田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長が政府の歴史認識に反する論文を公表した問題で、発覚当日に浜田靖一防衛相が行った事実上の辞職勧告を、田母神氏が拒否していたことが4日、わかった。このため防衛省は田母神氏を先月31日付で空幕長から更迭。3日後に定年退職させたが、田母神氏が浜田防衛相の辞職勧告を拒否したことに対し、政治家が自衛隊を統括する文民統制(シビリアンコントロール)の観点から問題視する声が出ている。
関係者によると、論文が公表された31日夜、浜田防衛相は田母神氏に電話で「空幕長としてこの内容は問題だ。お辞めになったらどうか」と自発的に辞職するよう促した。しかし田母神氏は「信念に基づいて書いた。辞表は出さない」と拒否したという。
これを受けて同省内では一時、懲戒処分も検討されたが、自衛隊法に該当する規定が見あたらず、田母神氏を同日にいったん空幕長から航空幕僚監部付に更迭した。さらにその後も辞職の手続きに応じなかったとして、今月3日に定年退職させる「強制措置」を取った。
一方、田母神氏は同日の記者会見で「私は防衛相の決定に従って辞める。シビリアンコントロールに服している」と強調した。【松尾良】
毎日新聞 2008年11月5日 東京朝刊