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本音対談
我、「国賊」と名指しされ−−
防衛大臣としての真意を語ろう(9)

「WiLL」6月号渡辺論文で批判された歴史観、対中観の問題を直撃!

評論家 潮 匡人/防衛大臣・衆議院議員 石波 茂

日本の安全保障では決して譲歩しない

 石破 潮さんの感化を受けたわけではないが、艦船や飛行機や戦車などの主要装備が、その国の防衛に対する考え方を如実に語っていると思う。兵器は嘘を言わない、数字も嘘を言わない。実務者として装備のハード面でも運用のソフト面でも、議論を譲ったことは一度もない。中国の装備を見せられても、私には展示用だと分かる。「あれを見せてほしい」と注文して「そんなものは存在しない」と言われたら、敢然と食い下がる。日本の平和と安全で妥協したことは一度もありません。中国に媚びているつもりもないし、「いい子ちゃん」ぶっているつもりもないんです。

 以前、防衛庁長官として中国に行って、唐家●(●=王へんに旋)国務委員や温家宝総理とも議論しました。ミサイル防衛やイラク派遣、有事法制の三点で大議論になった。有事法制やイラク派遣の正当性も、ミサイル防衛の必要性も、私は当然一歩も譲ったつもりはありません。もし、そこで「中国のご指摘はごもっとも」なんて言うなら、それこそ「国賊」でしょう。

  渡部先生は「WiLL」でカントの『啓蒙とは何か』に敷衍し「公」と「私」の境界を指摘されました。公職の防衛大臣として振る舞うべき責任があり、その中に自分の感情や個人的な歴史認識を持ち込むべきではないとのご批判でした。その点、歴代問題閣僚が多数いた中、拉致議連会長から颯爽と登場された石破大臣に対する世論の高い期待もあり、それが裏切られたという気持ちが一部世論の反発を招いていると感じます。

 石破 そういう御指摘もあるでしょうが、それなら「論座」が出た時に、そういう反応があってもよかったわけですよね。

  そこは同感です。

 石破 まあ、「WiLL」の読者はまず「論座」なんて読まないでしょうからね。遅かれ早かれ、こんな批判が来ることは予想していましたが、反対の立場の論説をきちんと読むことは大切ですよ。私は以前の防衛庁長官在任中から、「赤旗」や「前衛」を注意して読むよう心がけています。反対の立場からは物事がどう見え、どんな論理が展開されるのかを知らなければ、こちらの論理も精緻なものにならない。それにしても、ただ声高に「愛国」を叫ぶことにはどうしても違和感を拭えませんね。祖国を、国旗を、国歌を、そして御皇室を敬い、尊ぶ、そうした静かな「形」が大事だと思う。それをきちんとやらずして何が愛国か。さらに言えば、いい面も悪い面も直視し、両方受け入れるのが「愛」なのであって、そうでなければこれはもう「ラブイズブラインド」の世界ですよ。右も左もその部分でブレているのが怖い。

 保守の重鎮たる方からは国賊と呼ばれ、憲法絶対擁護派の「九条の会」からは危険思想の持ち主と批判される。「左にいると真ん中も右に見える」とはよく言ったものですが、その逆もまた真理です。両極端の議論は常にあるのでしょうが、どちらもその世界にどっぷり漬かって相手の主張に聞く耳を全く持たないのは如何なものか。そんな人に限って、時代が変わると一八〇度変節した例が、過去に多くありました。渡部先生のご批判は真摯に甘受しますが、私はこの国を誇りに思い、御皇室を崇敬しており、常に、その立場から発言したつもりです。祖国を貶める意図は微塵もない。

  以前の本誌対談でも申し上げましたが、政治改革論議の最中、若手ホープだった石破代議士の発言に感銘を受けたことを今でも鮮やかに覚えています。産経新聞の連載コラム「断」に書いたように、福田内閣の閣僚就任会見で、国旗に正しく敬礼された数少ない閣僚でもあられます。公言されませんが、三島由紀夫の「檄文」と行動を真摯に受け止める稀有の政治家と推察しております。

 本日は非礼を顧みず苦言も呈しましたが、同時に私は、先生のような政治家や、いわんや御皇族を、左派はいざ知らず、わが陣営が血祭りに挙げる風潮にも疑問を覚えます。おそらく石破さんの核心的な側面が読者に伝わっていないのでしょう。それどころか、リベラル左派陣営の「論座」で語られたりする。ぜひこれを機会に、今後とも石破茂の“右側”や「保守」の側面も、積極的に発信してください。

 石破 ならば最後に、私からもお願いさせてください。最近の保守系論壇誌は、毎号「反中」の嵐で、自衛隊の海外派遣に関する「一般法(恒久法)」の議論や国連の本質論をほとんど載せません。中国問題や東京裁判史観の問題も大事でしょうが、今喫緊の課題として、最大野党の党首(小沢一郎氏)が、月刊「世界」(岩波書店)で自衛隊のインド洋における補給活動を「憲法違反」と断じ、継続に反対している。「国連中心主義」どころか「国連絶対主義」を掲げ、自衛隊の海外派遣を国連決議に委ねるべきと主張している。ならば、米、英、仏、露、中の常任理事国が拒否権を行使したら、日本はどんなに国益上必要でも自衛隊を一切海外に出さないのか。そんなもの、主権国家ではありませんよ。潮さんは小沢論文を批判されましたが、洪水のような「反中論文」に比べれば、その量たるや何十分の一です。この国の将来を考え、今必要な施策は何かという本質的な議論がほとんど見られない。本当にそれでいいのか。保守陣営の方々にもお考えいただきたい。本誌にも、静かに深く掘り下げた本物の「正論」を期待します。

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