と脳出血ってどういう関係があるのかな。
A 妊娠中は、おなかの赤ちゃんに酸素や栄養を送るため、お母さん側の血液の量は妊娠前の1・5倍程度に増えます。また出産時には赤ちゃんを外に出してあげるために息みますね。その時に頭に血液が集中して血管に負担がかかることがあるのですよ。
Q 危険を減らすには、どんなことに気を付ければいいの?
A 妊娠前から脳の動脈に異常な膨らみ(動脈瘤(りゅう))があったり、妊娠高血圧症候群になるとリスクが増すと言われています。実際に国の調査では、妊娠・出産に関連して脳出血を起こした39人のうち、26%に妊娠高血圧症候群が認められています。軽い運動と規則正しい生活で、高血圧症候群を予防することが大切です。
Q 妊娠・出産に関連する日本の死亡率は、他の国に比べて高いの? 低いの?
A お産は20世紀半ばに帝王切開の安全性が確立するまでは、女性にとって命の危険を伴うものでした。1900年の日本では、10万人当たり436人の妊婦が死亡しています。同じ時代の英国は10万人当たり450~500人で、日本とあまりかわりません。英国や米国は1940~50年代に急激に死亡率を改善させましたが、日本は大きく遅れました。先進諸国のレベルに追いついたのは90年代に入ってからです。
Q 今はどうなの?
A 世界トップレベルだそうです。高い技術とともに、小規模な地元の病院と大きな病院との連携が、低い死亡率を支えています。ただ、この連携が崩れると、レベルの維持は難しくなってしまうかもしれません。(科学環境部)
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毎日新聞 2008年11月7日 東京朝刊