「もう、目が離せんなぁ」。よちよち歩きの娘を抱いて妻とため息をついた。
先日、一瞬よそ見をしたときのこと。どこで見つけたのか針金のハンガーをくわえている。そして、前のめりにドスン。泣き声にほっとしたのもつかの間、口から真っ赤な血がたらり…。その前は、絆創膏(ばんそうこう)を丸め、そのままゴクッ。途端にゴホゴホ、ウグッ―。
夜間の発熱も一度や二度でない。見ている方は、いつもあたふたするばかり。休日や夜間、軽症なのに救急外来に飛び込む「コンビニ受診」だけは控えようと思うのだが、ついつい「診てもらえる病院はあるだろうか」と気をもんでしまう。
それだけに、昨今の医師不足を伝えるニュースは気掛かりだ。本紙「くらし面」でも掲載してきたが、地方の病院は医師の引き揚げに頭を抱え、都市部といえども産科、小児科、麻酔科、外科などの医師不足を訴える医療機関が少なくない。
かつて赴任した中山間地では、小児科医不足に悲鳴を上げるお父さん、お母さんを取材した。吹雪の中、けがや病気のわが子を車に乗せ、六十キロ以上離れた岡山県南や鳥取県の病院に向かった人、故郷を捨てて医療機関の多い地域に引っ越した人など、厳しい現状を目の当たりにした。
もちろん、現場の医師は多くの場合、責任感に支えられ、過酷な勤務を懸命にこなしている。これもまた真実だ。
どこに住んでいても安心して医療を受けられる国であってほしい。子どもたちのためにも、そのことを切に願う。
(文化家庭部・赤井康浩)