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本音対談
我、「国賊」と名指しされ−−
防衛大臣としての真意を語ろう(2)

「WiLL」6月号渡辺論文で批判された歴史観、対中観の問題を直撃!

評論家 潮 匡人/防衛大臣・衆議院議員 石波 茂

「石破事務所からの回答」を質す

  実は、私の歴史認識は渡部先生と基本的に変わりません。ただ、「論座」のインタビュー記事の石破発言と、今回「WiLL」が問題にした発言の間には大して距離がない。にもかかわらず、「論座」に触れず、中国メディアの記事を断片的に取り上げた。なぜ、あの名物編集長が「論座」発言を看過したのか不思議に思いました。もちろん当事者として御意見がおありでしょう。

 石破 マスコミ報道全般に通じる話でしょうが、インタビュー記事は最初から最後まで読まないと意図や脈絡がわかりません。今回の中国「世界新聞報」インタビューも、私の発言をすべて聞いていただければ、それほど違和感を持たれずに済んだのではと思います。翻訳というバイアスのかかった記事中の発言の一部分を切り取って「こんなこと言っている」と批判するのは、論壇誌としてフェアだと思いません。失言問題などで政治家がよく「一部だけ報道するな。全部聞いてもらえばわかる」と反論しますが、それは一部を切り取られる言い方をしたほうが悪いのでしょう。ただ、時間や文字量に制限のあるテレビ報道や新聞記事ではなく、オピニオン誌である以上、全体の論旨を踏まえた上で、論理的に批判・検証すべきではないでしょうか。

  私も、最近の「WiLL」を代表格とするマスコミの煽情的な皇室バッシングに疑問を感じておりますが、同時に、「WiLL」に載った「石破事務所からの回答」も、言わば「木で鼻をくくった」素っ気ない回答のように感じました。たとえば「インタビューを先方が記事にまとめたものですので、事実に即してないというほどではありませんが、事実そのままでもありません」との回答も、次の回答が「前の答えの通り」で始まっていることも、突き放された印象を受けます。よく「紙面で述べたとおりです」との回答に終始する朝日新聞の姿勢を思い出しました。

 事実は、右の「回答」通りだとしても、影響力のある媒体で重鎮が提起された疑問に対する答えとしては、やはり丁寧さに欠けるのではないでしょうか。「WiLL」編集部がそう見せた結果かもしれませんが。

 石破 そもそも、この文書で突然来た「質問」というのは、編集部からのもので渡部先生の名前はどこにもなかったのです。どこで何に使うかも全く明らかにしない唐突な紙一枚の「質問」には、この程度しか答えようがありません。

 また正直、私も話したことを全部覚えているわけでも、録音したわけでもない。ですから、私の話を中国語に訳した上で日本語に訳された文章を読み返して、全て事実その通りかと言えば、決してそうではない。ただ、大きく捻じ曲げたかと言えば、そう。そう申し上げたかったのです。ならば事実と反する部分を、なぜ抗議しないのかとも責められていますが、そこも正直、一々抗議していたら、どんなに時間があっても足りません。またお叱りを受けるかもしれませんが、今回は抗議するほどのことではなかった、そう判断しています。

 その理由として、相手が中国メディアだという背景もあります。「WiLL」では「中国共産党系の新聞」と書かれましたが、中国を治めることが、どれほど大変か、もっと日本人は考えるべきでしょう。十四もの国と国境を接し、日本の十倍以上の国民と多くの少数民族を抱える国を統治することがどれほど難しいことか。共産党一党独裁も、人民解放軍が国民のものではなく党のものであるという考え方も、我々とは大きく異なっているが、そうでもしなければあの国を統治することは困難なのではないか。マルクス・レーニン主義が光を失う時代にあって、共産主義国家に本来あってはならない貧富の差が拡大している中、反日・愛国がそれに取って代わることや、軍事膨張路線に走ることは、なんとしても避けなくてはならない。一党独裁で資本主義経済を動かすことは世界史上ほとんど例がなく、何が起こるか予測することは困難ですが、もし今「民主化」が行われれば、一夜にして百以上の政党が生まれ、大混乱に陥るのは必定といわれています。核保有国がそのような事態に陥ることが、わが国の安全保障にどんな影響をもたらすのか、防衛大臣として考えざるを得ません。今回の中国の記事は、むしろ逆に中国国内の「右翼」から「なぜ日本の防衛大臣を好意的に紹介するのか」との激しい反発を招く危険もあったと思います。中国側も、そのギリギリの線まで詰めた結果なのかもしれませんし、仮に「中国共産党系」であるならなおさら、中国の国益のために良好な対日関係の維持を図った配慮の産物であるようにも思います。

 続く

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