
本音対談 我、「国賊」と名指しされ−−
■防衛大臣としての真意を語ろう(7)
「WiLL」6月号渡辺論文で批判された歴史観、対中観の問題を直撃!
評論家 潮 匡人/防衛大臣・衆議院議員 石波 茂
何を、どこまで認めるべきか
潮 私は石破先生を個人的にもよく存じ上げているつもりです。今おっしゃったことも、人間・石破茂の稀有なまでに誠実な人柄と、敬虔な信仰に支えられた信念と理解しておりますので、これ以上、平行線を辿らざるを得ない議論は控えます。ただ、渡部先生も指摘された個々の論点について、そもそも違法行為の事実がないのに、あったと認めたり、詫びたりするのは、まったく別次元の議論だと思います。
石破 それはもちろん、そうです。
潮 そこで指摘されたのが「南京大虐殺」問題です。改めて本誌読者にも御説明いただきたいのですが、私はこう考えます。問題は数ではない。いわゆる便衣兵などを日本軍が組織的に処断したことは事実であり、それすら否定する人は勉強不足なのでしょう。要は、処断が国際法上違法だったかに尽きる。私は国際法上、違法ではなかったと考えます。処断が国内法の手続きを踏んでいないという指摘はあります。民間人を便衣兵と間違えて処断した可能性も否定できない。あれだけの数を処断した以上、そういうこともあったでしょう。だからといって「大虐殺があった」ことにはならない。しかも、相手当事国のメディアに対するインタビューです。
石破 少なくとも捕虜の処理の仕方を間違えたことは事実でしょう。軍紀・軍律も乱れていた。松井石根は刑死直前に教誨師に対して、当時の師団長クラスの堕落ぶりを痛切に指摘していますし、南京で何が起こったか、民間人の犠牲がどれぐらいあったのかを客観的に検証することも必要です。
潮 たしかに、略奪や婦女子を含めて民間人に対する暴行は、日本軍の記録にもあります。それすら否定する人も勉強不足でしょう。他方、そうした記録が残っていること自体、略奪や暴行が放置されていなかった証左でもある。「戦争なんだから、その程度のことはある」と、相手当事国から開き直りと受け取られる発言を、国務大臣がすべきとは思いませんが−−実はそう思っているのですが−−、逆に、その程度のことで「南京大虐殺があった」というのも……。
石破 「大虐殺」があったとは言ってないよ。
潮 ですが、そう相手に受け取られる対応も、事実関係で日中間の認識に隔たりがある以上、国益の擁護者として慎重であるべきではなかったかと。
石破 私も例えば、抗日記念館の類の展示内容に一部疑問も覚えます。きちんとした歴史の検証は必要でしょう。だからこそ、その際に「大虐殺はなかった」とか「狭義の強制性はなかった」と言うことで、どんな国益が得られるのか。逆に、そう思うんですね。
潮 後者の「従軍慰安婦」問題も、大臣の表現は、中国ないし朝鮮半島寄りではないでしょうか。ここも要は、軍の関与を否定している人はいないと思います、単なる関与ではなく、「狭義の強制性」に関する事実関係の議論でしょう。例えば論争に終止符を打つべく、平成九年三月三十一日付朝日新聞が大検証記事を載せましたが、結局「強制的に慰安婦にしたことを示す資料はみつかっていない」と認めたに等しい。にもかかわらず、朝日は「『強制』を『強制連行』に限定する理由はない」と論点を摩り替え、強弁を繰り返しています。
石破 私は「狭義の強制性があった」などとは一度も言っていません。
続く
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