2007-05-07 傍証検証
昨日のエントリーの補足です。
これまでは漠然と遺族は報道前に全カルテを入手していたと考えていました。全カルテを入手し検討したうえで報道されたと考えるのが自然であるからです。ところがそうでないとの公式発言がなされています。今年の4/28に大阪であったその筋には高名な方々が集まったシンポジウムが開かれ、そこでカルテ告訴報道に名を連ねられている弁護士も出席し発言されておられます。その貴重なライブ記録を文字で起しておられるのが日々のたわごと・期間限定特別ブログでその中の核心部分、そのいちに弁護士のカルテについての発言があります。
『患者さんの家族はカルテを入手してマスコミに公表してるらしいから、俺たちも公表して良いだろう』ということを書いてあるんですが、あのー、高崎さんの話でまぁ、あったかもわかりませんが、患者さんたちが入手したカルテはほんの一部なんです。全部を入手したのはごくごく最近、なんですよね。
弁護士発言の「カルテの一部」と「全部を入手したのはごくごく最近」の解釈ですが、カルテの一部とは看護記録を指すのが妥当でしょうし、「ごくごく最近」とは半年前の報道時には入手していなかったと考えるのが自然です。そうなると2つの事実が弁護士発言より確認できます。
- 去年の報道時には遺族でさえ医師記録部分を入手しておらず、持っていたのは看護記録だけであった。
- 遺族が医師記録部分も含めてカルテ全体を入手したのは早くとも今年に入ってからであった。
そうであれば報道直後に行なわれた記者会見で遺族が報道陣に公開したのは、遺族がその当時に入手していた看護記録だけであったの主張と辻褄が合います。なぜ遺族が看護記録だけしか入手していなかったかについての憶測はいろいろあるようですが、これは遺族及び遺族側弁護士が明言している事ですから、嘘があるとは思えません。記者会見を開いて告訴まで検討するとした上の主張ですから、この事実を疑ってはならないかと思います。
そうなれば正式ルートでは看護記録以外のカルテを入手する事は不可能となります。昨日のカルテ画像についても遺族が医師記録の一部だけを限定して読売新聞に提供したのではないかの説がありましたが、遺族が医師記録部分を入手したのが「ごくごく最近」と代理人である弁護士が明言しているからには、そんな事は物理的にありえない事になります。またこれは昨日のエントリーに重複しますが、遺族にはベテランどころでない看護師がおられる事も周知の事実であり、看護記録と医師記録を混同する事もまた絶対にありえない事になります。
そうなると読売新聞が2006.10.31に大阪朝刊で鮮明な画像として報道した医師記録は当時正式には絶対に入手できない物となります。この時点で読売新聞が医師記録部分を入手できるわけがないからです。ましてや所持していない「家族からの提供」などありえるはずのない事実となります。読売新聞が虚偽の報道をした事はここに完全に証明される事になります。悲しみに打ちひしがれている遺族の心を踏みにじる鬼畜の行為と考えます。
読売新聞が不正に入手したルートについては謎です。当時公式に全カルテを入手していたのは立件を視野に入れて操作を行なっていた警察です。yamada様からの情報ですが、
2月2日の毎日新聞から>県警は任意で提出されたカルテなどを基に専門家約20人に意見を求めた
これだけの情報でいつ警察が全カルテを入手したかがわかりません。また警察の捜査によるものですから、証拠の保全は厳しいかと思います。10/17に報道の一報が行われ、10/31に読売が報道しているのですから、警察ルートの可能性はどれだけ高いかは確実な事は言えないかと思います。またそんなに簡単に警察からマスコミに証拠物件が流出したならば警察として大問題かと思います。
事実関係から読売新聞が不正を働いたのは隠しようも無い事です。強いて疑うならば家族及び弁護士が虚偽の主張を行なった場合のみになりますが、親族の死亡と言う悲痛な境遇にあるのに、これだけ見え透いた嘘をつく必然性に乏しいかと考えます。
読売新聞に改めて釈明を要求します。
奈良の妊婦死亡 大淀病院を捜査
奈良県大淀町立大淀病院で8月、出産の際に意識不明になった○○○○さん(当時32歳)が相次いで転院を断られ、搬送先の病院で死亡した問題で、同県警は大淀病院から高崎さんのカルテの任意提出を受けるなど、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。病院側は、出産直前の診断に判断ミスがあったと認めており、県警は主治医や看護師から当時の状況を聞く。当初、同病院は転院を断られたのは18病院としていたが、その後の調査で19とわかった。
同病院によると、○○さんは8月8日、出産のため入院していた同病院で頭痛を訴え、意識不明になった。産科医は妊娠中毒症による発作と診断、嘔吐(おうと)など脳内出血の症状がみられたにもかかわらず、コンピューター断層撮影法(CT)を行わなかったという。
(読売新聞、2006年10月19日)
また父ルートからです。ヒマやなあ>父
ソース
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/10/post_d6f6_3.html
10/18付産経新聞奈良版によるとご遺族がカルテ開示を受けたのは9/21でした。
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妊婦死亡「誤診以前の問題」 病院になお不信感
「妻の命をもっと大切にしてほしかった」。大淀町立大淀病院で8月、分娩(ぶんべん)中に脳内出血のため意識不明となった女性が、18病院から満床で受け入れを拒否された末、大阪府内の搬送先病院で男児を出産後に死亡した問題。女性の家族は「もっと違った対応があったはずで、誤診以前の問題だ」と、大淀病院に対する憤りをあらわにした。病院側も当日の判断ミスを認めたが、家族は深い悲しみと、病院側に対する不信感をなおつのらせている。
(略)
遺族は9月21日、カルテの開示を求めたが、その結果、実香さんが意識不明になった後、産科医が仮眠室で休憩していたことも判明した。
(以下略)
(10/18 01:03)
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御高説をぶったぎって大変恐縮なんですが、
>この事実を疑ってはならないかと思います
先生、、、人が善すぎませんか?
一方こういったカルテなどの情報の漏洩に関して刑事事件として司直の手が入るのでしょうか?ご家族の怒りの矛先が新聞社に向かうのでしょうか?告訴されてもおかしくない案件ですよ。真実を明らかにされたいのであれば。
この新聞社は本件に関して 全く沈黙されてますな。
わかって欲しいのですが、昨日からのエントリーはそれを大前提として書いています。ここで他の見解を自由に論議していただいて結構ですし、むしろ望んでいますが、私の論はあくまでも「遺族は正しい」にしています。なぜそうしているかは察して頂きたいと思います。
遺族側が、あの時点で医師の書く部分も含めた全ての診療録を持っていたのかどうかは分かりませんが、持っていなかったという主張しているんだから、そうだとしておいてあげましょうよ。
となると、診療情報を不正に入手し、それを新聞に載せるなどという漏洩をしたのは読売だけということになる。
遺族側は読売新聞をこそ告訴すべきだ。
今日は私もヒマなので。
<読売の写真>
8.8 0” AM
headache (+) 発汗↑ BP 155/84 脱水ぎみ →生食水 500ml iv
nausea → vomitting (+) → プリンペラン 1A iv
0”14’
意識消失 (+) しかし BP good SpO2 97% resp good→内科Dr診察依頼 → 既往不明だがヒステリー発作etcも考→ Vital良し 経過観察
1”37’AM
BP↑ 強直性ケイレン? eclampsia? → MgSO4 iv → MgSO4 20ml/hr
奈良医大へtel (△△Drへ)母体搬送依頼す 奈良医大満床にて他をさがす
三上藤花さまが提供された「遺族提供の看護記録に基づく経過(注:なぜコピーでないのでしょうか)」と読売の記事、画像が出そろいましたので、関連部分を比較することには異議があると思います。
<遺族提供の看護記録に基づく経過>
8月8日
0:00
頭痛あり こめかみ痛いと訴える BP155/84mmHg P74/分 Drに報告 生食500ml指示あり施行する
0:10
胃液嘔吐 膿盆に1/2あり 再度報告 プリンペラン 1A たまに応答に開眼する
0:14
突然意識消失 応答に返事なし SpO2 97% 自動血圧計装着 ○○医師呼ぶ BP147/73 痛覚刺激あり 内科医師診察 失神でしょう ナプキン(大)尿失禁あり バイタル安定
1:37
BP 175/89mmHg 水銀BP200/100 SpO2 97% 痙攣様発作あり ○○医師にコールする いびき 強直性の痙攣
1:50
内科医を呼ぶ バイトブロック入れる 吸引する FHR130
2:00
SpO2 97% けいれん発作なし R26/分 瞳孔開大 FHR128 BP144/71 P96 バルン挿入
<読売新聞10/31>
0:00 頭痛。「こめかみが痛い」。血圧155/84
0:10 胃液を嘔吐
0:14 突然の意識消失。血圧147/73、尿失禁
内科医も呼ぶが「失神でしょう」
1:37 強直性けいれん、いびき。水銀血圧計で
は200/100。主治医は子癇を疑い、けいれ
んを抑えるマグネゾールの投与を開始
1:50 県立医大に「子癇の患者がいる」と転院
要請。内科医がCT撮影を提案するが、
主治医は「動かさないほうがいい」
2:00 瞳孔拡大。血圧148/75
まず、読売の画像と遺族提供の看護記録に基づく経過は明らかに違うということが改めて確認できます。画像は医師記録である可能性はますます強まったといえます。
読売の記事ですが、「診療記録から」と書いてありますが、「胃液を嘔吐」「水銀血圧計では」という部分から考えて医師記録だけでなく看護記録も参照していることが分かります。つまり「診療記録=医師記録+看護記録」という解釈でいいのでしょう。
引っかかるのは「主治医は子癇を疑い、けいれんを抑えるマグネゾールの投与を開始」の一文です。看護記録に基づく経過にはこの一節がありません。医師記録と思われる画像には「eclampsia?」の記載がありこれが「子癇を疑い」に対応すると思われます。あと画像には「MgSO4」という薬剤の一般名がありますがこれが商品名の「マグネゾール」となっています。看護記録には医師の指示簿や投薬のチャートなどもあるでしょうからそちらを参考にしたのかも知れません。
1:50に県立医大に要請をし、内科医がCT撮影を提案するが、主治医は「動かさないほうがいい」と言ったとなっていますが、これは看護記録に基づく経過では「記録外」として扱われています。おそらく遺族の証言に基づくものだと思われます。ただ看護記録に基づく経過にも時間は書いてありません。県立医大などへの取材で時間を把握した可能性はあります。
私にとって最大の疑問は「2:00 瞳孔拡大。血圧148/75」の一文です。看護記録に基づく経過には「BP144/71」とあり、数字に食い違いがあります。実は血圧に関しては読売記事は看護記録を忠実に参照していますがここだけ違っています。看護記録に基づく経過の他の部分を見ても血圧148/75に相当する記述はありません。
看護記録に基づく経過には0:14に自動血圧計装着とあります。恐らくカフを装着しておけば5分おきくらいに自動的に空気の入る物だと思われます。動脈ラインを取っていれば持続計測できますからそれかも知れませんが分かりません。
そこで私の頭の中で一枚の想像画が描けました。読売の記者は水銀血圧計の記述までは看護記録を元に記事に書いていた。ところが「子癇の疑い」から医師記録を元に記事を書き出した。ところが2:00に看護師が記録した血圧の記録と医師の記録した血圧の記録が違っていた。看護師と医師が記録する間に自動計測が始まってしまい、前後で数字が違ってしまったのではないかと考えます。つまり血圧148/75というのは医師の記録ではないかというのが私の想像です。一部の方々から「読売は遺族から都合のいい部分だけ切り取った医師記録を写真に写したのではないか」というご指摘がありましたが、以上の理由から、読売は写真の部分以外の医師記録も入手していたのではないかという疑問が頭から離れないのです。
重箱の隅をつつくような話ですがいかがでしょうか。
関連部分を比較することには「異議」があると思います。→「意義」です。
あとコピペのミスで多少前後が逆になってしまいました。すいませんが脳内修正をお願いします。
本当は国試の勉強をしないといけないのでヒマでもなんでもありません。逃避です。
(1)
三上藤花さまの「看護記録に基づく経過」
http://symposium.b-r.under.jp/?eid=550631#sequel
0:25 BP148/69mmHg SpO2 97-98% 「FHR133」
0:30 BP156/71mmHg 顔色良 「呼びかけに対し、眠り応答なし 顔色良」
0:40 CTG装着 FHR150-160/分
1:00 BP152/84mmHg SpO2 97-98% 応答に対し返事なし 呼吸平静 陣痛発作時、四肢動かす 顔をしかめたりする
1:30 CTG良 FHR130ベースライン
iori3様blogの看護記録と思われる画像(ABC)
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/05/481022yosyan_dc24.html
BP148/69mmHg SpO2 97-98%
BP156/71mmHg 顔色良
CTG装着 FHR150-160/分
BP152/84mmHg SpO2 97-98% P74/分
応答に対し返事なし 呼吸平静
陣痛発作時、四肢動かす 顔をしかめたりする
CTG良 FHR130ベースライン
「呼びかけに対し、眠り応答なし 顔色良」
「」の部分がずれています。
(2)あとiori3様blogのKTVの画像は不鮮明ですが、何とか読めます。右上の一番上の行で「痛い痛いと」と読める箇所があり、
これは「看護記録に基づく経過」の
>21:40 (略)血性帯下あり 痛い痛いとPt
に対応すると思われます。
その下ですが、「看護記録に基づく経過」では
>22:00 5% TZ500ml ルートキープ(略)
となっていますが、これはKTVの画像からは上から3行目にそれらしい記載がかろうじて読めます。
つまり、1行飛んでいます。
(1)は単なるコピペのミスかも知れません。看護記録を全部記載していたら煩雑になるかも知れません。でも(1)は時間にしたら
30分も違うわけですし、(2)にしてもたとえ大筋に違いなくとも元の資料を公開しないまま省略されたのでは恣意的な操作と
受け取られても反論できないと思います。不要な邪推をされないためにも、遺族側からは是非とも看護記録のコピーを
そのまま公開していただきたいものです。
ところで、開業医と、新聞記者・ジャーナリストは商売も盛んだそうですな。「この記事、dd日までにYY円で、買ってくれへんか?」「えー、嫌てか。ほなら、ただで医院の広告記事を載せたるわ」。日本経済の発展のために貢献しているわけですね。ただの信用度0%の噂ですので信用しないで下さい。
しかし、自称「医療の読売」というだけ合って、読売の医療記事のレベルの高さには涙が出る。おかげでとるの止めちゃったけど、「あなたもセカンドオピニオン先で治療を受けて幸せになろう」特集が組まれたときは衝撃だった。去年の今頃だっけ。「日本の医療は世界の三流」は読んだ瞬間にぶち切れてその場で解約したけど。去年の4月2日だったかの某新聞。今は、レベル「5」の私なので、新聞も、昔なら川口探検隊シリーズ、今なら「あるある」を見るつもりで読めばいいわけです。
意外といけると思ったのが日経新聞の医療記事。この新聞は経済以外はいい記事が多い。特に国の各種補助制度や控除・助成など、読んでてこんな制度があったなんて知らなかったというのに出くわす。さすがに経済新聞、経済記事以外は買いです。
ところでVISTA、メモリ2GBで快適なんて嘘もいいところ。アプリの互換性が超低いから(しかもエーこれが駄目なの、というのも多い)、今までのソフトやハードを使おうとすると仮想マシンソフト(Virtual PC 2007など)を立ち上げざるをえず、そこにXPをぶち込んでメモリを割り当てるとVISTAが使えるメモリが減り不安定化する。しかしVISTA 32Bit版では3.2GBまでしか認識してくれず、64Bit版をインスコするとメモリ制限は事実上なくなるものの、署名付きドライバのVISTA対応版が無いとハードウェアが使えず(内蔵だけでなく、USBも!)、署名は「会社」が買わなければならず、個人で有志のフリーのドライバ開発は途絶えるだろうな。今はユーザー数の少ない64Bit版でそうしておいて、そのうち32Bit版も署名つきドライバ必須となるんだろうな。WEの年収1000万から下げていくのと同じやり方。どこまで駄目なOSなんだ。十分な環境が整えばXPよりかなり使いやすいんだけどね、根本的な考え方が腐さっとる。MSが成功してMacが落ちぶれていった原因をゲイツは認識していたけど、ゲイツが辞めた後の執行部は知らないらしい。Visual Studioを無料配布するあたりを見ると、まだ分かっている連中が少しは生き残っているのかな。
初期の段階で、遺族からカルテ開示請求があったとき、本当に、病院側が診療記録一式を、遺族にコピーを渡しておかなかったとしたら、病院側の手落ちになる。何故なら、全てを渡して入れば、遺族や代理人が、たとえ選択的に看護記録のみをマスメディアに公表していたとしても、遺族が公表したことによって関連部分のプライバシーは破棄されたと判断できる。そうなると、病院側だけでなく、第三者の同業者もプライバシー破棄された公開情報を元に、つまり医師カルテも含めて、公に反論することが許される。勿論このことと読売の不正情報入手は別問題。
石川弁護士が、刑法134条でなく、個人情報保護条例違反で対抗してきているのは、何かウラがある。
F8法を使うと、署名なしドライバでもいけるのだけど、アクセス不可能となるファイルが急増する。つまりHD-DVDやBlu Rayディスクや、DRM管理されたファイルからHDMI出力までいかなる手段を用いてもデータに触れる事ができない経路がVISTAには仕組まれており、それを守るためにあらゆる手段が用いられている。医療情報を扱うのに最適なのにね。MSの目はハリウッドや音楽にばかり向いている。
確かにありました(私が保存していたもので確かめました)。見逃していたようです。
ご本人が書いている以上、医師記録部分(のコピー?)も手に入れていたとすべきですね。
前言撤回です。
の題字の下の写真がカルテのように見えますが、どう思われますか。
また、この内容は実名を晒して当事者の誹謗中傷にあふれているように
感じます。
カルテor看護記録の映像
が見つかりましたので御覧下さい。書式は4種類あるようです。右から二番目のヘッダは「看護記録」と読めるように思います。
http://iori3.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/tbs061021.jpg
http://iori3.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/tbs0610212.jpg
下の方はMBSが11/2に放映した「子癇の疑い」の筆跡と同一に見えます。
左側に縦書きの項目欄があるようですね。これは看護記録の表紙ではありませんか。であれば、入院時サマリーであり、既往歴や外来受診歴はここから読み取れるはずですね。
また、左から2番目の書式は診療情報提供書のように見えます。ここにも外来での経過は書かれているはずです。
同感です。診療情報提供書、つまり医師が他の医療機関に向けて書く「紹介状」なわけですから、これは看護記録とは言えないですね。謎はますます深まるというか、むしろある方向に収斂していくというか…。
ただ看護記録かどうかですが、天漢日乗さんが前に出してくれた朝日放送提供分とは様式が異なります。医師記録カルテとも明らかに異なります。考えられる事は途中から重症記録用紙に変わったか、看護記録がバイタル記録分と全体の様子を書く分と分かれているかです。この辺は病院により様式が異なりますからね。
診療情報提供書とおそらく搬送依頼用紙、さらに入院時アナムネがあるのなら、外来カルテ分の主たる情報がここから得られても不思議ありません。もう一つ言えるのはここにやはり医師記録が無い事です。
書体から毎日の画像はこの看護記録から映された可能性が強く、毎日も医師記録を保持している証拠はありません。TBSもまたそうです。皆様が向かいたい方向とは異なるかもしれませんが、依然医師記録を明らかに所持しているのは読売だけです。
「全部を入手したのはごくごく最近」というのは、弁護士の勧めに応じて、民事訴訟にそなえて、患者遺族が証拠保全に踏み切ったことをさすのでしょう。証拠保全は、50万円くらい弁護士に払うのが相場ときいたことがありますから、遺族にとっても、急には決断できなかったはずです。
その前の「患者さんたちが入手したカルテはほんの一部なんです。」というくだりは実に不思議で、いったいどうやって入手し得たものだろう?と思います。
県警は、病院にカルテの任意提出を求めて、病院は応じていますから、病院は任意提出する前に対抗策を協議するためコピーしてから提出したと考えられます(強制捜査で押収されていればそんな余裕はない)。県警と、病院、それぞれから、解読・検討のために複数の専門家にコピーが配られたでしょう。
ところで、だれかが、カルテコピーを入手して、患者遺族に渡したとして、これが犯罪になるかというと、どうなんでしょうか?・・
病院や警察から解読・検討を依頼された医師が、情報をネットなどで漏らせば(m3はセミクローズドなので微妙)守秘義務違反ですが、無資格の一般人であれば、守秘義務違反になりません。また、入手したマスコミは、それを入手すること自体別に犯罪ではないし、「不正に入手した」とYosyan先生もお書きになってますが、わたしにはどうもピンときません。
西山事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6
という、報道の自由について、取材方法が問われた事件がありましたが、患者遺族が、新聞社に対して、無断のカルテ内容の流出を訴えるならともかく、わたしたち医者が、新聞社が「不正な入手ルート」だからけしからん、と訴えるのは、どうも変な気がします。
医者のくせにひとりだけ浮いたことを書きこみましてスミマセン。
わたしの認識を整理しますと、医者というのは、いかなるルートでカルテ内容を知ったとしても、それを個人特定できる形で一般に記してしまったら、守秘義務違反ですし、一般人(マスコミも同じ)が同じことをしたとした場合には、患者(遺族)の了解がなければ、名誉毀損で訴えられる可能性があります。しかし、カルテコピーの入手方法については、西山事件の判決に述べられているくらいの強い違法性が証明されなければ、罪には問われないのだと思います。
くりかえし述べますが、医者や病院は、不当なことを書かれたと感じたら、名誉毀損でマスコミに対抗すべきです。ここ数日の議論は、マスコミやプロ市民の思う壺のような気がしています。
良いか悪いか、スラッシュドットにタレコミがなされていたようですね。
※わ、私じゃありませんよ…
西山事件 確かに記事にした新聞記者は一審無罪、もらした外務省職員が有罪でしたね
でもあの時 国民の知る権利 だとか言っていたマスコミに ネット上で学術的に検討していてどうして批判的に記事にされなきゃいけないとも思いますが、、やはり正論ですね。
それにしても今回のこの患者側弁護士の意図はなんでしょうか?
1)ネット医師への牽制?
2)話題性のある大淀のご遺族を利用しての被害者の会のプロパガンダ?
3)もう一つ 患者側弁護士はこの大淀事件が筋が悪く(医療サイドに過誤がない)民事訴訟での勝訴が難しいと考えているのではないでしょうか?
座位 様の『石川弁護士が、刑法134条でなく、個人情報保護条例違反で対抗してきているのは、何かウラがある。』
は非医療職の病院職員にも網かけて病院を揺さぶりながら示談でも狙っているのでしょうか?病院がヘナヘナしないか心配です。
大淀病院や福島の産科医の裁判の報道を見て 多くの医師が溜め息が出るのは、事件の報道を医師個人と患者家族との対決とみなし、患者家族にこれでもかといわんばかりに肩入れするからです。報道の公平性に首を傾げるからです。
後になって ちょっぴり地域の医療体制の不備云々と触れてはいますが、根本的な解決策、提言は見られません。少なくても小手先で説得力、実現性を感じさせません。
3時間待たされて3分診療と憤る前に 根本的な遠因は国家の医療費削減にあり、介護保険給付をも減らそうとする だからこそ医療スタッフや医療資源が乏しくなって 今回のような悲劇的な事件が発生したとズバッと切り込まれたらどうでしょう?政府に物申す気概がないのかよ?残念ながら、そこまで踏み込んだ論評は見たことありません。そう物申せば、医師も耳を傾けますよ。医療側に立った論調をするのは マスコミにとっては禁忌なんですかね?少なくともマスコミが大所高所に立った報道をすることで世論を喚起しないかぎり こういった悲劇は今後も繰り返すでしょう。
どうせマスコミの諸君も ここ数日このブログを目を皿のようにして読んでると思いますね。同時にマスコミの姿勢として この国の医療政策をどうしたいのかね?個々の医療事件を論ってばかりで何も考えてないのかしら?
ああ 深夜になると興奮するなあ。2回深呼吸してコメント書きました。
レスありがとうございます。
>それにしても今回のこの患者側弁護士の意図はなんでしょうか?
民事訴訟を始めるにあたって、有利なるような世論形成のための、マスコミに対するエサまきだと思います。
>刑法134条でなく、個人情報保護条例違反で対抗してきているのは、
単純なことで、被告として町または病院を相手どるぞ、という意味です。マスコミやプロ市民、患者遺族が、もし、病院内のだれかと通じて、カルテコピーを入手していたとしたら、責められるべきは個人情報を厳重に管理すべき病院側だ、ということです。カルテを入手した側は「不正なルート」だからといって責められることはありません。
しかし、「告訴を検討」はしても、告訴はしないでしょう。勝てる見込みがないからです。カルテコピーは、警察などから流れた可能性も否定できないので、具体的に誰がどうやって流出させた、と証明しなければなりません。それができるくらいならはっきり「告訴」しています。だから、民事訴訟に向けたマスコミへの撒き餌です。
>示談でも狙っているのでしょうか?
そう思います。はっきりいって勝ち目の無い案件です。手を替え品を替え、これからも心理的に揺さぶっていくつもりでしょう。
しょうじきなところ、気の毒なのは患者遺族で、マスコミやプロ市民たちが騒がなければ、悲しいながらも諦められるだけの重篤な病態・不幸な転帰だったんですよ。奈良医がとってくれていたら助かったと思います?
それを、よってたかって、みこしに祭り上げてしまったんですな。静かにしておいてあげるべきなんですよ。
しかし、わたしは、町立病院には、断固として和解には応じて欲しくないです。これまで、安易にこの手の訴訟に和解で応じてきた国公立病院の悪しき先例が、ここまで医療を貶めたと思いますからね。
わたしは、くりかえし、名誉毀損、名誉毀損、と書いていますが、たとえば、週刊朝日の記事に対して、院長なり町長なりが、「担当医はなすべきことを尽くした。落ち度はない。担当医ひいては病院に対する名誉棄損だ」と訴訟を起こしたとしたらどうでしょう。患者遺族は目が覚めないだろうか?わたしたち医師は、ふたたび公立病院に勤務することに、小さな希望を感じないだろうか?
なぜ、公務員だからといって、不当な誹謗中傷に耐えなければならない?病院長や町長は、何に怯えている?
わたしたちに名誉を再び感じさせてくれる病院であるならば、みんな、もうすこしだけ踏みとどまってみようと思わないか?
(・・・5年前の自分に戻って書いてます)
ところで、例の『週刊朝日』の記事を書いたのは、今西錦司の孫なんだとか。こないだの、安倍首相をブチ切れさせた記事にもかかわってるようです。
確かに追求している相手が異様に平謝りだと逆に何かあるんじゃないかと
かんぐりたくなるのが人間ですよね。
毅然とした態度をとることが重要と思います