江戸川乱歩作品の初歌舞伎化である「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)-明智小五郎と人間豹(ひょう)」が松本幸四郎=写真右、市川染五郎親子の主演により、東京・国立劇場で上演されている。
乱歩の「人間豹」を岩豪友樹子が脚本化し、幸四郎自身が九代琴松の名で演出を担当した。
原作では、カフェの女性やレビューの踊り子らを次々と手にかけるヒョウのような猟奇殺人鬼を、明智小五郎が追う。その舞台を江戸時代に置き換え、同心の設定になった明智を幸四郎が演じている。染五郎は人間豹の恩田乱学と、人間豹に恋人を殺される神谷芳之助の2役。
「岩豪さんが見事に歌舞伎劇に仕立て上げてくれました。演出家としても洋楽などを一切使わず、音、扮装(ふんそう)などすべて“歌舞伎”にこだわりました。平成の歌舞伎芝居になれば」と幸四郎。
染五郎にとっては、10年以上前に原作を読んでから「歌舞伎化を」と温めてきた企画だ。「主人公、思い人、敵役がいて、明智がいる。歌舞伎にするのにふさわしいと思いました。夢がかない、感慨深いものがあります。乱歩らしいモダンな歌舞伎を目指して、演じています」
大だこに乗っての宙乗りも披露する。市川高麗蔵、市川春猿らの共演。26日まで。問い合わせは0570・07・9900へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年11月6日 東京夕刊