病院との連携と質の担保がカギに−東京消防庁の救急相談センター
昨年6月からスタートした東京消防庁の救急相談センター。相談件数が多過ぎて電話対応に手が回らず、受け皿となる医療機関との連携にもまだまだ改善の余地を残しているという。今後、全国に広がる可能性もある救急相談センターだが、森村尚登救急相談医長(帝京大医学部救命救急センター准教授)は、「プロトコルを活用しながら、患者の命を守るためにも医師が最後まで責任を持ち、医療の質を担保しなければならない」と訴える。
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救急車は必要時に使って 同庁の救急相談センターは10月1日現在で、医師391人、看護師20人、通信員30人、監督員16人が登録。24時間365日体制で対応している。
センターではまず、救急相談通信員が電話を取り、救急の相談なのか、行くべき医療機関について知りたいのかを確認する。相談の9割は医療機関案内だという。
救急相談であれば、「本人の通報かどうか」「年齢」「性別」「主訴」などについて聞く。この段階で、▽呼吸がない▽脈がない▽水没していた▽冷たくなっている−ことが分かれば、すぐに119番へ転送する。
それ以外の電話は救急相談看護師に転送され、看護師が電話救急医療相談のためのプロトコルに基づいて対応する。救急相談医はこの間、看護師の電話のやりとりをモニタリングしながら、119番への転送や医療機関の案内を指示する。必要に応じて、相談医が電話に出ることもあるという。
トリアージを評価したら、医療機関を案内する。同庁の病院端末情報や東京都の医療機関案内サービス「ひまわり」を利用した上で、「○○病院○○科に行ってください」などと情報を提供し、電話を終えるという。
森村医長は、「救急医療では、どの病院のどの科が開いているかをしっかり把握できるかがカギ」と言う。以前、フランスで救急医療の現場を目にした時、毎日どの専門医が出勤し、受け入れの余裕があるのかなどを、電話で各病院に確認する体制があったという。
また、救急相談は、「その地域の医療の基礎を支えている方の協力なしには成り立たない」と強調する。救急相談センターが紹介した医療機関が、実際に患者を受け入れてくれたのかどうかについても把握しながら、理解を求めているという。
森村医長は次のステップとして、「紹介した医療機関に、医師が直接連絡すべきではないか。連絡や手配にどれだけ手間をかけられるか、人員とコストを割けるかが、重要になるだろう」と指摘する。
現場では毎日、反省会が行われるという。プロトコルを使って診断した結果や、どの程度の症状の患者が救急車で運ばれ、その後どうなったのかなど、実際の事例を分析する。
今年5月までの1年間の相談件数は2万6138件だった。このうち1000人が緊急入院となるなど、緊急性の高い相談は予想以上に多い。昨年の相談件数は1日平均で732.5件だったが、森村医長は、「1日300件は電話をうまく取れていない。量が多くてさばき切れていない」と語った。その一方で、「相談は5割近くが14歳以下のもので、子どもに関することが多い。子どもを持つ母親に対して安心感を与えられたのではないか」と自負している。
森村医長は、「救急相談センターが専門家の集団で構成されたことは大きい。クオリティーを重視させてくれたことはありがたい」とする一方で、「日本救急医学会のプロトコルが全国に普及する動きがあるが、プロトコルを見れば、看護師や救急隊員だけで対応できると思われてしまうと怖い」と言う。「患者の症状を評価するための指標や尺度を医師が常に吟味し、最後まで責任を持ちながら、質の維持と向上を目指す姿勢が欠かせない」と気を引き締めている。
更新:2008/11/06 13:33 キャリアブレイン
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