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2008年11月7日

◎農政・整備局の廃止 やむを得ぬが、先行き不透明

 麻生太郎首相が地方分権改革推進委員会に検討を指示した農水省地方農政局と国交省地 方整備局の廃止は、徹底した行財政改革の必要性と分権改革の理念に従えば、避けようのない大きな流れと言える。麻生首相は次期衆院選もにらんで改革姿勢を示したのであろう。ただ、国の出先機関の統廃合は頑強な官僚機構の骨組みを変えるものであり、首相の政治生命、内閣の存亡をかけるくらいの覚悟とエネルギーがなければ成し得ない大仕事である。政権基盤もしっかりしていないと実行は困難であり、政局の不透明さが分権改革の行く末を見えにくくもしている。

 分権改革推進委は、住民に身近な行政はできる限り自治体に任せ、国と地方の「二重行 政」を解消するなどの観点から国の出先機関見直しの勧告を年末に予定している。それに先立ち、麻生首相が「国民の目の届かない出先機関を目に届くようにしてほしい」と注文したのはもっともである。

 各地域で巨額予算と権限を執行する出先機関は大臣や国会の監視の目が届きにくく、地 域住民からも一歩距離を置いている。そうした状況下で、道路特定財源の無駄遣いや官製談合、汚染米不正流通の見逃しなどが生じた。

 農政局は北陸農政局(金沢市)など全国に七カ所あり、農政事務所を含めて職員は約一 万六千人、予算規模は約一兆千億円。整備局は北陸地方整備局(新潟市)など全国八局で、各県の河川国道事務所などを合わせて職員約二万千人、予算は約八兆円に上る。行財政改革を徹底するには、巨大な出先機関に切り込まざるを得ない。

 全国知事会は業務の地方移管で農政局、整備局の廃止、縮小は可能と主張している。分 権推進の立場から当然であるが、廃止に伴う職員や財源移譲のハードルは高く、権限変更などの法改正や国と地方の業務の仕分けなど気力、体力のいる作業が待っている。それに何より、法改正が国会審議にかかるころ、麻生首相が政権の座にあるのかという問題もある。国の出先機関改革は生半可な決意では実現できない難事業であることを首相は銘記してほしい。

◎金沢に「三つ星」続々 欧米客アップの追い風に

 フランスでミシュランと並んで権威のあるアシェット社の観光ガイドブック「ブルーガ イド」で、石川県内の観光地および観光施設として「金沢」「兼六園」「金沢21世紀美術館」が最高ランクの三つ星を獲得したことは、石川の観光地の質の高さをあらためて裏付ける結果であり、欧米観光客のさらなるアップの追い風にしたい。

 このほか県内からは、二つ星が三カ所、一つ星が九カ所選ばれ、地域紹介のみでランク 付けがなかった富山や福井と比べて、地域全体の観光地としての評価が際立って高いことが分かった。もちろん芸術や文化の香りにあふれた歴史都市を好むフランス人の嗜好が反映された結果とも言えようが、台湾や韓国に加え、欧米からの観光客が順調に伸びている中での安定した高評価は、誘客への力強い後押しと言えよう。

 とりわけ金沢市ではナント市発祥の「ラ・フォル・ジュルネ『熱狂の日』音楽祭」の継 続開催が決まり、パリのルーブル美術館と21世紀美術館の交流提携に道筋がつくなど、芸術によるフランスとの結びつきが、かつてないほど深まっている。そんな時期だけに三つ星効果を大いに生かしたい。

 先のミシュランの評価では、兼六園の三つ星を筆頭に、無印を含め県内三十六カ所がガ イドに掲載された。来春出版される新版に県内からどれだけ記載されるかを探る意味でも、今回のフランス人好みの観光地の評価は参考になる。

 厳格な評価で知られる両ガイドだが、今回特に「金沢」というエリアに対して三つ星評 価を得たことも誇れるだろう。金沢市は、同じく三つ星に輝いた高山や萩などの各市とともに、歴史まちづくり法による「歴史都市」認定の第一号をめざしているが、欧米教養層へのインパクトを強める意味でも、分厚い歴史遺産を軸に、三つ星の風格を磨き上げていきたい。

 ブルーガイド 1826年創業の世界最大の出版社・アシェット社が発行。旅先の文化 や歴史に関する記載が豊富で、フランスの市場をミシュランと二分するガイドとして定評がある。


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