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2008年11月6日

◎次期大統領にオバマ氏 日米関係を深化させるとき

 米大統領選で民主党のバラク・オバマ上院議員が大勝した。来年一月にはアメリカの歴 史で初の黒人大統領が誕生する。「チェンジ(変革)」を主張し「イエス・ウイ・キャン(私たちはできる)」と呼び掛け、共和党の牙城をも突き崩したオバマ氏の魅力、裏返しにいえばアメリカの閉塞感(へいそくかん)があっての勝利といえ、オバマ政権の下でアメリカが変わっていくことは否定できない。

 日本はどう受け止めるべきか。世界の安定に貢献するという枠組みの中で、アメリカの 真の友人になる機会を得たとの認識で日米安保を堅持しつつ、自らの考えを明確に伝える自律性を持って付き合っていくことが基本だ。それは日米関係をよりよいものに深化させるということにほかならない。

 オバマ氏は選挙中、日米関係について突っ込んだ見解を述べなかった。日本軽視ではな く、日米関係について確たる考えが熟していないためからだと考えたい。対日政策顧問グループ名誉共同議長に日本をよく知るモンデール元副大統領(元駐日大使)を起用したことなどがそのへんの事情を語っているようだ。

 外交経験不足を指摘されたオバマ氏だが、近現代の歴代政権の外交に対する分析を踏ま えてイラクにおける米国の行き詰まりを考え、構想力の失敗だったと診断している。すなわち、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国すべてを納得させる努力をせず、全面的な支持を得ないまま、米中枢同時テロとは無関係なフセイン政権の打倒に突っ走り、泥沼にはまったと批判している。

 同時テロが発生したとき、テロとの戦いを支持し、大量破壊兵器が見つからなかった時 点から批判的な考えを抱くようになったと、自分にも試行錯誤があったことを率直に認めた上での批判であり、アメリカ人としての反省とも理解できるものである。

 世界の安定がもたらす利益を最も受け取るのが米国だとの基本認識で、世界を支えるア メリカの責任を認め、各国の理解と支持を得るばかりでなく、テコ入れされる側の「自立心」を尊重し、世界の安定に尽くす外交を進めると明言している。

◎国道・河川の権限移譲 財源示さねばかみ合わぬ

 国土交通省が国道157号(金沢―白山市)、159号(七尾―金沢市)と梯川(小松 市)の権限移譲を提案したのに対し、石川県が受け入れに慎重姿勢を示しているのは、もっともなことである。政府の地方分権改革推進委員会の勧告を受け、国交省は原則として、一つの都道府県で完結する水系や直轄道路を中心に移譲する方針を示したが、肝心の財源や人員の手当ては道筋が見えていない。こんな状況では地方の不信感が募るだけで、議論がかみ合うはずもないだろう。

 金沢市の浅野川で今夏発生した水害が象徴するように、とりわけ河川は安全管理が難し く、災害が起きれば行政批判を招きやすい。地方にすれば治水が困難な河川は重荷と映り、国に任せたいのが本音かもしれない。地方分権改革の論議も具体論へ踏み出し、自治体間の温度差が浮き彫りになってきた。総論賛成、各論反対の迷路に陥らないためにも、まずは国が移譲に伴う財政措置や人員の移管を明確にする必要がある。

 道路や河川の権限移譲は第二期地方分権改革の試金石と位置づけられ、国交省は一つの 都道府県内を流れる一級水系五十三のうち40%、直轄道路の15%程度を移管する目安を示した。国交省と都道府県が個別に協議し、分権委の十二月の第二次勧告に反映される。

 分権委が指摘する通り、地域で完結する河川や道路は住民に近い自治体が管理するとい う考え方は筋が通っている。だが、国交省は例えば河川でも氾濫時に甚大な被害が想定される水系や急流河川などは対象から外し、移譲範囲はまだ定まっていない。財源や人員も伴う移譲は改革の「本丸」とされる国出先機関の統廃合に直結し、国側が組織維持の姿勢を改めない限り議論は深まらないだろう。

 財源については、時限的な措置として国直轄事業を交付金事業に変える案が出ているが 、現行の整備・管理水準が保たれるのか地方側には疑問が残るようだ。県が道路や河川を主体的に管理するとしても、大規模災害の対応など国が支援する仕組みは必要であり、詰めるべき課題は山積している。


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